文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

全て表示する >

彼の声 2017.5.9 「途中の過程で」

2017/05/10

 人ができることは限られているが、思って
いることはそれとは違うようだ。ただそうは
思わないだけだろうか。実際にやっているこ
とを意識していないのではないか。できない
のではなくそうは思わないわけだ。みんなそ
こで同じようなことをやっているのだろうか。
やっていることから退いてみればそう思える
が、やっているときにはそうは思わないはず
だ。やっている最中ではそんなことは意識し
ていない。世の中で何かが流行っているのは
そういうことだろうか。たぶんそうなのだろ
うが、そんなことはどうでもいいことだ。同
じようなことをやっている人たちは、その過
程で不満などいくらでも生じるが、やってい
ることについては、概ね各人がそれぞれに自
己満足に浸っている。それだけのことなのだ
が、それ以上に何が行われているわけではな
い。そんなことを考えてみてもどうなるわけ
でもないらしい。そこで何不自由なく暮らし
ているわけではないが、そこで生じている制
約や不都合には目もくれず、それにこだわっ
ているわけだ。制約や制限や不都合にとらわ
れている。それが否定的な要素とはならず、
逆にそれにこだわることによって生きがいを
感じている。いったんそうなってしまうと、
そこで何かに従っている状況から抜け出せな
くなるわけだが、そうである限りにおいて、
やりがいを感じているわけだ。何らかの制約
がないと、逆に何もやれなくなってしまうの
ではないか。何をやればいいのかわからなく
なってしまうのであり、ある程度は視野を狭
めないと焦点が定まらない。そうやって人を
捉えているのが、社会的な規範であり制度や
慣習だろうか。それがあるおかげで誰もが同
じようなことをやっていられるのであり、そ
んな人を捕らえておく何かがないと、社会を
維持できなくなってしまうのではないか。ま
とまりがなくなってしまうのであり、価値も
利害も一致しなくなってしまう。それらを基
にして限られた領域が出現して、そこに人や
集団がひしめいていられるのは、同じ価値観
や利害にとらわれているからで、そうである
限りでゲームが生じていて、そのルールにも
効力があり、同じルールを前提としてゲーム
に興じていられるわけだ。そしてそうである
からこそ対立も生まれ、争いの中で攻撃と防
御の応酬があるわけだ。

 そんなふうに説明すればそんなことでしか
ないのだが、その中にいればそうは思わない
わけで、なぜ敵対しているのかとは考えず、
どうやって敵対しているのかとも考えない。
まず第一に勝つにはどうしたらいいのかと考
え、どうやれば勝てるのかを考えるわけだ。
その違いは何なのか。ただ考える視点が異な
るだけだろうか。ゲームに参加している以上
は悠長なことを考えているわけには行かず、
前のめりになって勝利を目指さなければなら
ず、そんなゲームが成り立っている背景など
を考えている余裕はなく、そんなのは二の次
であってどうでもいいことだ。そんなことを
いくら考えても勝てるわけではなく、勝利以
外のことを考えていると負けてしまうだろう。
そうでなくても負ける可能性があるわけだか
ら、まず最優先で考えるべきは勝つためには
どうすればいいかだ。そしてそこへとのめり
込んでいる人たちに、それ以外の何を言って
も聞いてもらえないだろうし、そこから一歩
退いて、自分たちがやっている場の背景まで
視界に収めることなどできはしない。逆にそ
うすることに何のメリットがあるのだろうか。
勝利を目指して一点集中ではなく、多元的で
複合的な視点から何か考えるべきことがある
だろうか。それとは別の可能性を考えること
が結果的に何をもたらすのか。そこから一面
的な価値や利害を超えてやるべきことが果た
して見つかるだろうか。やはりそうは思わな
いし思えないのだろうが、それを意識できな
いにしても、何かそれとは違う方向や傾向で
異なることをやっている現状があるのだろう
か。人は自らが行なっていることを理解でき
ないのかもしれないし、考えていることさえ
も理解していないのかもしれず、そうである
限りにおいて行なっていて、理解できないこ
とを考えているのではないか。絶えずそこか
らずれているのであり、知らないうちにどこ
かへたどり着こうとしている。たどり着いた
先がどこかもわからないのに、実際にたどり
着いている場合がありそうだ。そこを目指し
ていたわけでもないのに、なぜかたどり着い
てしまうわけだ。たどり着いた後からなぜそ
こへたどり着いたのか、どうやってそこへた
どり着いたのか、それを思い返すことはでき
るだろうが、そこへと至る途中でそんなこと
を考えているわけではないし、考えることな
どできはしない。 

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。