ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも (続編)

2001/12/10

《seq12》

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    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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                --浪費なき日本の繁栄のために--

 《12》 それでも、飛行機は落ちる

夢の超音速旅客機・コンコルドの運行が再開された。

飛行機事故は悲惨だ。
コンコルドの墜落のニュースがあった2000年の夏は、御巣鷹山に墜落したジャンボ機の大惨事から、
ちょうど15年目の節目だった。この節目に、初めて公開されたジャンボ機のボイスレコーダの音声は、
コックピットの緊迫した会話を生々しく伝えた。
機長は、機体の姿勢制御に必死に取り組みながら、「もうだめかもしれんな」といい、
ついには「どんといこうや」と覚悟を固める。30分にも及ぶ、
副操縦士と機関士を交えたコックピットの凄まじくも息づまる奮闘を知って、
「少しは救われた気になった」という犠牲者の遺族もいたという。
この例では、決定的な原因は操縦ミスでもなく、気象の読み違えでもなく、メンテナンスにあった。
機体後部の、客室を外気から保護している隔壁の修理に手抜きがあったことが、
大事故につながったと報道された。まさに、許すべからざる人災だ。

コンコルド機の事故は、原因が、どうやら、滑走路上にあった異物が、タイヤをパンクさせ、
破片がエンジンを直撃し、破壊したためと伝えられた。これとて、不可抗力とはいえない。

大量輸送時代の空の事故は、大惨事に容易につながるだけに、安全対策には、設計、生産、
運行のすべてで、一貫して厳しい注意深い管理が欠かせない。航空機に限らず、
すべての製造物が起こす事故には、「モノづくり」の履歴と運用の巧拙が大きく関わる。つまり、
設計から試作、生産、完成、検収、出荷までのすべての作業で、実用性と安全性の確保のため、
厳格な管理が適正に行われたのかどうかが問われる。安全性よりも実用性、
さらには経済性を優先させるという、本来の設計理念を根本から覆す、
人命軽視の危ない選択がなかったとは断言できない。実用(運転)段階に至れば、
絶えず正しい操作とメンテナンスが要求される。製造物は、オペレーターの単純なミスでさえ、
多くは忠実に実行してしまう。メンテナンスで手を抜けば、予期しないところで暴走もし、
故障もする。さらには、本体と関わりが生じる周辺のサポート体制の整備も欠かせない。

「モノづくり」の世界では、PL法(製造物責任法)*が、大惨事のみならず、
欠陥品の発生を未然防止する強い抑止力になっている。しかしながら、
痛ましい事故や故障から初めて学び、その経験がフィードバックされて、
改善に役立つという例が少なくない。不幸なことに、全く予知できなかった欠陥が、
人災や天災で露見し、急ぎ改善されるのだ。
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/b_kenmin/customer/kiso3b-j.html

さらに、「モノづくり」の世界では、人間が関わる限り、
「欠陥のない完璧な製造物はあり得ない」との前提で、フェールセーフを採用する。
とくに航空機のような複雑系のシステムでは、一つの機能が失われても、それに代わる次善の策を、
予め設計や運用の段階で織り込んでおく。しかし、あまり重装備のフェールセーフは、
生産的でなくなるばかりか、生産から運用までのコストを押し上げ、
結果として商業ベースに乗らない。バランスを考えた妥協がどこかで必要とされる。

要するに、飛行機が落ちない保証なんてないのだが、
お客の命を預かって空の旅をサービスするエアラインは、落ちるリスクを抱え、
どのような範囲の責任を認めているのだろうか? あらためて、
日航の「国内旅客運送約款」*を例に読んでみると、第40条には「会社の責任」として、
責任に「任じない」場合も細かに規定しながら、併せて「身体」に及ぼす「損害」について、
一定の条件のもとで「賠償の責に任じます」と明記している。
http://www.5971.jal.co.jp/yakkan.htm

「落ちない」とはいい切れない飛行機を飛ばす、宿命的なリスキービジネスだが、
その道のプロとして、安全運行にかける確たる自信と決意があってのこと、にも拘わらず、
わたしたちが空の旅を選ぶときは、過去の経験や知識から、
便利の裏に潜む危険への恐れを完全には払拭できない。不安を抱えながらも、
成りゆきに身を任せるしかないという現実は、よく考えてみればたいへんに異常だ。

つまり、進化したはずの「モノづくり」にも、便利と危険の二律背反を解くという、
大きな課題が残されていることに気づく。残念ながら、こればかりは、一朝一夕では解けない。
恐らくは、人間のさらなる知恵を、永遠に絞りつづけなければならないのだと思う。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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