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動物病院からの話題

動物病院にやってきた動物について、一週間に一回ぐらいで書きます。 職業がら病気のことが多くなると思いますが、楽しい話題も書き込みたいと思います。 

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重曹と猫の皮膚病

2009/05/09

先日、炭酸水素ナトリウムをご存じですか? と文章を書き始めました。
いろいろの方から、コメントを頂戴しましたが、その中に、次のコメントがありました。

【ドクター!しっかりしてください。過去に習った知識、すなわち最初のあなたの推測が正解。自力で調べたことが不正解です。
最後にリンクされているURLは、表が間違っています。重曹(8)なのに、(11)以上の欄に誤記されています。それくらいは見極めてください】

この方の言われる通りです。獣医師はドクターと呼ばれるかどうか、知りません。普通は、博士号を持った人のことを言います。医師の方では、博士号を持っていなくても、使われるのではないかと思います。
ドクターにせよ、獣医師にせよ、獣医師失格です。

ご指摘の通り、このページを作られた方は、間違っておられます。自分でPH8と書いておきながら、強アルカリ性の欄に掲載しておられます。

コメントを寄せられた方の言われる通り、自分で調べないで、人の書かれたことを安易に利用するから起った間違でした。

インターネットは便利ですので、すぐに使ってしまいます。インターネットに限りません。新聞、テレビでも、半分ぐらいは間違っているのではないかと、常日頃、思っていながら、失敗の巻でした。お詫びいたします。

重曹は、アルカリ性であることや強アルカリ性であることも知りませんでした。
知らないことが間違いのもとですが、もう一度、思い出して書いてみます。
安楽死した猫は、皮膚も毛もありましたが、背中の穴のあいた所から、手術のときに使う鉗子(カンシ、手術の時に、組織を挟んだり、組織を潰すときに使う器具)を挿入し、360度、回転させましたが、すべて入りました。挿入したのは、5センチぐらいでしょうか、一部は8センチぐらい挿入しました。どの個所も、皮膚の下は空洞でした。出血もなく、化膿もありませんでした。細菌がいきておれない状態だったと思われます。

普通は、組織は、上から皮膚、皮下織、あれば脂肪層、筋肉層と続きます。どの組織の間にも、空間はありません。注射を行う時は、薬を入れる組織の名前を取って、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射と区別されます。皮膚はあまり厚みがありませんから、特殊な注射になります。どの注射もすき間のないところに、無理やりに薬を注入することになります。

 従いまして、確かめた所は、鉗子で探った部分だけですが、この部分は、皮膚は、触るとボロボロととれてしまいました。その下から現れたものは、筋肉です。所謂、お肉になるのですが、猫の方は、生きていますから、赤く瑞々しい? 感じです。 獣医師の方でも、想像できないのではないかと思いました。ところが、お腹の方は、背中の状態になる前、進行中ではないかと判断しました。皮膚は、よく観察しませんでしたが、背中よりは、まだ、水分が残っているようでした。しかし、鋏を入れて毛を刈っていましたら、皮膚が崩れていきました。
 それと、もう一つの特徴は、皮膚の下は、ヌルヌルでした。

 皆さんには、関係のないことを書きましたが、どこかの先生が注射のミスをされた可能性も考えました。そうであっても、3〜4日前まで餌を食べていたことが説明つきません。
どういうわけか、犬ではありませんが、カエルや猫を、悪戯で、切り裂いたという事件が、これまでに沢山ありました。多くの場合、殺人への一つの過程の様に考えたことがあります。(例 『酒鬼薔薇聖斗事件』) それぐらい、私の頭では、どのようなことをしても、起りえない症例だと思いました。
 あるとすれば、強アルカリ性か強アルカリ性の薬品しかあり得えないと思っていましたが、それにしても、そのようなものを注射器で注入しても、このようなことにはならないと考えました。

インターネットの一覧表を見た時に、重曹が、強アルカリ性の欄にあるのを見て、そんな馬鹿なと思いました。強アルカリ性でもこのような症状にならないとも思いながら、インターネット上のミスには気が付きませんでした。

こんな恐ろしい光景は見たことがありません。ぞっとしました。
もう一つの失敗は、作業をする時に、手袋をしなかったことです。手袋をしていましたら、判断が又、変わったと思われますが、素手だったため、長時間さらされた私の手はヌルヌルでした。普通は、生きていた猫に付いていたものです。手を洗えばとれるはずですが、とれませんでした。ヌルヌルは時間がたてば取れると考えましたが、その後、お風呂に入って手を眺めていましたら、手に皺がいっぱい生じていました。
 この時は、なにかの薬品と思っていましたので、やはり、完全に取ろうと石鹸をつけて洗いましたが、とれません。一瞬、しまったなと思いました。あくる朝になると手の皮膚がズルズルになるなと覚悟しました。しかし、その後、床のタイルで手を何度かこすりましたら、ヌルヌルは取れました。
 重曹を2月から毎日、使っていたということは、朝になってから聞きました。手のシワは、少し取れましたが、カサカサになりました。

このようにもう一度、考え直しますと、重曹はPH8と書いてありましたが、他の資料では、
 PH8.5 〔1%水溶液、25度C〕と書いたものがありました。
どちらの数字にしても、弱アルカリ性のようです。
 これでは、重曹が原因ではないことになります。

 もう少し、検討することにしました。
 〔1%水溶液、25度C〕の意味が判りません。重曹は、次の会社の資料によりますと、
高杉製薬株式会社
http://www.takasugi-seiyaku.co.jp/prdt/img/pdf/MSDS_048.pdf

!)成分及び含有量:炭酸水素ナトリウム99.0%以上  白色粉末
 どうやら、水にはあまり解けないようです。他の資料によりますと、100gにつき6.9g、水(20℃)100gにつき9.6g解けるそうです。
上に書きましたデーターでは、PH8.5 〔1%水溶液、25度C〕でそれほど心配のないものと思われます。しかし、水(20℃)100gにつき9.6g解けるということは、25度ですと、もう少し解けることになります。25
1%でPH8.5の水溶液と比較しますと、
25℃)100gに9.6g溶かした時は、PHがどれぐらいになるのか判りません。

!) 有害性:人体に対する影響  皮膚長時間接した場合、刺激性軽度。 眼刺激性軽度
      極く軽微に書いてありますが、応急措置には、医師にかかるように書いてあります。
!)皮膚腐食性:データなし。
 
以上のことから、重曹を製造しておられる会社でも、皮膚にたいする害のことは、把握されていないことが判ります。
 猫の飼い主さんは、2月から4月半ばまで、毎日塗布したと云っておられますが、もっと長かったかも知れません。それと、重曹を沢山溶かそう
とされましても、室温ぐらいに温度が下がりますと、溶けている量も減ります。猫の皮膚が溶けますと、新たな物質になる可能性もありますから、アルカリ度はもう少し、増えるのかも知れません。

前回 最後に、
重曹のことは、ご自分で確かめてください。(http://shop.aparagi.net/study/vs.htm )

皮膚に塗りますと、皮膚が溶けてしまいます。

と書きましたが、撤回です。

 もう一度、考える必要があります。 外に、原因が考えにくいですが、一番確かなことは、実験することです。2ヶ月塗布したらどうなるか、3ヶ月塗布したらどうなるか、舐めないようにしたらひどくなるか等です。 こういう研究は肌に合いませんから、臨床獣医師の仕事を選びました。
 従いまして、私が、このような実験をして確かめることはできません。
ということで、私から皆さんに云えることは、シャンプの代わりに、犬や猫には、「重曹」は使わない方がいいと思います。やはり、シャンプは水がお湯でしてください。
 しかも、毎日、実験をするような使い方は止められたら良いと思います。

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創刊日:2001-03-27  
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発行周期:週刊  
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  • 名無しさん2009/05/11

    重曹は水に溶けると両性イオンHCO3-を生じ電荷平衡によりpHが変動しにくくなります。

    くわしくはこちらのpdfをご参照ください。

    http://www.k5.dion.ne.jp/~mikecat/chem/ampholytichtml.pdf

    平たく言えば、ある程度以上の濃度になると濃度が10倍100倍になってもpH8.3〜8.4の範囲で変化しなくなるということです。

    重曹水が乾燥して重曹が飽和析出しても強いアルカリにはなりません。

    またさる方から、「ほぼ均一に塗布されるのであれば、毛や皮膚の薄い耳が真っ先にやられるはず」というアドバイスをいただきました。



    お話から、特定箇所が集中的に変質していたようですので、重曹が原因とは考えにくく、事故あるいは事件性が高いと思います。

    石鹸を作るとかパンを焼くとかの用途で水酸化ナトリウム50%溶液を所持されるご家庭がありますが、購入に印鑑が必要な身近な強アルカリ性の劇薬はこれでしょう。



    犬や猫に「重曹」を使わない方がいいのは別の理由があり、こちらのブログにてわかり易く記されています。

    http://plaza.rakuten.co.jp/tappo/diary/?ctgy=11

  • 名無しさん2009/05/09

    猫砂に重曹を混ぜるのも、足を舐めるので

    やめた方が良いという意見もあるようです。