ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《40》

2003/07/21

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《40》 技術を確実に伝承する技術

日本の公共事業が、厳しく批判されている。

夢のような役所の事業計画が、そのまま正夢になった。
海上に建設した広大な関西国際空港や3本の別々のルートを持つ長大な本四架橋、
海底トンネルで横断する東京湾アクアラインなど、実際に運営した結果では、
利用者の数が計画を大きく下回り、事業の採算がいつになっても上向かない。
利用料を下げたりするが、不採算の悪循環を断つにはほど遠い。

役所の下部組織が建てた豪華な宿泊施設も、同じ問題を抱える。
どれも、パブリック(庶民)に奉仕する事業として建てられた。しかし、
「赤字の垂れ流し」が白日にさらされ、恥も外聞もなく、投げ売りをはじめた。
当の庶民が、個人で丸ごと買えるほどに安値がつく哀れな豪華施設と化した。
そもそも、パブリックに奉仕する事業というなら、採算など端から念頭に置かず、
赤字は国や組織の母体が補填して当たり前、というロジックがあってもよい。
しかし、幸いというべきか、それを許さない世論がある。しかも、どの例も、
黒字に転じる事業計画を示し、予算の獲得に成功したという経緯が厳として残る。
赤字の事業は、役所の無能を暴露し、「税の無駄遣い」として断罪される。
かくして、公共事業の削減が、時代の流れになった。

この流れには、両手を挙げて賛成したい。
しかし、日本の建設・土木技術の発展に、痛手になることが避けられない。
日本の公共事業は、新しい技術を生み、育て、蓄積する機会を豊富に提供した。
民の事業と比べ、概ね規模が大きいだけに奥が深く、やりがいに満ちている。
技術者に新たな課題を与え、奮起させ、革新的な発想を促す役割を担った。
渋いばかりでなく、余裕があれば、やや大胆と思える技術も試してもらえた。
工事の絶対量が減ると、培った秘蔵の技術が活躍の場を失い、質的に劣化もする。
大袈裟だが、日本の元気が弱まるリスクを覚悟しなければならない。

というのも、これまで、国際競争力が半端でなかったからだ。
ダム建設は伝統的に得意で強い。民間の施主が主流の高層ビルの建設も強い。
さらには、架橋や掘削技術でも負けず、数々の名だたる工事を請け負っている。
国内の公共事業で培った豊富な実績があったからこそのことだ。

トルコのボスポラス海峡*には、2つの大橋が架かる。
第1大橋は1973年にイギリスと西ドイツ(当時)が建設、第2は1988年、
円借款により日本の企業が完成させた。第2を日本企業が受注したことは、
当時のイギリスにとって驚天動地の大事件だったようだ。ダンピングを疑い、
はからずも日英の間で緊張が生まれ、政治問題にまで発展した覚えがある。
記憶では、鋼材をイギリスから購入することで決着した。
http://user.komazawa.com/~t_ochiai/istanbul/istan10.htm

1997年、イギリスが香港を中国に返還した。
香港を去る最後の置き土産として、市街から離れた島に、新空港を建てた。
アクセスの途中、つり橋式の青馬大橋を渡る。この建設に日本企業が協力した。

香港島と九龍を海底で結ぶ地下鉄道や自動車道も、同様だ。
1975年頃から、日本のゼネコンが関わった。地下鉄の駅の建設などは、
お手のものだったが、ハイライトは、海底下をトンネルで通す掘削工事だろう。
ここでは、日本企業が得意のシールド工法が使われた。

英仏を隔てるドーバー海峡の海底でも、日本のシールド工法が活躍した。
そもそもは、ロンドンのテムズ川の下を通すトンネル工事で開発された工法だ。
軟弱地盤で下水道工事に苦労したゼネコンが、イギリスから日本に持ち込んだ。
国内の現場で試行錯誤を繰り返し、ハードとソフトを飛躍的に改善した。
もちろん、関門トンネルなどの古くからの経験や知識の蓄積も活きた。

公共事業の削減で、技術が遭遇するジレンマが浮き彫りになる。
技術は複雑で高度なほど、力を失うのも速い。しかも、仕事あっての技術だから、
国内で活躍の場が減れば、切磋琢磨の機会を失い、国際競争力も急速に弱まる。
少ない事業の中で、漏らさず確実に伝承する技術が、つぎに重要になる。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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