文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2015.12.18 「誇大妄想狂」

2015/12/19

自らが体験しつつある現状について、
人は何を知ることができるだろうか。
思考からどんな認識が得られるにしても、
何か勘違いをしているような気になり、
それ以上いくら考えたところで
確かな実感がもたらされるわけでもなく、
こだわるべきはそんなことではないとしたら、
では真にこだわるべきことなんてこの世の中にあるのだろうか。
こだわるべき物事が何も見つからなければ、
物事について深く詳しく考えることでもたらされる幻想などに
こだわってはいけないのだろうし、
それ以前にそれを幻想とみなすのも間違っているのかもしれず、
少なくとも自らが体験しつつある現象を、
自らに都合の良い物語を当てはめることで、
現象そのものを単純化する思考動作があるのを認めなければならず、
それを自覚しないままそうしてしまっている現実を
受け入れることが肝心なのかもしれない。
今ここで何かを考えているとしても、
それをもとにして
自らの何か突拍子もない動作を期待しているわけではなく、
例えばこれから人類の滅亡に関する
大げさな予言をしようとしているのでもないだろうし、
また政府の憲法を無視した強権的な政治手法に恐れおののき、
このままでは戦争となって国が滅ぶと感じて、
国を支配する独裁政権に対抗すべく、
大規模な抵抗線線を組織しようと画策しているわけでもないのだから、
実際に考えていることもやっていることも、
それとは別次元の些細なことであり、
それらの誇大妄想的な虚構とは無関係な状況の中で
普通に暮らしているわけで、
そんな現状の中で生きていると思っているから、
自らが正気でいることに疑いの余地はないのかもしれず、
実際には狂気とはかけ離れた退屈な日常から
抜け出られない境遇にあるから、
その手の荒唐無稽なフィクションによって
気を紛らわすぐらいが関の山で、
空想の範囲内で誇大妄想と戯れるのも
仕方のないことかもしれない。
確かに語ろうとする対象を
安易な物語に当てはめて単純化してしまうと、
それによって話がわかりやすくなるのだが、
その反面わかりやすい物語が現実に体験している状況からずれて、
語っている対象と語っている内容が合わなくなっていることに、
それを語っているつもりの当人は気づいていないのではないか。
特定の人物や政治的な勢力が国を支配している設定の物語などは
その典型であり、
批判したい人物や勢力を
物語に登場する悪の支配者に当てはめて語る人たちは、
現状ではなく現状を単純化している物語に支配されているのであり、
さらにそれを政治宣伝として語っている場合は、
そう語ることでもたらされる物語的な効果を信じているのかもしれず、
国民を苦しめ圧政を敷く
独裁的な政治家による支配からの脱却を呼びかけているつもりの自らを、
その自覚がなくても悪の支配に抗う正義の戦士になぞらえているわけで、
そんな風にして批判の対象を
典型的な物語の登場人物のように語っている時点で、
それを批判している自らも
物語の登場人物になってしまっていることに
気づいていないのかもしれない。

人は自らが体験しつつある現状よりも、
それをもとにして語られるフィクションと
同調する傾向があるのかもしれず、
実感としてはなかなかそれに気づきにくいのであり、
気づかないうちに現実と虚構とが意識の中で入れ替わっていて、
現状について語っているつもりが、
メディアからもたらされる事実に基づいた情報を組み合わせて、
そこに自分の立場を加味したフィクションを構成しながら
語っている可能性があり、
そのような語りによって自らを取り巻く現実が
都合よく再編成されているのであり、
そのような作用によって
自らが感知しているつもりの世界像が
変容を被っていることに気づかず、
できればそこで世界を捉えているつもりの自らの認識に
疑念を抱くべきかもしれないのだが、
事態としてはなかなかそういう方向にはいかないようで、
多くの人たちは自らが構成しつつある物語世界に、
自意識過剰気味にのめり込んでしまう傾向にあるのかもしれず、
しかもメディアからもたらされる情報を
不特定多数の人たちが共有している現実があるのだから、
多くの人たちがそれぞれに思い描く物語世界が、
それについて語り合うことで共鳴現象を引き起こし、
その結果として多くの人たちが
同じような物語世界の住人となっている現状があるのかもしれない。
もちろんそのような悪と戦う戦士的な物語とは異なる物語も
いろいろあるのかもしれず、
国家的な破滅の兆候を感じ取りながら悲壮感を漂わせて、
例えば原発事故に伴う放射能汚染によって
これから人がバタバタ死んでゆくと予言している人たちもいるだろうし、
あるいは共産主義は大量虐殺をもたらすとして、
最近の選挙での共産党の躍進に警鐘を鳴らしている人もいるだろうし、
さらに民主党は外国人勢力と結託して日本を乗っ取ろうとしている、
とひたすらネットで危機感を煽っている人たちもいるだろうし、
そうかと思えば自民党こそが売国奴であり、
アメリカ政府のいいなりになって、
アメリカの巨大企業による搾取を許し、
日本の産業を壊滅に追い込んでいると訴えている人たちもいるわけで、
その人の政治的な主義主張に関係なく、
誰もが危機を煽らずにはいられない心の病に感染している様相を呈し、
何かしらこれから大げさなことが起こってほしくて、
それと自覚できないまま破滅の物語と戯れているわけだが、
それこそが退屈な日常から逃避して娯楽にうつつを抜かす、
という現代人特有の兆候を示しているわけで、
しかも現代の大衆メディア社会の中では、
そのような人たちはありふれた存在であるわけで、
別に自らが心の病だなんてこれっぽっちも感じていないだろうし、
精神科医も間違ってもそんな診断など下さないだろうから、
精神の病であるはずがないのだろうが、
兆候としての誇大妄想狂が比喩でしかないにしても、
人々が不安を掻き立てられる要因はいくらでもあるのかもしれず、
そこをメディアにつけこまれて、
誇張と歪曲によって煽られ、
商売の種にされている現状があるのかもしれない。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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