ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編) 《31》

2003/01/13

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                         --浪費なき日本の繁栄のために--

 《31》 飽食つづくサイバー王国

もらった電子メール(メール)に怒った。

新年も早々に初怒りするほど、怒り易くなったのだろうか。
現役時代のわたしは、入社とともに「前垂れ精神」をたたき込まれた。
押しつけられた理不尽な無理難題にも、仕事への使命感から何とか耐えたものだ。
しかし、組織と無縁に暮らす現在は、そういう気遣いの必要がない。むしろ、
現役時代に耐えた反動からか、理不尽な振る舞いに過剰に反応し、遠慮なく怒る。
このコラムがつづくのも、遠慮ない怒りのエネルギーがあるためかも知れない。

原因は些細だが、「お願い」というには、どうにもお粗末なマナーにあった。
相手は、商社時代のロボットとの関わりを書いたわたしのコラムを指し、
「このページの以下の記述に関して、質問がございます」という。
産業用ロボットの研究者と名乗り、氏名と住所を明かしたフェアな姿勢である。
大いに協力しようと思った。「有効な情報」には、お礼すると念が入っている。
文脈から、「研究グループ」で学生を指導する教官と想像された。敬意を表し、
1回目の質問には最大級の回答をした。ヒントになる程度の小さな情報だったが、
それなりの収穫だったようだ。調子が出たのか、矢継ぎ早につぎの質問が届いた。
ロボットの製造会社名やモデル名を挙げ、知らないかと聞いてきた。両社とも、
歴史に残るアメリカの有名な企業で、相手が特定してきたページに登場する。
見落としているようで失礼千万だ。そのことから、丁重ないい回しとは裏腹に、
当の短いページでさえ、目を十分に通していないらしいことが分かった。
時間の浪費だし、マナーに欠けると思って友好的な態度を一変させた。

2回目から皮肉を込め、つぎのように返信した。

>折角ですから、引用されたわたしのコラムを再読した上で、
>お問い合わせください。
>
>つまり、そこに回答があるということを申し上げたいのです。
>

すると、またまたトンチンカンな確認を求めるメールが届いた。
3回目は、意地の悪さをエスカレートし、つぎのように返信した。

>全く違います。
>本文を精読ください。
>
>頭を低く、しかも研究者という立場を示せば、
>甘えが利くという意識がおありなら、大間違いです。
>知る限りのことをお伝えすることにやぶさかではありませんが、
>メールの利便性を乱用するがごとき、
>屋上屋を重ねるお問い合わせは、ご遠慮ください。
>

世に先生と呼ばれる人種は、自分中心に地球が回っている*と思い勝ちだ。
しかし、このロボット先生は、もっと上手の偏屈なわたしを相手にしてしまった。
へき易したのだろう、これまでのところ、つづきのメールが届いていない。
単に、わたしと同じあわてものに過ぎないとしたら、気の毒なことをした。
お礼をもらい損ねたのも、今さらながら悔やまれる。
http://www2.ocn.ne.jp/~tukaiste/colum1.htm

実は、冷静に考えてみると、相手に同情の余地がないではない。
苦々しく思うのだが、書く作法が、サイバー世界の出現で大化けしたからだ。
そもそも、書きものは、会話と違って記録に歴然と残る伝達手段だった。おまけに、
伝達するには、そこそこの費用や往復の時間の消耗が避けられなかった。だから、
書き上げるまで推こうを念入りに重ねる習慣が当たり前だった。簡潔明瞭を旨とし、
誤解や無駄な繰り返しを避けるよう細心の注意を払って書く。その努力の裏に、
相手に余計な負担をかけず、用件を効率よく終えようとの配慮があった。ましてや、
見ず知らずの他人への「お願い」なら、手順やマナーに格別な気遣いが必要だ。
ところが、サイバー世界では、もはや、そんな作法が忘れられようとしている。

例えば、ロボット先生とのやり取りをチャットや肉声に置き換える。
はじめてのやり取りだから多少の遠慮がお互いにあるものの、わたしは、
「それってコラムに書いてあったでしょ、読んでないの?」とやんわりなじる。
先生は、「あれ、そうでしたか? 」ととぼけ、「ごめんなさい」と軽く謝る。
そうなると、さすがのわたしも、テンポの速い流れを追うのが精一杯だ。
生来の意地の悪さを忘れ、満足してもらいたい一心で親切に返答するだろう。
実は、ロボット先生は、わたしとのメールで、そんな乗りだったのかも知れない。
つまり、チャット風なカジュアルなコミュニケーションを実践していたのだろう。
わたしの不意の一撃に、驚愕したとしても不思議はない。

サイバー世界の進化は速く、費用が格段に安くなった。
24時間接続が広く普及し、時間を気にしないでメールを打つようになった。
一方で、かってのような文章づくりの念入りな作法が、忘れられようとし、
チャットや日常会話と同じ感覚の、ノーチェックのままの送信が日常化する。
役立たずな情報を盛ったメールも飛び交い、非効率の種が知らず知らず蓄積する。
こうしてトラフィック(送受信)の量がどんどん増えれば、電力やケーブル、
メールサーバーの消耗度も、天を突くほど限りなく増えつづけ、止まらない。
そこに、「もったいない」などというケチな感覚が入り込む余地は毛頭ない。
その心掛けでノーベル賞をもらった田中耕一さんが、現われるのも先だろう。

かくして、サイバーの王国が飽食にまみれ、いよいよ多忙を極める。
わたしの怒りのエネルギーも力を失い、燃え尽きるかも知れない。

つづく


さぶみ・ごろう

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
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