ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

全て表示する >

モノづくり、あれもこれも (続編) 《41》

2003/08/11

    ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
    ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛

                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《41》 1勝1敗の新幹線ビジネス

中国が、北京と上海を結ぶ高速鉄道を計画している。

在来線なら14時間、1300キロ離れた両都市を5時間前後で結ぶ。
2008年の北京オリンピックまでに開通させたい希望もあると聞くが、
ドイツから導入し、上海で実用化した磁気で浮上して走行するリニア方式か、
日本のJRが誇る新幹線や韓国で受注実績が出たフランスのTGV、
ドイツのICEなどのレール方式か、決めかねていて全貌がまだ定かでない。
独自の技術もあると伝えられ、3国を加えた争いがはじまっている。

中国は、交通と通信の飛躍的な発展が見込める巨大な市場だ。
広大な土地に13億もの人口を抱える大国だけに、潜在需要が半端でない。
北京と上海を結ぶ高速鉄道は、手始めに過ぎず、各国とも売り込みに熱が入る。
しかし、日本の新幹線が、必ずしも有利な状況にない。

その裏には、つぎのような事情がある。
1 技術移転について、中国側の期待とは裏腹に、日本側に警戒感がある
2 契約については、日本側が、安全を担保するため一括受注を譲らない

1は、例えば、対価を超える技術の提供を強いられる心配のことだ。
過去には、「友好第一」のかけ声で、知的財産権が骨抜きになる例があった。
中国の技術を補強するための技術移転となれば、この心配はさらに深まる。
2は、分割発注を阻み、全体のシステムを一まとめに元請けしたいというもの。
例えば、発注側が、車両は新幹線、信号はICE、運行管理はTGVなど、
分割して発注する。すると、一元管理が難しくなり、運行にも悪い影響が出る。
つまり、元請けが、新幹線が誇る「安全神話」の移植のための絶対条件という。
しかし、ドイツやフランスの強敵もいるから、強気でいるには限界がある。
おまけに、したたかな中国が契約の相手だから、3国とも油断できない。

新幹線は、1964年、東京と大阪間の開業*が最初だった。
世界銀行から借金し、東京オリンピックの開会に合わせた。今日に至るも、
飛び込みを除き、事故による死者が1人もいない。過密な運行にも負けない。
安全と正確を誇る新幹線だが、すでに韓国と台湾で勝ち負けを経験した。
http://www.asahi-net.or.jp/~dd5t-mrt/link006-special.html

韓国は、1993年、フランスを選び、日本とドイツが敗退した。
ソウルと釜山の412キロを結ぶ高速鉄道で、2008年の全面開通を目指す。
現在は、在来線を走る特急「セマウル号」で約5時間だが、段階的に開通させ、
全面開通する2008年には1時間50分で走る。3時間もの短縮になる。
TGVの技術が、韓国の地形に馴染まず、計画が遅れているとも聞く。

台湾は、1999年、日本の新幹線の導入を決めた。
台北と高雄間は345キロあり、在来線の特急「自強号」で4時間半かかる。
開通目標の2005年には、1時間半で結び、こちらも3時間の短縮を目指す。
ドイツとフランスが欧州連合を組み、新幹線を担ぐ日本の企業連合に対抗した。
日本が頼む台湾のパートナーが入札で破れ、一時は敗退の危機に直面したが、
1998年のICEのドイツでの脱線事故と翌年の台湾の大地震で復活した。
培った安全神話と対震設計で先行する新幹線が評価され、欧州連合に勝った。
JRが、韓国向けの商談の頃と一変、本気でサポートしたことも大きい。

一連の商談で、もう一つ見え隠れする裏事情は、悩ましい歴史問題だ。
台湾では、親日的な国情に加え、予期しない惨事が日本に味方した。しかし、
相手が韓国や中国となると、悩ましさが増す。韓国での受注合戦では、
1991年にフランスはロカール首相(当時)が、ドイツは遅れること2年、
1993年にコール首相(当時)が、それぞれ訪韓し、商談を後押しした。
国益を利するそれほどの大型商談と知れるのだが、一方、日本の政府要人は、
ちょうど慰安婦問題が浮上したため最悪の形勢で、逡巡するしかなかった。
中国では、インターネット上で、「新幹線導入反対」の書き込みが盛んという。
新手のネガティブ・キャンペーンが、日本に追い討ちをかける。

1勝1敗の新幹線ビジネスが、中国でどうなるか、予断を許さない。
国を象徴する大きなプロジェクトだから、いろいろ意見が出るのが当然だ。
決定の過程で、負の歴史問題が蒸し返されるのも、分からないではない。
しかし、半世紀を経た今、ビジネスを左右するというのなら異常なことだ。
いったい、どちらの側に問題があるのだろう。

つづく

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。