ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《45》

2003/11/02

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                          --浪費なき日本の繁栄のために--

《45》 至れり尽くせりの日本流

千葉・幕張の東京モーターショーへ行った。

わたしは、まだ子どもの頃、第1回のショーを見た。
すでに半世紀も前の1954年のことで、数少ない体験者といえそうだ。
休みの年が途中にあったようで、今年は37回という半端な数字だが、
半世紀にも及ぶ歴史*を持つ。最初は「全日本自動車ショウ」といった。
現在のように広くて立派な屋内展示場がどこにもなかったため、何回かは、
日比谷公園の野天の場所に展示した。二輪車やトラックがほとんどを占め、
乗用車はわずかだった。やがて、日本の自動車産業は、乗用車に力を入れた。
改良に改良を重ね、輸出で外貨を稼ぎ、日本を豊かに変える原動力にした。
量産効果がコストを大きく引き下げ、日本中の家庭にクルマが行き渡った。
わたしには、「大衆車」とか「国民車」とかの呼び名が懐かしい。
http://www.tokyo-motorshow.com/show/history/

このコラムは、東京モーターショーについてではない。
行く途中で聞く至れり尽くせりの日本独特の音のサービスについてだ。
耳を澄ますまでもなく、実にいろいろなアナウンスを聞く。駅の構内は、
ご存じの通りの念の入れようだ。会場に向う途中の陸橋のエスカレータは、
音声で「黄色の線の内側に乗ること」や「ベルトにつかまること」を指示し、
お子さま連れへの注意も忘れない。会場の前では、拡声器を持った係員が
「本日は、夜の7時まで開いております」と繰り返す。入口に近づくと、
数人のガードマンが立ち、「入口は、こちらでございます」と誘導する。
ケーブルが這う通路の脇では、男が「足下にご注意ください」と繰り返す。
実にやかましく、まるで子ども扱いだが、機嫌を損ねる人はいないようだ。
初めて来た外国人は、騒々しさに大事件でも起きたかと身構えるだろう。
海外の展示場に、これほど濃厚な「誘導サービス」はない。

ヨーロッパの列車が、音もなく発車する話は有名だ。
発車のアナウンスも、ベルの音もしないまま、スルスルと静かに走り始める。
諸外国での不思議には、音無しの構えで止まったままのエスカレータがある。
怪しみながら近づくと、急に動き始める。人の気配をセンサーで感知し、
動く仕組みになっている。省エネへの思い入れは分かるが、日本だったら、
「エスカレータが動きます、ご注意ください」くらいは、音声で伝える。
至れり尽くせりの日本流「誘導サービス」なら、お安いご用だ。

至れり尽くせりは、ユニフォームという形にまで及ぶ。
工事中の道路に差しかかると、警察官と間違うような誘導役がいる。
ワシントン・ポストの記者が、自著(トム・リード著「ニッポン見聞録」
講談社インターナショナル刊)に、日本での経験を面白く書いていた。
彼は、日本にいた時、アメリカから取材に来たTVクルーを案内した。

「道路に警備員が立ち、近づいて来る車を止めている。この警備員が、
真ちゅうのボタンつきの紺の制服に白い手袋にネクタイ、といういでた
ちなのを見て、スタッフ全員噴き出してしまった。ほかの国なら、こう
した仕事についているひとの服装は脂じみた古いTシャツにぼろジーン
ズと相場が決まっているのだ。」

クルーが、こぎれいで整然としている日本に感心した1つの例として挙げ、
「不愛想で敵意丸出しの入国管理局」の不愉快さと対比させて書いている。
日本では見慣れた風景だが、外国人には感心する種になる。

Tシャツと聞くと、空港のセキュリティーの風景が浮ぶ。
アメリカ流は、911(同時多発テロ)以降、状況が変わったようだが、
Tシャツ姿の係員が、仲間と雑談しながら検査する。日本は、警察官か、
税関吏かと見紛うユニフォームに身を固め、形からして厳めしい。工場でも、
作業服の日本、私服のアメリカと対照的な違いがある。能力や効率のほどは、
姿や形からでは分からないが、Tシャツ姿では、気分もカジュアルだろう。
形を重視する日本流は、日本式マネージメントの基本でもあった。

ショーの帰路も「誘導サービス」が繰り返されていた。
日本の自動車産業が、日本を豊かに変える原動力になったが、ひょっとして、
至れり尽くせりの日本流「誘導サービス」が貢献したからではなかったか、
などと想像を働かせた。注意を促すやかましさとユニフォームの厳めしさが、
気を抜かずに働くようマインド・コントロールし、豊かさを生んだ。
妄想だったかも知れないが、捨て難い発見のようにも思う。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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