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彼の声 2015.2.13 「ピケティ『21世紀の資本』を読んでわかったこと」

2015/02/13

 昨年末から一カ月ぐらいかけて話題の『21世紀の資本』(トマ・ピケティ著
みすず書房)を読んだので、読んでわかったことをいくつか指摘してみようと
思う。自分なりに理解したことなので、客観的に正しいかどうかはわからない。

 r>g

 r:資本の年間収益率、利潤、配当、利子、賃料など資本からの収入を資本の
総価値で割ったもの。
 g:経済成長率、所得や産出の年間増加率。

 資本の収益率が経済の成長率を大幅に上回ると、相続財産は産出や所得よりも
急速に増えるので、資産を持っている人といない人との間での所得格差が増大する。

 ピケティは現代の民主社会は、勉学に励み努力した人が報われる、という能力
主義的な価値観や社会正義の原理で成り立っていて、働かずに食っていける資産
家の存在が社会正義の原理に反していると考える。

 ピケティは資本主義市場経済が完全になればなるほど、rがgを上回る可能性が
高まると考えている。

 ピケティは所得格差の増大に対抗できるような制度や政策の一つとして、資本
に対する世界的な累進課税制度を提案するが、その確立には高度な国際協調を
必要とするので、各国のナショナリズム的な反応もあり、実現は難しいと考えて
いる。

 人口は増加するとそれだけ相続財産が分散するので、格差の低下につながりや
すい。人口が横ばいかまたは減ると、先代が蓄積した資本の影響は高まる。

 経済の停滞または低成長だと、資本収益率は成長率よに大幅に高くなる。

 21世紀は世界的に人口の増加が止まり、経済の停滞または低成長時代となる
可能性が高いから、r>gの効果により、放っておけば格差が増大する。

 20世紀の経済成長神話の原因は、二度の世界大戦と1930年代の世界恐慌
によって、資本が打撃を受けたからで、そこで経済がリセットされたので、その
後の急激な経済成長につながった。

 各国政府の公的債務は大戦後のハイパーインフレによって帳消しになった経緯
がある。

 結局r>gの不等式は、20世紀中期の二度の世界大戦とその間に起こった世界
恐慌の時期を除いては、恒常的に成り立っている。

 所得格差を緩和するように見られた中流層が出現したのは、高度経済成長の
一時期に限られる。

 20世紀の一時期に格差を大幅に縮小させたのは、調和のとれた民主的合理性
でも経済的合理性でもなく、戦争の混沌とそれに伴う経済的、政治的ショック
だった。

 所得に対する累進課税だけでは、抜け道が多く、また企業経営者の方が労働者
より賃金や報酬の額に関して高い交渉力を持つから、それだけ取り分が多くな
り、格差拡大の歯止めにはならない。

 資本収益率が成長率より高いのは、論理的必然ではなく歴史的事実。

 資本からの収益が資産の貯蓄を生じさせ、貯蓄が莫大な相続財産となり、相続
財産が不労所得生活者層を生み、結果的に個人の能力主義を基本とする民主主義
社会を蝕む。

 質の高い教育を受けて高学歴になれるのは、資産家の子息の割合が高く、それ
が教育の機会均等を歪めていて、能力主義自体が資産の多少からの影響を被って
いる。

 世界的な資本税を実現するには金融の透明性を確保しなければならない。銀行
データの自動共有などによって、あらゆる市民の純資産を把握する必要がある。

 資本税の狙いは、貯蓄するばかりで、富を非効率に使っている人々に資産を売
却させて税金を払わせ、そうした資産がもっとダイナミックな投資家たちの手に
入るようにすることにある。

 資本税以外のやり方だと、保護主義と政府による資本統制があるが、それらは
自国だけの繁栄を目的とし、グローバル経済にはマイナスの効果をもたらす。

 移民の流入は諸国家間の富の格差を縮めることはできるが、それだけでは国内
で防御的なナショナリズムや民族間対立をもたらす。

 公的債務を減らすのにも累進資本税は役立つ。所得にではなく貯蓄に税を課す
ことで、低所得者層の抵抗を回避できる。

 緊縮財政よりはインフレへの誘導の方が、債務削減や富の再配分には有効だ
が、インフレは制御が難しく、いったん始まったら、インフレ・スパイラルを
止めるのは困難である。

 経済の透明性と民主主義による資本主義へのコントロールが21世紀の世界的
な課題である。

 資本主義の中心的な矛盾はr>gにあり、正しい解決策は資本に対する年次累進
課税だ。これにより、果てしない不平等のスパイラルを避けつつ、一次蓄積の新
しい機会を作る競争とインセンティブは保たれる。これを実現させるには、高度
な国際協力と地域的な政治統合を必要とする。

 ピケティの主張を理解した範囲でまとめると以上のようになる。主な先進各国
のデータを詳細に分析した結果だから、r>gの不等式は歴史的な事実なのではな
いか。それが資産を持つ者と持たぬ者の格差を生み、放っておけばますます格差
が増大してしまうのも、歴史的な事実なのだろうし、民主的な政治制度のもとで
格差を抑制するには、所得に対する課税とともに資産に対する課税も同時に行
い、両方の課税配分を適切にすることで、資本主義市場経済をコントロールでき
るというわけだ。だが一方でそれを実現するには、個人や企業がどれほどの資産
を持っているか正確に把握しなければ課税できず、そのためには金融の透明性を
確保しなければならず、また各国の銀行データの国際的なの共有とか、高度な国
際協力と広範囲な政治統合が必要であり、それが今後の課題となっていて、世界
各国が互いに経済競争している現状では、今のところ実現は難しいのではないか。 

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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