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彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2017.7.6 「二律背反」

2017/07/07

 人が必要としない物はその存在が気づかれ
ず、気づかれても活用しようとは思われない
から、大抵は放って置かれることが多そうだ
が、今は不要でもかつては必要であった物は、
それが必要だった頃の記録が何らかの形で残
されていたら、そこからそれが活用されてい
た頃の時代背景や社会情勢が明らかになるか
もしれず、またかつて活用されていた物が今
はもう活用されなくなった理由を探ることか
らも、そうなった歴史的な経緯や事情が明ら
かとなって、そこから時代の変遷に伴って変
わりゆく物と人との関係が説明できるかもし
れないが、そんなふうにして過去の歴史に関
してわかることが、今の時代にどう関わって
くるのかといえば、今の時代において必要不
可欠に思われる物が、過去の時代においては
そうでもなかったことと、逆に過去の時代に
おいて必要不可欠だった物が、今の時代にお
いてはそうでもないことが、過去の時代と今
の時代とでは、必要な物と不要な物が異なっ
ていて、そこから推測すると、今の時代にお
いて必要不可欠な物が、未来においてはそう
でもなくなるかもしれないことが想像できる
だろうし、そうなると特定の物に関して今の
時代において守るべき規範やこだわりが、何
らかの利益をもたらしている状況があるなら
ば、それが永遠に続くとは限らず、もしかし
たらそんな関係は遠からず廃れてしまう可能
性があるかもしれないし、また廃れずに延々
と続いていく可能性もあるわけだが、社会の
中で様々な物事が廃れたり存続したりする過
去から現在までの歴史的な経緯や事情を知る
ことで、今の時代に守ろうとしている規範や
こだわりに対する見方や捉え方が変わってく
るかもしれず、そのような歴史認識が今の時
代における相対的な物のあり方を感じさせ、
物事の取り扱いに関して頑なに規範を守ろう
とするこだわりが薄れてくれば、人と物との
関係の可動性や組み換え可能性もそれだけ増
すことにもなるかもしれないが、そうである
にしてもすべての物が一様の価値で存在して
いるわけではなく、その関係の在り方や性質
や他の物との結びつきの強度などが、様々な
偏差を伴いながら存在していることも確かな
のかもしれない。

 人と物との関わりが人と人との関わりを生
み出したり、あるいはその関係を解消したり
する場合もあるだろうが、物を介して人と人
とが関わりあうということは、その関係にと
っては人と人とを結びつける物の存在が必要
不可欠であることを示していて、そんな物な
しでは関係し合えない人間関係というのが、
いわゆる経済関係になるのだろうが、物では
なく言葉を通しての関係というのも、言葉を
伝達する媒体として物を必要とする場合があ
るだろうし、器官としての肉体も物であるこ
とには変わりなく、言葉を発する器官として
の肉体も、人と人とを関係させる重要な物で
あり、そこから物と物との関係が肉体と肉体
との関係になる場合まであるわけだから、人
と物とを区別することは厳密にはできず、物
の延長上に人が存在していて、物を扱うよう
に人を扱うようなことがあれば、それは非人
道的な行為として非難されることもあるわけ
で、その辺の区別をどうつければいいかに関
して、精神という概念を介在させたがる傾向
があるだろうし、個人を自意識や意志や固有
の人格を持つ特別な存在として尊重しなけれ
ばならない、というのが人間主義であり、そ
こから人権の概念も生まれてくるのだろうが、
人権も歴史的に生まれてきた経緯があり、物
一般から切り離して肉体を区別しなければな
らない必要が、歴史上のある時期において生
じてきたわけで、それが経済の分野では肉体
が労働力を生み出す源泉だという認識が出現
した時期でもあるのだろうが、そんな必要が
生じた背景には、肉体という物を使って効率
的に利益をもたらすシステムとして工場の発
明や、人と物を組織的に動作させる株式会社
の興隆などが挙げられるのかもしれず、そし
てそんな人の物化と同時に出現したのが、精
神を尊重する人間主義なのであり、一方では
人を物のように扱う非人道的なやり方が発達
して、もう一方では人は物ではなく人権を尊
重される存在として扱われるべきという主義
主張が生まれたわけで、そうやって相対立し
矛盾し合う価値観が並存していなければなら
ない必要というのが、それらの概念や思想が
生まれた以降の社会の成立条件であるとすれ
ば、どちらも現代においては必要不可欠な人
と物との関係だと言えるだろうか。要するに
人は物であって物であってはならないという
二律背反が成り立っているわけか。 

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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