文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2017.6.2 「日常の盲点」

2017/06/02

 意表をついた振る舞いは、相手の意表をつ
いて隙を作るようなフェイクの動作から意識
的にもたらされる場合と、結果的にそう思わ
れてしまうような偶然の巡り合わせからもた
らされる場合とがありそうだが、意図せずに
そうなってしまう場合は、相手だけでなくそ
んな動作をもたらした自らも驚いてしまうわ
けで、その場で自らの動作を意識的に制御で
きていないことに驚いているわけだが、そう
いう経験が自分で自分をコントロールしよう
とする傾向を生み出すのかもしれず、そんな
ふうに自分で自分を制御し支配しようとする
こと自体が目的化すれば、そうすることによ
って自分に何らかの利益がもたらされるよう
な幻想も生まれるだろうし、具体的には自ら
の健康に気遣っていれば長生きできると思わ
れたり、節約して浪費を抑えれば資産を保て
ると思われたり、常に笑顔を絶やさずにおお
らかな気持ちでいれば、周囲の人間関係もう
まくいくと思われたり、そうやって自らに配
慮することから様々な幻想が生まれてくるの
だろうが、スポーツの球技や格闘技などに見
られるフェイクの動作も、相手の隙を作って
そこに攻撃を加えて、ポイントを稼いで勝利
する目的があるわけで、そのために日々練習
して身体を鍛えているわけだが、そのような
鍛錬によって動作を極めれば、もはや意識せ
ずとも自然に体が動くようにもなるのだろう
し、それが高じて常に意識を省略して条件反
射のように動作できるようになれば、自らの
自らへの制御が完璧に行われていることの証
しともなるわけで、そんな境地に至れば自分
で自分を支配しているような気になれるだろ
うし、そのような動作によって実際に何らか
の利益がもたらされれば、その効用を実感す
ることにもなるのではないか。そのような無
意識の条件反射は意図してそうなるように仕
向けることで、それが起こっているわけだが、
意図しなくてもそんなことが起こってしまう
場合は、自分が他の何かに操られているよう
にも思われるわけで、薄気味悪くも思われて、
場合によってはそうならないように心がける
ことによっても、逆説的に自らを鍛錬する目
的が生じてしまうのだろうが、直そうとして
もなかなか直らない癖というのもあるわけで、
その意図せずに身についてしまった癖という
のは、それによって不利益が生じていると思
われれば、意識してそれが出ないように心が
けるし、懸命に直そうともするわけだが、そ
れが利益をもたらしていると思われれば、自
分の才能だと実感されて、そんな自らの長所
を活かそうと心がけるのではないか。

 そんなふうに自らに配慮することを、自分
だけなく他人に働きかけるとなると、そうさ
せることによって他人の自由を奪うような動
作が生じていることにもなるわけだが、その
ような動作はそうしなければならないという
命令から、そうした方が利益になるという勧
誘までの間で程度の差があって、その場での
状況や人と人との間の力関係に応じて働きか
けの手法も異なってくるだろうが、そうする
ことがもっともらしいように思われるような
場合は、それが社会の中で規範として定着し
ていて、制度や慣習としてそうするのが当た
り前のこととなっている場合もあるだろうし、
そうやって人の思考や行動を制御するような
機構が、社会に備わっていると考えれば、そ
んな社会の中で生きている限りは、人の動作
もある一定の範囲内に収まっているようにも
思われるだろうし、そこに何らかの規格化作
用が働いているとも感じられるわけだが、実
際にやってもいいこととやってはいけないこ
とが法律などで定められている場合は、やっ
てはいけないことというのが、自らの意志に
反してやってしまうようなことなのだろうし、
あるいは故意にやってしまうことなのだろう
が、日頃からやってはいけないことだと意識
していても、その場の状況から思わずやって
しまうようなことでもあり、なぜやってはい
けないことをやってしまうのかと言えば、そ
こにやりたいという欲望が介在していて、や
りたいと思わせるような社会的な状況もある
わけで、たぶんそんな欲望を煽るような働き
かけが社会の中で生じているわけなのだろう
が、そのような働きかけであっても、やはり
社会に存在する制度や慣習がそうさせている
のだとすれば、時にはそんな誘惑に負けてし
まうのも、自己への配慮を促す要因にもなっ
ているわけで、暴飲暴食が高じて生活習慣病
に罹ったり、性欲と攻撃的な衝動が高じて強
姦事件を起こしたり、それが自らの制御を欠
いた思いがけない出来事のように感じられる
としても、そうなってしまう成り行きの中で
絶えず自らに配慮しているわけで、自らに配
慮し続けた結果がそうした出来事をもたらし
ているのだとすれば、自分の中で節制を心が
けるような鍛錬と、欲望を増長させるような
鍛錬とが、同時進行的に起こっているとも言
えるのではないか。自分では何か一つの目的
に向かって鍛錬しているつもりなのだろうが、
意識できないところでそれが思いがけないよ
うな効用をもたらしていることを自覚できな
いわけで、それが効果となって実際に現れて
みると、何かそこでちぐはぐなことを起こし
ている現状があるわけで、それが自らが日頃
から行なっている鍛錬の結果だとすれば、そ
こで愕然とするしかないのかもしれないが、
大抵はそんなことにも気づかずに日々を漫然
と過ごしているのではないか。 

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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