ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

全て表示する >

モノづくり、あれもこれも (続編) 《30》

2002/12/23


    ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
    ┗━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┻━┛

                --浪費なき日本の繁栄のために--

 《30》 自らへの戒めと読む広告

先日、東京電力(東電)が、異例の2日つづきで全面広告を打った。

1日目の広告は「お詫びとお願い」だった。
「この8月以来、私たち東京電力の原子力発電の点検・修理・補修作業に係る不祥事で
これまでみなさまからいただいていた信頼を、自らの手で覆してしまいました。
このことに関して、私たちには弁解の余地はありません」と低姿勢だ。後段になると、
「非常に厳しい寒さになった場合」「電気が不足する心配もあります」といい、
「節電のお願い」に言及、「恥ずかしいという思いもあります」とまでいった。

翌日の2日目は、「節電をお願い申し上げます」という念押しだった。
東電管下の原発を立地する福島や柏崎の人々は、危険と背中合わせに生活しているから、
同社の不祥事について、官民挙げて怒り心頭に発している。1日目の広告で、
主として立地の人々を意識し、懇ろなメッセージを送り、2日目で関東1都6県に加え、
山梨と静岡の2県の顧客に本意を伝えるという、2段構えの用意周到な作戦と読めた。
少なくとも、わたしの知る東電は、電気づくりの比べようのない誇り高き企業集団だ。
不祥事は許し難いことだが、なり振り構わね平身低頭振りが、いかにも痛々しい。
やがて哀しくも痛烈な、わたし自身への2つの戒めを読み取った。

すでに自由化された売電事業*だが、今も東電は、競争相手がない地域独占の企業だ。
黙っていても、顧客がついてくるから、こんな楽な商売はない。しかし、同社は、
あぐらをかくことなく、早い時期から広報活動に力を入れてきた。廃刊になったが、
1950年代も半ば、月刊の「東電グラフ」を発行し、わたしは創刊号から講読した。
写真や絵が豊富な小冊子で、当時としては無料の珍しい広報誌だった。そもそもは、
電気の安全な使い方についての啓蒙が目的だったと思われたが、戦後10年が経ち、
洗濯機からはじまり、炊飯器などの新しい電化製品が出はじめた時期に当たったから、
電化生活を多彩にする豊富な知恵や情報が、待ち望まれていた。時の経過とともに、
わが家の電化水準を大きく超える内容になり、縁遠くなったことをよく覚えている。
http://www5.ocn.ne.jp/~micoto/c/list.htm

今の同社の広報活動も、独占企業にしては、とりわけ熱心で手厚い。
一般企業の「売らんかな」とは違い、日頃から「節電」を呼び掛けているのも面白い。
「でんこちゃん」というキャラクターがいて、「じゃん! 電気を大切にね!」という。
その理由には、国論を揺さぶる原発との関わりがある。管下の電力消費量が増えるなか、
原発への依存度を強めて4割に及ぶ。しかし、世の核アレルギーは一向に弱まらない。
果たさなければならない供給責任と核アレルギーの世論の狭間にあり、苦労が尽きない。
東京・澁谷にある「電力館」*や福島や柏崎原発に付属する「サービスホール」は、
その苦労を裏づけするように、ややもすれば、カネに飽かした豪勢さが目立つ。
ヒネクレもののわたしは、電力料金を安くしてもらったほうがよい、と思うほどだ。
http://www5.mediagalaxy.co.jp/Denryokukan/exhibit.html

今回、誇り高く、広報活動に長けた同社が、平身低頭に徹した意味は大きい。
痛々しく思いつつ、その全面広告の中に読み取ったわたし自身への戒めは、こうだ。

1つ目に、「企業は公器である」ということを痛烈にリマインドさせた。
公共事業の色彩が強い東電であればこそ、不祥事を重大に捉えているのだが、
その他のどの私企業も、顧客あっての企業であって立場は同じだろう。つまり、
どの私企業も、天下にニーズがあってこそ無難に存続するのだから、公共性において、
東電との本質的な違いはない。どこであれ、「企業は公器である」ということだ。
経営が私利私欲に過剰に走り、自身の公共性を忘れる企業は、今の東電を笑えない。

余談だが、「企業は公器である」については、思い出す人がある。
わたしが商社に入社した早々の研修で講師を勤めたKさんで、後年になって、
わたしが担当になった子会社へ挨拶に行くと、そこの社長に収っていた。Kさんは、
一時期、日本経済新聞の社外の論説委員を勤めた由で、経済の論客だったと聞いた。
さすがというか、その会社案内に「企業は公器である」と高らかに掲げてあった。
さらに後年、担当になった別の子会社には、Kさんの息子さんがいた。
こちらは、一部上場の押しも押されぬ大会社で、現在は役員をされている。

もう1つの戒めとして残ったのは、「節電」意識についてだ。
同社は、もはや暖房を切って暮らせない現代の消費者に、節電を切々と訴えたのだが、
一方で、誇り高き東電のことだから、核アレルギーを治癒することなく、ただただ、
青天井の使い振りをつづける消費者に、平身低頭を装いつつ、痛烈な皮肉を浴びせた、
と読み取っておかしくない。

うしろめたいわたしは、2回の全面広告を自らへの戒めと思って読み返している。

つづく


さぶみ・ごろう

  コラム中及びリンク先の社名、製品名は各社の商標または登録商標です。
  (C) 1997 ZUBO UPDATES CO., LTD.

  お問い合わせ先
  e-mail goto@zubup.com

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。