ビジネス一般

日本の支え「モノづくり」

日本の「モノづくり」への賛美と懸念を頭に置きつつ世の森羅万象を考える。図案屋稼業の傍ら、かって商社に勤務した経験も振り返り、書き溜めた著者自身の備忘録でもある。

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モノづくり、あれもこれも

2001/08/27

《seq07》
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        ┃モ┃ノ┃づ┃く┃り┃、┃あ┃れ┃も┃こ┃れ┃も┃ (続編)
    
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   --浪費なき日本の繁栄のために--

 《07》 たかが糊、されど糊

身の回りの地味な技術に、意外な奥の深さを感じることがある。

接着剤は、なんの不思議もない文具の一つに過ぎない、と思っていると間違いだ。
わたしたちの生活に欠かせない必需品として、目覚ましく成長した文明の利器の一つだろう。
たかがノリ(糊)と思いながらも、その使い勝手の向上には、並みでない工夫が隠されている。

わたしは、録画済みの古いビデオテープを消去して、新しいものを録画することがよくあった。
その都度、カセットの表題を書いた古いラベルを爪先でこじって剥がし、
新しいものに貼り替えるのだが、多くの場合、跡形なくそっくりきれいに剥がすことができる。
しかし、安さに負けて仕入れた外国産のビデオカセットでは、ラベルがビリビリ破れ、
汚く残ってしまう経験が何度かあった。つまり、カセット本体の接着面や糊の粘着性、
ラベル用紙の紙質や強度など、それぞれの材質のバランスを考えない低級品だったのだろう。

「モノづくり」の現場でも、相手の材質によって強く接着したり、
剥がれ易かったりする糊の性質を巧妙に使い分け、
缶詰のラベル貼リを自動化した現場を見たことがあった。テープ状の長い台紙に、
予めラベルが一つひとつ連続して貼ってあり、
台紙がテープのように流れて駆動軸の部分に差し掛かると、台紙は軸に添って曲がる。
ところが、ラベルは突っ張って曲がらず、台紙からはく離しようとする。その瞬間、
負圧がかかった吸盤が、ラベルを吸い取って剥がし、缶詰の脇腹の定位置まで運ぶ。
つぎの瞬間、待っていた押さえのスポンジが動き、その圧力でラベルを缶詰に素早く押し、
完全に接着させるというものだった。

わたしたちの家庭やオフィスの生活を一大改革した優れものとして、
セロハン粘着テープ(セロハンテープ)も忘れることができない。わたしが初めて知ったのは、
まだ日本が連合軍に占領されていた半世紀も昔のこと、
親戚などから親宛てに届く郵便の封書が、連合軍の検閲を経たせいで、
セロハンテープでしっかり閉じてあった。日本人の間で不穏な動きがないか、
事前にキャッチするため、連合軍の手によって開封され、内容が読まれていたためだ。
こども心にこの透明なテープが珍しく、普通の糊とは違う、強い粘着力にも驚いた。

このセロハンテープは、もともと、アメリカで発売された「スコッチテープ」*が起原だが、
日本でも、戦後、猛烈な勢いで普及し、N社の登録商標「セロテープ」が、
そのまま通称になってしまった。この登場によって、
糊で手を汚してしまう煩わしさから少なからず解放された。テープが透明なため、
利便性をさらに向上させ、辞書のカバーやページの破れなどを補修するにはすこぶる便利だった。
http://www.3m.com/about3m/student/scotchbrand4/

接着剤の応用には、意外な広がりがある。建築に欠かせない合板にも利用されているし、
壁紙の接着では、発癌性のホルムアルデビドやトルエンのような化学物質が、
室内の空気を汚染するとして問題になった。最近では、
医用のものが外科手術の縫合にまで応用されているのも驚きだ。

たかが糊、されど糊、身の回りのさり気ない地味な技術に、同様な例がたくさんあるに違いない。

つづく

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創刊日:2001-04-23  
最終発行日:  
発行周期:3週間毎  
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