ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編)《44》

2003/10/13

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                              --浪費なき日本の繁栄のために--

《44》 一元管理で役所が減るなら

「住基ネット」のICカードが発行され始めた。

これを、「住民基本台帳ネットワーク」の本格稼動という。
国民の1人ひとりが、11桁の住民票コードを与えられ、住所、氏名、生年月日、
性別の「4情報」が、住民基本台帳に載った。全国の都道府県や市区町村が、
コンピュータネットワークで結ばれ、全国のどこでも本人確認が可能になった。
しかし、実施を見送った市町村があった。プライバシー保護への配慮が乏しく、
セキュリティに疑念ありというのが主な理由だ。たったの「4情報」だから、
漏れたところで実害は少なかろうと思うが、悪意のある者に不当に加工されたり、
悪用されるとなれば穏やかでない。国は頑として口を閉ざすが、本当のところは、
国民総背番号制、さらには納税者番号制への布石だろう。それでこそ、国民にも、
国にも、真に有益なシステムとして評価される。コンピュータというものは、
複雑で重複する手作業をなくし、情報を統合し、一元管理するのが得意だからだ。
行政をスリム化し、役所を減らす効能が、大袈裟でなく期待できる。

コンピュータ導入以前の、名古屋駅の切符売り場を思い出す。
今の「みどりの窓口」に似たコーナーがあり、東京までの特急券を買った。
駅員の脇に大きなターンテーブルがあり、上にはファイルが隙間なく立ててある。
乗車日と特急名と枚数をいうと、駅員はテーブルを回してファイルを取り出す。
車両と座席がファイルに描かれていて、売れた順に席を消し込んだ。恐らく、
予め名古屋駅での発券数が割り当てられ、全部が消えると売れ切れにしたのだ。
仮に、大阪や京都に割り当てられた座席が余ったとしても、名古屋は知らない。
名古屋駅で不足が生じても、空席のままで走った。ところが、新幹線の開通からは、
コンピュータが新しく導入された。各駅ともオンラインで結ばれ、空席情報が、
リアルタイムで漏れなく把握されるようになり、空席を残す無駄がなくなった。
情報を一元管理する得意技が、ビジネスの機会損失を一掃した。

私企業が競ってコンピュータの導入に取り組んたのも、この頃だ。
導入の大義名分は、データ入力の重複をなくし、情報が共有できる、さらには、
事務に携わる部署をスリム化できる、というものだった。わたしがいた商社は、
取り扱う商品別に部門が分かれ、独立採算制でいたため、導入する前は、
取引先の情報が、各部門に分散して記録されていた。例えば、某取引先がおかしい、
危ない、などの情報があっても、会社トータルの、売掛金や受取手形など、
債権のポジションを直ぐには把握できない。関係する部門が勘定元帳を持ち寄り、
ソロバンで集計してポジションをやっとの思いで把握した。導入後は簡単で、
取引先名をインプットすれば、会社トータルのポジションが、瞬時に把握できた。
情報を一元管理する得意技が、リスクマネージメントの支えにもなった。
導入費用がとりわけ膨大だったが、費用対効果に満足したものだ。

役所のスリム化には、国民総背番号制に勝てるものはない。
管轄する役所ごとに個別に掌握していた個人情報を、コンピュータで整理統合し、
一元管理する。役所で重複していた作業や記録が統合され、いらない役所も出る。
バラバラに管理された情報を突き合わす過程で、脱税の不心得者も簡単に浮び、
税収が増えるかも知れない。地方自治体も、同じ恩恵を受け、役所も減る。
情報を一元管理する得意技が、複雑怪奇な行政を驚くほど簡素化する。

このことでは、トルコ政府との商談を思い出す。
トルコは、同居するクルド民族*との争いに頭を悩ましている。それもあってか、
トルコ政府は、当時も、国民1人ひとりに紙のIDカードを持たせていたが、
新しく写真つきのICカードに変え、犯歴なども記録させる計画に取り組んだ。
計画元の警視総監を日本に招き、某印刷大手が開発したシステムをPRした。
有力なライバルはフランスの会社だったが、カードのメモリー量で劣っていた。
優位に商談を進めながら、ここまで国に管理されたくないな、と正直思った。
厳めしいはずの警視総監殿が、秋葉原を喜々として探索したのも忘れられない。
この商談は、資金調達が障害になり、途中で立ち消えになった。
http://user.komazawa.com/~t_ochiai/htm/d07.htm

本格稼動した「住基ネット」は、お粗末というしかない。
11桁の住民票コードを覚えていれば、地元でなくても住民票をもらえる、
というだけが、メリットなのか。わたしの「4情報」が取るに足らないためか、
召し上げておきながら、役所が減り、役人が減り、税金が減る展望が見えない。
ハッキリ見えるなら、プライバシーを進んで犠牲にもしよう。このままで済ませ、
「4情報」に付加価値をつけないというのでは、税金の大いなる無駄遣いだ。
情報を一元管理する得意技が、泣いている。

つづく

さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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