社会・社会学

金融業の裏話(バブルはバルブにはならなかった)

二度と訪れないバブル景気。 その真っ只中で企業融資に関わった主人公のほぼノンフィクション裏表話。

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金融裏話・バブルはバルブにはならなかった*(第34号)

2001/12/27

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 *金融裏話・バブルはバルブにはならなかった*(第34号) 
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この物語は基本的にノンフィクションで、個人のプライバシーを侵害する可能
性のある部分のみをフィクション化しております。
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今年一年お付き合いくださり、まことにありがとうございました。
この物語は、ようやく1/3程をご紹介させていただきました。 まだまだ長い
話になりますが、来年も引き続きご愛読いただければ嬉しく思います。
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さて、T機械製作所の命日は意外にも早く訪れました。 彼の放漫経営が原因
と思われましたが、実は営業利益だけでなく借金をしてまでも金銭を注ぎ込む、
悲しい現実があったのでした。
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今号総発行部数:1389

それでは前号からのつづきです


               第4章.バブル景気に乗り遅れるな


(第二話)企業の命日・その6


 T機械製作所の命日は昭和63年夏に訪れた。
 僕はもはや同社とは距離を置いており、T社長とも個人的な付き合いは控
えていた。
 この頃僕は、相変わらずA社での仕事を難なくこなし、自分自身の顧客とも
順調な取引を継続し、さらにK氏との付き合いも続いており、毎月の収入が120
万円から多い時で150万円にもなっていた。

 しかし生来の貧乏性で、その稼ぎを持って歓楽街の高級クラブなどには自分
の金では一切行かず、ひたすら場末の酒場で仕事の疲れを癒していた。
 唯一の贅沢といえば、心をリラックスさせてくれる女性の存在であった。
 妻がいながら不謹慎といわれれば返す言葉もないが、その頃の僕は仕事で神
経をすり減らし、平日は妻子の待つ家庭でそれを癒すことが出来なかったため、
酒と女性に身を委ねていたのだった。

 その女性は、以前に述べたように、A社で短期間事務員として勤務していた
N嬢で、A社を退職後は化粧品会社に勤務するOLをしていた。
 僕は週に一度だけ、仕事が終わってから彼女の元を訪れて、お互いにいつか
は終わりの来る関係を理解しながら、つかの間の存在を確かめ合っていたので
あった。
 
 さて、T機械製作所の社長から『今夜ご相談があるので会いたい』と連絡が
入り、僕は退社後久しぶりに彼の事務所を訪れた。
 事務所の横の工場では、普段と変わりなく従業員が忙しく仕事を行ってい
た。
 『久しぶりだな。 順調そうじゃないか』と僕は一人で書類整理を行ってい
るT社長に声をかけながら入って行った。
 『あっ、どうもFさん、ちょっと大変なことになりました。 説明しますの
で外に出ませんか』と彼は相も変わらないポーカーフェイスで言った。

 僕達は近くのビルの1階にある居酒屋に入り、つい立てで隔てられた席に座
った。
 運ばれてきたビールを一杯飲み干したところで、彼は静かに話し始めた。
 『実はいよいよ決済が大変になりました。 明日の仕手決済の資金が、全く
目途がつきません。 明日は300万円程ですが、月末にも250万円程あります。
 もうどうにも手当ての方法が考えつかないのですよ。 Fさんには50万円借
りたままですよね。 これは何とかお返ししようとは思うのですが、ちょっと
仕事の継続は難しくなりました。 誰にも言っていないのですが、Fさんには
お世話になったので伝えておかなければと思いましたので・・・』

 決済金額はこれまでよりかなり大きいが、商売をしていたら手形の決済は
当たり前だし、しばらく彼と会わなかったこともあって、最初彼は一体何を
言っているんだろうと僕は思った。
 『最近の月商はどれくらいあるんだ?』
 『仕事は変わらず入ってきています。 大体700万円前後はコンスタントに
売り上げがあります』
 一ヶ月の手形決済金額が月商分と同じ位あるというのは、これは企業とし
て異常な状態であるのは誰でも分かる。

 彼の会社には従業員が現在5名で、彼を含めて人件費には250万円程あれば
足りる。(事務員はこの時点で退職しており、工場の従業員も多い時に比べ
て2名減っていた)
 僕は700万円も月商があって、なぜ資金繰りが大変なのかこれまで分から
なかったが、やはり商売上以外の手形をドンドン切っているということなの
だ。

 【一体彼は何に金を使っているんだ?】僕は彼の内面を決して見せようと
はしない態度に、金策に追われている最大の原因が理解できずにいたのだっ
た。
 『手形の決済先は?』と僕は静かに聞いた。
 『大きな金額のものはM医科器さんに渡したものです。 他は街金融から
の借り入れが150万円程と、材料屋などの支払いが残りです』と彼はこの期
になっても落ち着いた態度で言った。
 『M医科器などに何故手形を切っているんだ? 仕事をもらう相手じゃな
いか?』と僕は何度か受取手形を割り引いたことのある、中堅医療器販売会
社であるM医科器に、彼の会社が逆に手形を切っていることがおかしいので
問い詰めた。

 彼はいよいよ初めて言いにくそうな顔をしながら、
 『実は・・・、資金繰りが苦しいので手形を貸してもらって、その見返りに
こちらが同金額で借りた手形の5日前の決済期日の手形を渡しているのです。
 それが300万円程明日回ってくるのですよ』と言うのだ。
 『それって融通手形やないか!』
 僕は思わず大阪弁になって叫んでしまった。
 融通手形をするようになったら、その企業は命日が近いと考えて間違いは
ない。
 『それで今月は300万円としても、もっとこれから先にあるやろ?』
 と僕はさらに聞いた。

 結局、M医科器との融通手形は4ヶ月に渡って、合計1500万円近くにものぼ
り、彼の会社は受け取った手形を銀行や市中金融業者に割引してしまってい
るが、先方は期日に銀行に取り立てに回しているとのことであった。
 彼の会社が決済をしている限り、この融通手形は続くだろうが、一度でも
不渡りを出せば、M医科器は供託手続きを踏んでくる筈である。

 『しかしまあ、よくM医科器が融通手形に応じたものだな』
 M医科器は中堅であるが、毎期好決算を計上している内容の良い企業であ
る。
 よっぽど彼がうまく相手の担当者を抱きこんだか、社長に気に入られたの
だなと思ったが、ともかくM医科器に依頼返却をかけてもらうか、ジャンプ
してもらうしか方法はないではないか。

 『じゃあM医科器に何とか相談を持っていく必要があるよ。 明日じゃだ
めだ。 今晩のうちに相手の社長か担当者に連絡をしろよ』
 と僕はこの時点ではまだ何とかなると思って言った。
 しかし彼は、『それが、既に相談をしてみたのですが、融通手形は先方の
経理部長と秘密で交わしていて、社長にばれたら大変なことになるからジャ
ンプなんて無理だと言うのですよ。 その経理部長も首になるといって、僕
に何とかしろと罵るのです』と言うのだ。
 『当たり前じゃないか! その経理部長も要するに使い込みをしたのと同
じようなものだ。 お前は無茶苦茶なことをしてるじゃないか。 それで既
に飛ばすと決めたんだな?』

 飛ばすとは不渡りを出すということである。
 『明日の決済はそういう訳でどうにもなりません。 経理部長にも申し訳
ないですが、こうなったら仕方がないです。 それで明日は昔世話になった
工具屋さんに頼んで、ここにある機械を買い取ってもらおうと思っているの
です。 その中からFさんの50万円はお返しします。 他の決済は全部しませ
ん。 今後ですが、ともかく兄の会社で働きながら再度のチャンスを待とう
と思います』

 彼は淡々と話すのだが、一度会社を潰した者が、そう簡単に再度事業を興
せるほど世の中は甘くない。
 こいつはきっと甘やかされた家庭環境で育った、単なる甘チャンだなとこ
の時になって僕は初めて思ったのだが、それ以外に彼には会社の利益をつぎ
込むばかりでなく、多額の借金をしてまでも金銭を惜しみなく注ぎ込む原因
があったのだった。
 それは本当に悲しい現実なのだった。

つづく・・・

       ★お知らせ★

   次号は一週お休みをいただき、来年は1月10日前後が2002年最初の
   配信とさせていただきます。
   それでは今年1年お付き合いくださり、ありがとうございました。
   良いお正月をお迎えください。
   ではまた来年!



  ※今号が若干配信が遅れましたことをお詫び申し上げます。

Writer:Hiroshi Fujii
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