文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2015.2.16 「罠もないのに罠に陥る人々」

2015/02/16

相変わらずの陰謀論なのだろうか。
政治に対する不信感は根深い。
黒幕的な誰かが何かをやっていて、
そのやっていることによって世界が動いているのだとしたら、
この世界が人の思惑によって回っていることになるわけだ。
そんなことがあり得るだろうか。
誰がそんなことを唱えているわけではない。
物事の表層を捉えることに飽き足らず、
その深層を勝手に想像し、
そこに何やら真実が隠されていると思い込むわけだ。
たぶんそこに何があるわけでもないのだろう。
そう勝手に想像しておても構わないだろう。
表層を分析するだけにとどめておいたほうが無難だ。
これはゲームでしかなく、
ゲームがすべてなのだから、
勝手深読みして話をおもしろく想像して、
わけ知り顔の妄想に行き着いてみても構わないのだろうが、
そんなことをするだけの必要を感じないのかもしれず、
そうやって自分だけが知っていると主張するのは、
詐欺師的な売り文句でしかないのではないか。
別にメディア的に言葉を売る商売をしているわけではないのだから、
わざわざそんなふうにもったいぶったことはせずに、
ありふれたことを語ればいいわけだ。
誰もが理解できることをわかりやすく語ればいい。
そしてそういう建前の中に何を忍ばせることもなく、
事の真相とは無縁のつまらない事実について語ればいい。
たぶんそのつまらない範囲内に、
人が気づいていながらあえて語るまでもない内容が、
むき出しのまま放置されているはずだ。
その放置されている事柄について語ればいいわけだ。
自分だけが知っているつもりの秘密などではなく、
誰もが知っていて、
知っているがゆえに無視されていることを語ろうとしている。

しかしそれで何がわかるのか。
わかっていることを語ることで新たに何がわかるわけでもない。
そのわかっていることを確認する意味で、
それを語っているわけなのだろうか。
では具体的に何がわかっているのか。
誰かが何かを働きかけていて、
その働きかけによって、
物事が動いているということか。
たぶんそれが当たり前のことなのだろう。
それは自分でも意識せずに働きかけていることかもしれず、
自分で自分のやっていることに気づいていないのかもしれない。
罠を仕掛けているわけではない。
気づけないようなことは何もなく、
誰もがそれとわかるようなことを述べているはずだが、
別にそこに落とし穴があるわけでもないのに、
それを語ることによって、
言葉の上では働きかけになっているのかもしれない。
それはごく当たり前の自然な働きかけであり、
それによって誰かを出し抜くつもりもなく、
ただ自然に当たり前のように、
ありふれた言葉を作用させようとしているわけだ。
それでかまわないはずだが、
ほかの人たちは納得がいかないのかもしれず、
何かそこに隠された秘密があって、
その秘密を握っている誰かが、
その場の状況を自らに有利に運ぼうとしている、
と勘ぐることで安心しようとしているわけだ。
何もないわけがないわけがないだろうと思わずにはいられない。
そんな思いが人の弱さを証しているのかもしれないが、
その弱さに頼ってさらに重大な事の真相などを探ろうとすれば、
そこから先はフィクションの世界となってしまい、
あとは誇大妄想狂への道が待っているのかもしれないが、
やはりそう考えてしまうことが、
人の動作としてなんらかの魅力を伴っていることは否定し難く、
誰にとってもそれが罠となっていて、
それに抗し難く、
そこへと陥ってしまう人が後を立たないわけだ。

そこにそうならなければいけない、
あるいはそうなるはずだという、
合理的な理由付けが求められているわけだ。
人は意識で捉えた現状がなぜそうなるのかを知りたい。
そこに何かそうなるについての秘密が隠されていると思いたい。
その現象そのものから外れて、
現象が起こる理由や根拠へと向かい、
なにやらそこから自らを納得させる言説を導き出そうとしている。
誰かが裏で何かを画策していて、
その画策によって人を驚かす事件が発生したことにしたい。
実際にそうなのではないか。
例えばテロ攻撃とはそういうものだろう。
だがそうだとしても、
それで何がわかるのだろうか。
素人探偵気取りで事の真相を探って行くと、
そこに複数の国家や政府や企業や闇の組織を巻き込んだ、
隠された巨大な陰謀が明らかとなるわけか。
昔落合信彦というその手の小説を書く作家がいたが、
彼の書いた小説を真に受けた人々がその後どうなったか、
今となってはそんなことはどうでもいいことだろうか。
今もネット上で
そんなことをまことしやかに語る人が大勢いるわけで、
何やら武装テロ組織を陰で糸を引いているのが、
どこかの国の政府だったり、
その国が資金提供していたりして、
それらの紛争や戦闘から利益を得ていたりするわけだ。
だがそういうことを信じて、
そういう認識に心を支配されていてかまわないのだろうか。
例えばそれと、
選挙制度に基づいて議員が選出されて、
国会で議員や政党が活動していること、
あるいは内閣が組閣されて何か行政的な仕事をやっているとと、
それらの陰謀の類いがどう結びつくのだろうか。
それが政治の表の顔で、
各国の政府にはそれとは別に裏の顔があり、
そこで組織されているスパイなどが、
国際的に暗躍しながら、
世界を動かしているとなるのだろうか。
それがその手の人たちが知りたい秘密というわけか。
だがそんな政治のカラクリを理解して、
そこから何をどうしたいのだろうか。
隠された秘密を暴いて、
それをネット上で語り、
そんなことが語れることを自慢したいのだろうか。
たぶん娯楽とはそういうことなのではないか。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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