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日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《39》

2003/07/01

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《39》 捨てる神ありゃ拾う神あり

北朝鮮問題を報じるテレビに、目を引く映像があった。

赤茶けた老朽船の甲板が、山のように積まれた自転車で埋まっている。
いわずと知れた日本で廃棄処分された大量の自転車たちが、日本中から集められ、
タダ同然で北朝鮮に向けて輸出されようという光景だ。一説では、北朝鮮で修理され、
中国に輸出される。物騒な話もあり、アルミが、ミサイル部品に再生されるともいう。
量に限りはあるが、ボーキサイトから精錬加工する手間よりは、効率がすこぶるよい。
皮肉にも、日本で厄介ものになった廃材が、彼の国の貴重な資源になる。

わが家の老犬(16才の柴犬*)は、かってボール遊びが大好きだった。
今や、体力の衰えを自覚し、目の前にボールを転がして挑発すると、無関心を装う。
若い頃は、家の近所を散歩する途中、放置されたボールを飽きずに収集して歩いた。
急に立ち止まるや、尻尾を激しく振り、草むらやU字溝の暗がりなどに頭を突っ込む。
見ると、ボールをくわえていた。動くものを逃がさず追うという彼の本能がさせた。
落とし主を気の毒に思い、あわてて取り上げようとするが、頑として離さない。
無理やりボールを口からはずし、目立つところに置いて散歩をつづけたものだ。
やがて、ある現象に気づき、その気遣いを返上した。
http://www.mamehana.net/inuerabi/dogs/shiba.htm

いつになっても、わが愛犬の収集癖に歯止めがかからない。
というのも、それほどたくさんのボールが、あちこちに放置されているのだ。
最近の子どもたちは、ボールが見つからないと、早々にあきらめてしまうらしい。
後日、別の子どもが見つけても、知らん振りのようだ。そう気づいてからは、
愛犬のささやかな喜びを取り上げる愚をやめ、堂々とわが家まで持ち帰らせた。
彼の小屋の周囲には、テニスや野球の硬軟のボールが、ゴロゴロと転がっていた。
恐らく、生涯に収穫したボールを集計すれば、優に100個を超えるだろう。
幸か、不幸か、それでお咎めを受ける心配はまったくなかった。

わたしの子どもの頃は、ボールといえども貴重品だった。
暗くなるまでボールで遊ぶうち、うっかりなくそうものなら大騒ぎになる。
親にも厳しく怒られる。その日に見つけないと、知らない子が見つけて持って行く。
すっかり暗くなった野原を、仲間と半ベソの態でくまなく探し回った記憶がある。
今では、ボールの1個や2個、なくして顧みず、イヌの玩具になる。

ボールと自転車では、今の時代でも、価値が大いに違う。
しかし、自転車でさえも、ボールのように無造作に放置されることがある。
かくして、日本で役目を終えた数々の製品が、静かに捨てられ、静かに海を渡る。
山積みの自転車だけでなく、運搬する赤茶けた老朽船も、日本のお下がりに違いない。
昨年の2月、初めて訪ねたミャンマー(ビルマ)で見た光景とちょうど重なる。
空港内のバスから、街を忙しく走り回るクルマまで、すべてが日本の中古車だった。
新品同然の性能のものが安く豊富に手に入り、クルマ時代を早めたといえる。

北朝鮮もミャンマーも、世界の最貧国といわれる。
北朝鮮は、巨大な建造物から人々の表情まで、健気なほどに豊かさを演出する。
アーティフィシャル(人為的)な装いが、逆に、冷え冷えとした国情を想像させる。
ミャンマーは対照的だ。政治の体制に、似たように忌まわしい窮屈さはある。しかし、
救いは、南国らしい大らかさが見え、食で苦労するような深刻さがないことだ。
その最貧の2国と、捨てる神ありゃ拾う神ありの共存の因縁がつづく。

しかし、助け合いもあるリサイクルとはいえ、不自然な共存の仕組みだ。
ボール1個で半ベソになったわたしには、悲しくも哀れな関係に思えてならない。
その原因は、果たしてどちらがつくっているのだろうか。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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