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彼の声

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彼の声 2017.3.17 「イメージの共有」

2017/03/18

人が思うイメージは社会の共通了解へとつながっていて、
意識がイメージにとらわれている程度に応じて、
それ以上に想像力を働かせる度合いも限定され、
社会の共通了解としての世間一般に流布されているイメージに基づいて
物事を判断している限りは、
イメージを流布しているメディア的な幻想の中に
意識がとどまるより他はないだろうか。
例えば教育勅語に関しての肯定的なイメージは、
儒教的な道徳観を強調する面であり、
親孝行して兄弟仲良くして夫婦仲睦まじくして友情を大切にして、
勉学や仕事に励んで国の法律を守って
世の中の役に立つ立派な社会人になりなさい、
といったイメージを広めたい人たちが一方にはいて、
当然もう一方には否定的なイメージを広めたい人たちもいて、
これは皇室が先祖代々受け継いできた遺訓であり、
天皇の臣民としての守るべきことであり、
有事の際は臣民として奉公しなさい、
という時代錯誤的な面を強調して、
国民主権や民主主義を否定する危険な内容だと主張したいのだろうが、
そうだとしても内容のすべては建前論だし、
発布された当時の歴史的な時代状況を考慮すれば
妥当な内容なのだろうし、
それを現代の子供たちに教えようとすることが
時代錯誤なのは当然としても、
思想信条の自由は憲法で保障されているので、
皇国主義の人たちが広めようとしていることも、
脈絡としてはそういう成り行きにならざるを得ないのではないか。
それよりも肝心なのは、
内容が建前論でしかないことであり、
わかりきったことを守らせようとする姿勢であって、
実際に守ろうとしても守れない事情が出てくるわけで、
親子ゲンカも兄弟ゲンカも夫婦ゲンカも
友達同士の喧嘩も起こってしまうわけで、
勉学や仕事に励めない事情も、
国の法律を破らざるをえない事情も出てきてしまうわけだから、
子どもに向かっていくら守れと説いて回っても、
それは世間体を気にする大人のアリバイ工作でしかなく、
要するに学校の入学式や卒業式で訓示を垂れる校長用の
形式的な決まり文句と同レベルでしかないわけで、
1945年以前は実際そうであったかも知れないが、
それを今の時代にそっくりそのまま使うのは、
何か別の意図があると勘ぐられても仕方がないだろうが、
内容としてはやはり儀式用の決まり文句でしかないわけだ。

そういう社会的な建前としてのイメージの共有というのは、
内容ではなくそれ以上に想像力を働かせないようにするための
防波堤の役割をしていて、
それ以上は深く考えるなという共通了解を守らせるために、
有効に働く符牒のようなものであり、
実際は教育勅語に記されている文言など理解していなくても良く、
ただ黙って天皇陛下の有難いお言葉が記された額縁の書状に向かって
頭を深く下げていれば、
その場の儀式はつつがなく済んでしまうのだろうし、
それについてどうこう述べること自体が憚られることなのだろう。
またそんな大げさな論議を呼ぶイメージでなくても、
例えば金持ちのイメージとして世間的に共有されている記号を集めれば、
山の手の高級住宅街に住み、
高級ブランドの衣装や腕時計や宝飾類を身につけて高級車に乗り、
子供を幼稚舎から大学まで
エスカレーター式に進める学校で学ばせている、
とか容易にイメージできそうだが、
別に金持ちに個人的に縁がなければ、
それ以上は深く金持ちについて想像を巡らす必要はないわけで、
その代わりに抱くのが金持ちへの憧れや嫉妬であり、
自らも欲望の対象としての金持ちになりたくなるわけだが、
そういうイメージにとどまっている限りは、
なぜ世の中に貧富の格差が生じているのかとか、
人々の間で生じている経済格差をなくすにはどうしたらいいのかとか、
そういう方向には想像が働かなくなって、
ただアメリカンドリーム的な成功神話を夢見て、
格差社会を無自覚に肯定してしまうわけだが、
世間的に共有されているイメージは常に
世の中の現状を肯定する傾向があるのかも知れず、
金持ちやブルジョアに関しては世間的な成功者のイメージとなり、
逆に労働者のイメージは虐げられた者たちとなるだろうし、
それに対して会社員やサラリーマンとなると
肯定も否定もない中庸なイメージで、
ニートとなると責任逃れで蔑みのイメージとなるかも知れないが、
それらのイメージにはすべて個人的な事情が省かれていて、
それぞれの個人を取り巻く環境や
直面している事態にまで踏み込んでしまうと、
そんな肯定や否定のイメージで
レッテル貼りするだけでは済まなくなって、
世の中の矛盾や不条理が明らかとなってしまうから、
とてもじゃないが現状を
肯定するわけにはいかなくなってしまうのかも知れず、
そういう矛盾や不条理を見ないようにするために、
イメージのレベルで思考停止する必要があるのかも知れない。 

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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