文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2013.5.1

2013/05/07

取り立てて何を見ているのでもないが、
どこかでそれらの光景を眺めているのかもしれない。
夜になっても空は晴れている。
工場の跡地が広い。
コーヒーは冷たい方がうまいか。
缶コーヒーには違いない。
ありふれた光景を眺めていたはずだ。
ゴルフ練習場か。
高圧鉄塔もある。
確かにありふれた光景だ。
でも美的感覚とは無縁か。
何を求めているのでもないのだから、
美しいとかそういうのは関係ないはずだ。
何もかもがありふれているわけでもないのだろうが、
別に珍しい光景に巡り会いたいわけでもないか。
観光気分に浸る気にはなれない。
でも眺めているはずだ。
雲に覆われた山を眺め、
何も思わないのに、
目に映る光景を記憶にとどめようとしている。
そんなはずがないだろうか。
何が見納めでもない。
しばらく別のことを考えていたらしい。
気を取り直して言葉を記すとしようか。
それで何がもたらされるというのか。
満ち足りているわけでも、
欲望の虜となっているわけでもないだろう。
何がほしいわけでもないか。
どんなお宝を手中に収めたわけでもない。
苦労していないということか。
まだ風が強い。
別にそれで困っているわけでもない。
世の中には困っている人はいくらでもいて、
困っていない人もいくらでもいるだろう。
それで何か不都合なのか。
相変わらず君は鈍感のようだ。

何かからだいぶ遠ざかっている。
距離的にそうなのか。
まもなく電車がどこかに着くらしいが、
やはり君には無関係だろうか。
赤錆びたレールの上で、
誰かがそう思っている。
それは違うか。
次があるわけではなく、
それが何の次かなんてどうでもよく、
ただどこかへ向かっている。
言葉の連なりが物語から遠く離れ、
虚無的な何かを指し示しているわけでもないだろうが、
簡単にそこから外れてしまうわけか。
そういうわけではない。
執拗にこだわっているから、
記述をやめようとしないわけだ。
それも違うか。
何が違うわけでもないのだろうが、
わけもなくそんなことを思い、
本当のわけを記しそこなっているのかもしれない。
そんなわけでもないか。
そこに何かの法則でも介在しているのだろうか。
でも自然の成り行きのように思われ、
要するに自然の法則にとらわれているのだろうか。
法則とは人が見出すもので、
自然に内在しているわけではなく、
人の意識の中でそういう認識として結実するだけか。
それは何かの方便か。
意味が違うのではないか。
意味とは何か。
君は意味の意味を知りたいのか。
たぶん意味の意味は意味に違いない。
それは涙を流しながらタマネギの皮をむき続けるようなものか。
たとえになっていないような気がするが、
それでかまわないような気もする。
要するに何でもないことか。
それは違う。

別に虚をつかれているわけではない。
暗闇の中を人が通り過ぎる。
通りには街灯がまばらか。
自転車も通り過ぎ、
何を想像しているわけでもないのに、
頭蓋骨の形状を思い描く。
海賊の旗か何かか。
そんなことを思い出すまでもない。
君には物語など不要か。
なぜそれを物語らなければならないのか。
歴史の中で埋もれた真実でも探し出すつもりなのか。
でもそこで誰がどうしたわけでもなく、
いろいろな人が生まれて死んでゆく。
それだけのことなのだろうが、
その中で興味深いエピソードでも探し出して、
それを誰かが物語りたいらしい。
時には事実を歪曲させてでも語りたいわけか。
ひいきの主人公を物語の中で輝かせたいのか。
でもそれではフィクションとなってしまうではないか。
それが狙いか。
国民栄誉賞のパフォーマンスも、
演技のたぐいには違いない。
涙ぐましい努力の賜物が、
あんなふうに結実するわけだ。
みんな喜んでいる。
優等生のような物言いに感動している。
ああいう儀式に酔いしれている。
晴れの舞台で演じられる感動の儀式だ。
あれが君とは無関係だとすると、
君は他の何に感動すればいいのだろう。
感動しなくてもかまわないのか。
あれらのスポーツ的なものが凝縮した瞬間から、
君の意識がどんどん遠ざかり、
普通の何気ない何かを意識し始め、
それに感動するわけでもなく、
やり過ごすわけでもなく、
ただ体験するばかりか。
それでかまわないのだろうか。
君がそう思うならそういうことだ。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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