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彼の声

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彼の声 2015.8.20 「認識と語りと虚構」

2015/08/20

特定の人物の意志で国が動いているように思えることもあるだろうが、
実態はどうなのだろうか。
選挙などによって議員や大統領などが選ばれ、
それらの選ばれて国を代表する役職に就いた人が、
なんらかの意志を持っていて、
その意志を国政に反映させようとしていることは確かなのだが、
それが選挙で投票した国民の総意でもあるわけか。
少なくともその人に投票した人は、
その国政に反映させようとしている意志に賛意を示すだろうか。
各種メディアなどが実施している世論調査の結果でそれがわかるわけか。
それら全ては間接的なことなのではないか。
国に意志などあるわけがないことは分かりきっているが、
議会や裁判所や政府をはじめとする行政機構があって、
それらの機構の中で人がうごめいていて、
なんらかの意志決定がなされているわけだが、
その意志が組織全体の意志として捉えられる場合もあるのだろうか。
例えばイスラエル政府がガザ地区を空爆したり戦車で蹂躙した場合、
イスラエルの暴挙だとジャーナリストなどが非難するわけで、
やはりそれはイスラエルの
国家としての意志が発動したと捉えればいいわけか。
非難の論調としてはそうなるだろうし、
そう語ることしかできないだろう。
政府内でなんらかの意志決定がなされて、
そのような行為が行われるわけだから、
空爆や戦車による蹂躙によってガザ地区の住民が多数死傷して、
建物などが破壊されるわけだから、
イスラエルと敵対している国々の政府や、
世界各国のメディアの論調は、
イスラエルに対する非難の大合唱となるのだろうが、
同盟関係にあるアメリカ政府などは、
先に攻撃を仕掛けてきたのはガザ地区に拠点を置く武装組織だとして、
イスラエル政府のやり方を擁護してきた経緯があるわけだが、
最近はアメリカ政府内でも、
大統領の周辺はイスラエルの右翼政権に批判的な対応に変わってきて、
一方ネオコンの牙城である国防総省の周辺は、
未だにイスラエル政府と軍事的に密接な関係にあるような
報道のされ方もしてきて、
アメリカ政府内でも立場や役割によって、
若干の温度差があるように言われているわけだ。
例えばアフガン・イラク戦役の頃は、
アメリカは国家として一枚岩の意志を感じられたが、
どうも最近は大統領の周辺と議会と軍産複合体とで、
微妙に意志のズレがあるように感じられ、
必ずしも統一された国家意志があるとは言えない状況に
なっているのではないか。
国家意志というのは戦争などの危機的な状況にならないと、
はっきりと方向性を持った形では現れないのかもしれず、
報道のされ方やジャーナリストなどの論調では、
何か国家が特定の意志や意図を持っているように語られるわけだが、
そういう語られ方の中である種の単純化が生じているのであり、
それ自体が一種のフィクションのような物事の捉え方なのではないか。

そこから飛躍して何か欧米諸国が、
未だに昔の世界を植民地化していた頃の延長で、
経済の力で世界を支配しようとしている、
などと語り出す人も中にはいるのかもしれないが、
欧米諸国の全てを網羅するような意志を想定するとすれば、
それは民主的な政治体制や議会制への執着ぐらいなものなのではないか。
ウクライナとロシアとの問題で、
欧米対ロシアという対立の構図を描けないこともないのだろうが、
別に欧米諸国が一枚岩というわけではなく、
経済的な結びつきの程度に応じて、
各国によってロシアとの対立の度合いにも温度差はあるだろうし、
すぐにでも軍事的な緊張が高まるようなことはありえないようで、
それは中国と周辺諸国との関係も同じようなものなのではないか。
現代ではナチスドイツが周辺諸国へ向かって
一斉に軍事的な侵略を開始した時のような、
それほどあからさまな意思表示ができるような
世界情勢とはなっておらず、
何か特定の政治的な勢力が密かに世界を征服しようと画策するような、
そんな単純な政治的あるいは経済的な構造とは
なっていないのかもしれず、
様々な勢力が入り乱れていて、
その中で敵対と合従連合などの思惑が複雑に錯綜していて、
各勢力を敵と味方に
はっきりと分けられない状態となっているのではないか。
例を挙げればイスラム国とイスラエルと
サウジアラビアなどの湾岸産油国とアメリカのネオコンが
繋がっているとか言われるわけだが、
昔は共通の敵のシリアやイスラム教シーア派などを巡って、
協力関係にあったが、
イスラム国が勝手なことをやり始めたので、
途中から仲たがいし始めたとも言われていて、
それでもシリアやイスラム教シーア派勢力を抑え込むための
防波堤程度には活用しようとする思惑もあって、
加減しながら攻撃を加えていると言った現状なのかもしれず、
アメリカなどが本気になって
地上軍を投入しようとしないのが何よりの証拠で、
しかもアメリカの大統領周辺は、
イスラム教シーア派の総本山のイランとも関係を改善しようとしていて、
それに対してイスラエルやアメリカの議会やネオコン勢力が
反発を強めていたりして、
それも明確な敵味方の区別がつかない状況を
象徴する出来事なのではないか。
そういう意味であまり定まった国家意志や意向があるかのような
物事の単純化は、
かえって状況を見誤らせる原因ともなりかねないのであり、
特定の人物や政治勢力の意図や思惑を、
その通りには反映させられないような世の中となっているのだろう。
昔の戦時体制ような政治的な独裁や全体主義の復活を懸念する人々は、
戦争や暴力の恐怖や不快さを脅し文句のように使って、
政府の思惑通りに事が運べば、
すぐにでもそんな暗い時代が到来するかのように訴えかけるのだが、
何事もなってみないことにはわからない状況なのだろうし、
日本がすぐにでも北朝鮮のような社会になるとは
現時点では思えないだろうし、
自分や自分たちの政治勢力の都合を反映した語りが、
都合の分だけフィクションに近い内容となるのは仕方のないことだが、
そのような主義主張を聞く側も、
それらがある程度は現実や現状から飛躍した内容であることを
理解すべきなのかもしれない。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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