文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2015.5.8 「富裕層と貧困層の関係」

2015/05/09

希望を持っているわけではない。
世の中の状況がそれほどひどいとも思えない。
比較的ひどくない環境の中で暮らしていると思っているから、
そう感じるだけなのかもしれないが、
いつの時代でも恵まれた環境で暮らしている人には、
ひどい環境で暮らしている人の痛みなど共有できるわけもなく、
別にそれでかまわないわけで、
社会の属している階層や占めている立場によって、
思っていることや感じていることが異なるのは当然だろう。
有利な階層や立場にある人たちが、
自らの優位性をなげうって、
社会の構造を変えようとは思わないのではないか。
優位性はそのままにしておいて、
社会的な弱者を救済しようとするわけだ。
たぶんそれが正しいやり方なのだろう。
だが正しいやり方では、
社会的な弱者をなくすことはできない。
職業訓練や金銭的な援助などによって、
彼らの一部を救済することができるだけだ。
ではどうしたら社会的に不利にある人たちをなくすことができるのか。
たぶんなくすのは無理なのではないか。
無理なのに人はそれをやろうとするわけで、
なんとか万人が平等な環境で暮らしていけるようにしたいと思うから、
様々な試みが考案され、
その中の幾つかが実際に試されているわけだが、
うまくいったためしがあっただろうか。
部分的にはあったかもしれないが、
それが社会全体に波及したことはなさそうで、
世界の現状がそれを物語っているのではないか。
そしてそれでもかまわないのだろう。
これからも繰り返し試みられるから、
その恩恵を受ける人たちも少なからず出てくるだろうし、
それでかろうじてバランスが保たれ、
社会が崩壊するのを食い止めているのではないか。
富を独占している側の過剰な利益追求を、
富める人々による貧しい人々を救う行為が軽減しているわけだ。
それにどれほどの効果があるのかわからないが、
そのような慈善活動が絶え間なく続いている現状がある限りは、
その対象となる人々が確実に存在するわけだから、
それになんらかの効果があるとみなしておいた方がいいのかもしれず、
焼け石に水だなどと否定的にみなしてはまずいのだろう。

少なくとも慈善活動をしている富裕層などは、
社会が今より良くなる希望を捨てていないから、
慈善活動にも積極的に参加しているのではないか。
彼らの助けで少しでも多くの貧困層が
悲惨な環境から抜け出て欲しいと願っているのだろう。
自らが金持ちであることの疚しさや、
世間体を気にしてやっているわけではないと思われる。
無論現状では彼らが助けようとしている貧困層が
現実に存在しているわけだから、
彼らの活動によって全ての貧困層が恩恵を受けているわけではなく、
ほんの一部がわずかな施しを受けているにすぎないかもしれない。
そうだとしても
彼らの活動を否定するわけにはいかない理由はなんなのか。
やらないよりはやった方がマシだからか。
というか富める側がやらざるを得ない立場に立たされているわけで、
そうしないと自らの地位に見合った
社会的な名誉を得られないのではないか。
周りの多くの人々から尊敬されたい衝動が働いているわけだ。
多くの人々から支持されるためには、
多くの人々になんらかの利益を与えなければならず、
金銭の蓄えが多くあれば、
その金銭を分け与えることによって、
人々から尊敬され好印象を受けたいのだろう。
そうだとすれば金を分け与える人の存在が是非とも必要で、
また自分が貧者にただで金を与えられるほど
金持ちであり続けなければならず、
そのためには自分が
社会の中で成功者であり続けている状態を保ちたい。
そんなわけで富裕層が貧困層に施しを与える社会的なシステムが、
慈善活動として確立されているわけだ。
これをどう捉えたらいいのだろうか。
現状では富裕層も貧困層も社会の中で必要不可欠な存在なのだろうか。
少なくとも富裕層が多くの人たちから尊敬や名誉を受けるためには、
そこに貧困層がいて、
貧困層に定期的な施しを与え続けなければならず、
そのような行為が社会の安定に寄与しているとすれば、
予定調和的には社会にとっては
富裕層も貧困層も欠かせないことになりそうだが、
それは欺瞞だろうか。
たとえそれが欺瞞だとしても、
その欺瞞が今ある社会を成り立たせる上で必要不可欠なのかもしれず、
実際にそのような活動に熱心な富裕層は
地方自治体や国からその社会貢献を讃えられ、
感謝状や勲章などを受け取っているのではないか。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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