文学

彼の声

この世界について、この社会について、この時代について、未来について、過去について、人々について、自分が日頃感じていることを率直に語る。

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彼の声 2013.4.13

2013/04/21

何が見えているのだろうか。
用を成さない。
君はそれらを見る。
風景を眺める。
何かを空想しているようだ。
雨がやんで寒くなる。
もう夜だ。
すでに何も見えない。
暗闇だから見えない。
画面を眺めているらしい。
雪が降っている地方もあるらしい。
惹き付ける対象を知らない。
まだ何も見えてこないようだ。
何を見ているわけでもない。
まだ見ているのだろうか。
夢でも見ているのか。
つまらない物を見ている。
時が経っているのだろう。
歳月を経るとすり減ってしまうらしい。
でもそこで何が積み重なっているのだろうか。
神経をすり減らしているようには見えない。
台詞の棒読み状態か。
そんなふうに見えている。
でもわからないか。
要するに見ることができない。

まだ夜だ。
たぶん何を語っているのでもない。
それでも何を語ろうとしているのか。
君がそれを知っているわけではない。
わからないのだろうか。
たぶんそうだ。
それについてどう語ればいいのか。
語れないのだから、
それが実感であり、
現実なのではないか。
だからどうしろというのか。
どうにもならない。
別に恐ろしいことではない。
気分が最悪なのでもなく、
ただ語れないだけか。
簡単に語るわけにはいかないのだろうか。
どうしても語れないようだ。
なぜなのか。
面倒くさいからか。
それではいつものパターンではないのか。
また気持ちが逸れていってしまうようだ。

何が気に入らないわけでもなく、
どういうわけか知らないが、
何も記せない。
記しているではないか。
確かにそうだ。
空疎な内容を記している。
何について語っているわけでもないのに、
それはないだろうか。
なくはないのではないか。
実際にこうなっている。
途中で映像を見続けられなくなり、
ここに至っている。
なぜなのか。
何か恐ろしいものでも見たような感じなのだろうか。
何の変哲もない白黒映画のたぐいだ。
だがすぐにそれが違うことに気づく。
台詞を棒読みしているように思われるが、
語り方が尋常ではない。
切羽詰まっているというか、
ただならぬ緊張感に満ちている。
どうも何かが変化しているような気がする。
映画的な何かを削ぎ落としているわけではない。

『タイタニック』という
世界的に大ヒットした映画を見たことがあるだろうか。
SFXを駆使していたり、
ラブロマンスあり、
スペクタクルあり、
波瀾万丈の物語ありで、
まさにこれでもかのてんこもり状態で、
人々の関心を惹き付けていた映画だ。
でも君はそれを始めから終わりまで通してみたことはないだろう。
テレビでやっていたのを数回細切れでちらっと見ただけだ。
興味がないのだろうか。
たぶん情報のたぐいとして知っているに過ぎず、
それ以上に見たいとは思わなかったはずだ。
ただハリウッド映画の紋切り型が凝縮されているだけの代物だからか。
それはどうなのか。
同じように船の中が舞台となっているのに、
途中で見るのをやめてしまった白黒映画は、
たぶんそれらの紋切り型がいっさいないのではないか。
要するにその手の映画らしい約束事が何もないから、
途中で恐ろしくなって見続けるのが困難となってしまったわけか。
原作がカフカなのはわかる。
切羽詰まった会話がカフカの小説そのものか。
でもカフカの小説などまともに読んだことがないような気がするが、
たぶん短編を二三読んだに過ぎず、
君が読んで恐怖したのは、
カフカの影響受けたブランショの小説だったのではないか。

でも何かの本質を捉えているとはこのことだと思われる。
何もないのにすごい。
これはどういうことなのか。
見ている者が打ちのめされてしまう。
何もないのになぜだろう。
たぶんそこに映像があるからだ。
そしてむき出しの台詞があり、
君の精神に突き刺さってくる。
見ていて居心地が悪くなってきて、
見ていられなくなり、
途中で見るのをやめてしまう。
たぶんヒーローや超人が登場して、
敵と大げさで壮大なバトルを繰り広げているような映画なら、
安心して最後まで見ていられるのだろうが、
やはりそれが子供騙しでしかないことに気づかされるような、
本当に何もないのに、
映像と台詞ですべてを満たしたような白黒映画だ。
そんな代物を見せつけられて、
ただ恐ろしいと思う。

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創刊日:2001-03-26  
最終発行日:  
発行周期:不定期  
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