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彼の声

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彼の声 2017.9.5 「信用の創造」

2017/09/05

 人や集団やそれらが取り扱う物や情報やサ
ービスに生じる社会的な信用には、それらが
構成する社会が抱え込んでいるある種の差別
や偏見が潜んでいて、しかもその社会の構成
員にとって差別や偏見は否定すべきことでは
なく、それを共有する程度や度合いに応じて
社会内での信用が生まれ、そうやって生じる
信用に基づいて、社会の中での階層や地位や
立場などが人や集団によって構成される。例
えばその社会内で信用できる者は、社会内で
共有され認められた階層や地位や立場などを
わきまえた行動や言動ができる者であり、そ
のような行動や言動がその社会の秩序をもた
らし、その秩序から生じている階層や地位や
立場などを守るような作用を行動や言動によ
ってもたらすことが、それらの階層や地位や
立場によって構成される社会全体を守ること
だと認識されているのではないか。それは差
別というよりは階層間の区別であり、偏見と
いうよりは地位や立場に応じた見解となるの
だろうが、低い階層の出身者からしてみれば
差別に思われるだろうし、地位や立場にこだ
わらない意見を述べようとすれば、それは地
位や立場をわきまえない思い上がった意見と
みなされてしまうのではないか。また何らか
の集団が世間一般的に信用できる集団だと思
われているとすれば、それは社会内で成り立
っている制度や秩序を守っているからだろう
し、さらにその集団の活動が社会に利益をも
たらしていると思われるなら、社会にとって
その集団は信用できるし有益な集団と思われ
るのではないか。さらにそれらの人や集団が
取り扱う物や情報やサービスが信用できると
思われるなら、やはりそれは社会の制度や秩
序を守る上でそれらが有益だと思われる限り
で信用されるのだろうし、逆に人や集団やそ
れら取り扱う物や情報やサービスが社会の秩
序を乱して制度を破壊するような作用が認め
られるなら、それらは社会にとって有害で信
用できないものとなるだろうし、それらを信
用して利用したり追従するような者や集団は、
場合によっては社会の敵とみなされて非難や
弾圧の対象となるのではないか。そういう意
味で社会的な信用とはその社会そのものを守
り維持するような作用を及ぼす物事に生じる
のであり、一般的には社会の秩序を乱したり
制度を破壊するような作用を及ぼす物事は信
用されないわけだ。

 しかし実際には社会の秩序を乱して新たな
秩序を構築して、旧来の制度を壊して新たな
制度を作り上げるような人や集団が歴史上必
ず現れるわけで、そのような人や集団は新た
な秩序や制度の中では信用されるわけで、そ
のような価値の創造者たちによって社会が刷
新されることになるわけだが、刷新される過
程で旧来の価値観を守ろうとする側からの激
しい抵抗に直面するだろうし、そこで改革勢
力と旧主派勢力との衝突が起こるわけだ。そ
う捉えてしまうと単純化された相関図を想像
してしまうわけだが、どうも実態はそうでは
ないようで、改革派と称する人たちは自分た
ちが社会の中で主導権を握るためには利用で
きるものは何でも持ち出してくるわけで、場
合よっては旧主派の価値観もそのまま利用し
ようとするし、そういうところでは彼らこそ
が古き良き伝統の体現者のように振る舞うだ
ろうし、例えば通俗的な歴史家の間では時代
の革命児のごとくもてはやされる織田信長が、
その前の時代の室町時代に全盛だった伝統芸
の能を愛好していたり、その部下で天下統一
を果たした豊臣秀吉もその後を継いだ徳川家
康も、自分たちの支配の正統性を根拠づける
のに朝廷の権威を利用したり、その伝統はそ
の後の明治政府においても受け継がれたのだ
ろうが、新しい秩序を構築するたびに、その
都度古い権威との連続性を強調して、古い秩
序にしがみついて抵抗する人たちを屈服させ
ると同時に、権力を継承した自分たちを信用
するように強要するわけで、要するに文句を
言わせないようにするために古い意匠を利用
するわけだ。実質的にはそこで歴史的な断絶
と不連続が生じているわけだろうが、その古
い意匠を換骨奪胎した新しい秩序というのが、
歴史的な連続性を装っているわけで、それは
ある種のまやかしでしかないのだろうが、敵
対する勢力を取り込むにはそれが必要なのだ
ろうし、そうすることで信用が生まれるわけ
だが、信用というのはそれが形式的な傾向で
あるほど、その中で本音と建前との間で隔た
りが大きくなるのだろうし、それが形式的な
信用であるほど、本音の部分では信用してい
ないわけだが、社会通念上は儀礼的に信用し
ていることを装わなければならなくなり、世
の中に向かって社会の秩序や制度を守ってい
ることをアピールすることで世間的な信用を
得ようとするわけだ。そして守っているはず
の秩序や制度を自分たちに有利になるように
作り変えようとするのではないか。そういう
やり方の自称改革派は世の中にいくらでもい
るだろうか。 

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創刊日:2001-03-26  
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