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彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2017.4.5 「危機意識」

2017/04/06

簡単に言うならこの世界ではすべてのことが起こっていて、
そのすべての中には
テロや内戦も経済危機や自然災害も含まれるわけだが、
それらも含めてすべてのことが起こっているということは、
いつそれらの否定的な出来事に
巻き込まれてしまってもおかしくはないわけで、
少しでもそうなる可能性があることを考慮すれば、
いつでも危機感を抱くことも煽ることもできそうにも思われ、
このままでは戦争になるとか経済危機が起こるとか、
何かあればすぐにその手の言説が導き出されてしまうことに、
誰もが慣れきっていて、
もはやいくら危機感を煽られても
何も感じなくなっているのかも知れず、
メディア上でも世間でも、
その手の危機を煽る手法が実質的に無効化されていて、
しかも無効であるからこそ安心感も持たれているのかも知れず、
ああまたやっているぐらいに思われる内容の方が、
かえって言説の需要があるのだろうし、
中国の船が尖閣諸島に押し寄せたり、
北朝鮮がミサイルを発射すれば、
待ってましたとばかりに戦争への危機意識を煽って、
日本の防衛力を高めなければならないとか、
日米同盟のさらなる強化を図らなければならないとなるだろうし、
株価や為替相場が悪い方向に急激に変動すれば、
経済危機への懸念を表明して政府や日銀の迅速な対応を促したり、
国債の止めどない乱発については、
財政破綻の危険性を訴える側とそれは杞憂だと見る側とで、
意見の食い違いがあるようだが、
現状で何とかなっているのだから、
現状が維持される限りは杞憂だと見る側に分があるだろうか。
そんなふうにして現状を危機意識に絡めて解釈することが
日常茶飯事となっていると、
何か実際に本物の危機が起こった時に、
そらみたことかが言いたいがために、
年がら年中危機感を表明しているみたいで、
実際には本物の危機的な状況に
遭遇していない現実の中にいるわけだから、
当人が抱いているつもりの危機感そのものが、
すでにフィクション化しているのかも知れず、
客観的に見てもそれは、
危機感という幻想の中に意識がとどまっているに過ぎず、
逆説的にそれは平和ボケの兆候を示しているのではないか。

そしてそれが決して悪い傾向というわけではなく、
現状に対する適切な対応を表しているのかも知れず、
世の中が平和だからこそ危機感を煽っていられるのであり、
しかもその平和な状態というのが、
危機感を煽る側にとっては不快な現状なのであり、
一応は平和であってもそれは見せかけの平和であって、
その水面下では世の中の不条理や矛盾が渦巻いていて、
いつそれが何かのきっかけで浮上してくる可能性もあり、
現状はそんな危うい均衡の上で
かろうじて維持されているようにも思われるから、
結局は危機感を煽らざるをえないわけで、
例えば貿易の不均衡を理由にして
アメリカが日本に農業や医療などの分野で市場開放を求めてきたら、
そらみたことかとなるだろうし、
また今後予定される米中首脳会談で
友好ムードが強調されるようなことにでもなれば、
日本国内での中国脅威論に反発する人たちが、
やはりそらみたことかと言うだろうし、
さらにまた何かのきっかけで
南シナ海での米中の軍事的な緊張が高まれば、
今度は中国脅威論を唱える勢力が勢いづいて、
そらみたことかと言うようになるだろうし、
最近は核開発を阻止するためにアメリカが北朝鮮に対して
先制攻撃を仕掛けるのではないかと危機感を煽る向きもあるし、
そんなふうに危機感を煽る材料には事欠かないわけだが、
そもそもそれらの危機意識が有効に働くとは
どういうことなのだろうか。
彼らの予想や予感が的中して、
本当に危機的な状況となってしまったら、
では事前に行われた危機感の煽り立ては
有効に機能したことになるのだろうか。
普通に考えるなら事前に危機感を煽り立ててくれたおかげで、
その忠告を素直に受け入れて、
何らかの対処を行ったから、
危機を未然に防ぐことができたとなるのだろうが、
そうだとすれば危機を煽っているにもかかわらず、
未だに危機が訪れていない現状があるのなら、
もしかしたらすでにそれを未然に防いでいて、
危機感を煽ること自体が
危機の到来を未然に防いでいることになるのだろうか。
そんな逆説的で都合のいい話はないかも知れないが、
危機感を煽ることと危機が訪れないことが
セットとなっているとすれば、
本当の危機が訪れない限りは、
危機感を煽ることができるわけか。 

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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