ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも 《08》

2001/09/17

《seq08》

    ┏━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┳━┓
    ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
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        --浪費なき日本の繁栄のために--

 《08》 報復へと走る崩落の先々

ワールドトレードセンター(WTC)が、ニューヨークの空から消えた。

マンハッタンの南端に屹立し、2本柱のように見えた超高層ビルだ。
展望台からは北側にマンハッタンの全景を一望、南側に自由の女神を遠望できる観光名所でもあった。
わたしは仕事で出張中、合間の休日に青天井の展望台に2回だけだが上った。
回廊から景色を楽しみながら、眼下から舞い上がるゴーッという騒音にアメリカの活気を感じたものだ。

この双児のビルは、日系アメリカ人がデザインし、1970年に着工した。1977年に完成したが、
日本の鋼材が大量に使われたことで知られた。意外にも日本との因縁が浅くなかった。
日本の粗鋼生産量は、1970年代に年1億トンの大台に乗り、1997年まで下ることがなかった。
アメリカ向け鉄鋼輸出には、ダンピング問題で白黒を争った長い歴史がある。WTCへの納入の成功は、
ちょうど輸出に勢いがつきはじめた頃で、今なら大袈裟に聞こえるが、
当時としては単に製鉄業に止まらない、国家的な快挙だったはずだ。
そのWTCはすでにない。

「米国同時多発テロ」の一部始終を茶の間のTVからリアルタイムで見た。
旅客機をハイジャックし、乗客を道連れに、
こともあろうにワシントンDCのペンタゴンにまで体当たりするという「カミカゼ特攻」の非道が、
地上の多くの市民も犠牲にした。あっけなく崩落するWTCの姿に驚き、怒り、
いい尽くせない喪失感に襲われたのは、アメリカ人だけではないだろう。
日本の製鉄業も、貴重なモニュメントを一朝で失った。

わたしが愛読しているメールマガジンに、アメリカ在住の日本人が発信するものが二つある。発信人は、
ニューヨークやワシントンDCを主な拠点に活動する。それぞれが送ってきた臨時号には、
安否を気づかう日本の肉身や知人の電話を受け、事態をはじめて知ったとあった。
あるTV報道でも、当のWTCに事務所を構えていた日本の会社の同様な例を紹介した。
「上が爆発している」という日本からの電話で事態の重大さに気づき、すぐ避難して命拾いしたという。 
事務所が左右に激しく揺れたが、あまり大事とは思わず、朝の仕事をつづけていたのだ。

時空の隔たりを埋める「同時放送」が、遠くの生命を救った。犠牲になった旅客機の乗客も、
携帯やエアフォン(機上電話)などで、ハイジャックされたことを家族に伝えている。
この時代、高空を飛ぶ密室の悪事が、地上に簡単に漏れる「情報化社会」なのだ。

TVが惨状を切れ目なく詳しく伝え、大統領も「21世紀の最初の戦争」と称し、
「報復」へ向けて根まわしに余念がない。多民族国家が一日にして「反テロ」で結束した。
日本政府も時を待たず、協力を申し入れた。

にも拘わらず、ここで気になるのは、報復への気運が高まるなか、
かくも進んだ情報化社会から隔絶された人々がいることだ。報復の対象の「テロ集団」の人々だ。
幹部はともかく、日本やアメリカとは対極にいて、多くは貧しく、
狂気を誘う片寄った情報しか与えられていない。子供も、狭い世界に閉じ込められたまま成長する。
そういう人々のマインドコントロールを解く方法は考えられないものか。
日本のカミカゼ特攻も、似た背景があった。当時は、国民が共有できる情報の絶対量が少なかった。
政府によって「言論統制」された事情もある。今のように自由で多様な判断材料があったなら、
最適な別の選択肢が見つかり、一蹴されておかしくないはずの作戦だった。
一方、いい古されたことだが、情報を制限され狂気に走る相手に、憎しみをもとに報復するなら、
命知らずの非道のエネルギーをさらに呼び覚まし、いよいよ強固にするだけだ。

真っ当で耳に残ったのは、国連の事務総長の短い声明だった。「こういう今こそ、いつにも増して、
冷静で理に適った判断が不可欠だ」というものだ*。しかし、どうにも空虚に聞こえてしまう。
世の本流の動きは、明らかに別の方向へと走りはじめているからだ。
http://www.un.org/News/Press/docs/2001/SGSM7948.doc.htm

先々、テロと報復の悪循環の根を断たない限り、この怒りや喪失感が癒えることはないだろう。きっと、
犠牲者の無念を晴らすこともない。

つづく


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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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