日記・blog

マキブリ

マキブリ(MAKIGAMI BRICOLAGE の略)は、ヒカシューの巻上公一によるメールマガジンです。豊富な音楽経験による不思議声帯的エッセイ、イベント、CD、口琴、ホーメイ情報を満載。

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maki-bri  マキブリ第 4

2000/04/14

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       マキブリMAKIGAMI BRICOLAGE 
       第4号        2000年4月13日
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------------------------目次------------------------------
口上
音楽NY通信■加藤英樹 <ポルトガル通信〜リスボン即興音楽祭2000>
声帯エッセイ 「口腔のマジック恐るべし」
巻上公一最新スケジュール
------------------------口上------------------------------
ぼくは今、
『エジプトロジー〜わたしの頭は大トンカチだった』のリハで連日大忙し。
皆さん、絶対に観に来て下さいね。
演劇というのは何回もやりませんから、ここで見逃すともう見ることは
まずできません。
いま、稽古中で、相当面白くなりそうです。
ご予約はお早めに。
http://www.st.rim.or.jp/~makigami/rf.html

ニューヨークの加藤さんからなぜかポルトガル音楽事情が届きました。
行ってみたい国ですね。
ニューヨークにも行きたいですけどね。

巻上公一

----------------■■音楽NY通信■■加藤英樹■■---------------

<ポルトガル通信〜リスボン即興音楽祭2000>

ポルトガルのギタリスト、ヌノ・レベロとの出会いは、奇遇。
僕のソロCD "Turbulent Zone"がリスボンのレコード店内で流れていた時に、
偶然そこに居合わせたヌノが僕の音楽を非常に気に入ってくれたことから、
昨年の夏、初めてポルトガルに招待された。
もし、彼がその瞬間に、その場所にいなければ、
我々が出会うことはなかったのだ。
リスボンでの演奏は今回で既に3度目。

コンサートの合間にパイラ・グランデというビーチに連れていってもらう。
海岸に残っている太古の恐竜の足跡を見学しながら、
ヌノからポルトガルの歴史や彼の音楽についての話を聞く。

ポルトガルは50年間のファシズム政権の後、1974年に革命を迎える。
その年、ヌノは13歳。
20代にロックバンドでの成功をおさめた後、即興演奏の世界に入る。
ヌノと僕とは年齢的には同世代だが、「ポストモダンな一匹狼」の僕とは違い、
彼はポルトガルの「ポスト革命世代」としての使命感をもっている。
リスボン音楽シーンの旧世代と新世代をつなぐ役割を果たしながら、
ポルトガル国内と国外のミュージシャンとの交流のためにも尽力している。
こうしたオーガナイズをする一方で、
「Mutant Portuguese Guitar!!!」というグループを率いている。
ポーチギーズ・ギターはファドに使われる複弦の民族楽器で、
アラブ文化の影響を感じさせる「涼しい」響きが美しい。
この弦楽器を打楽器的に使いつつ、伝統的要素も取り入れた音楽は実に斬新。

その晩、ヌノとマルコ・フランコと僕のトリオはリスボン即興音楽祭に出演。
マルコはドラマーで、サックスも演奏する非常に才能のある若手。
演奏終了後、名産のワイン、ヴィノ・ヴェルデ(ヴェルデとは緑の意)で乾杯。
若い葡萄を使って醸造されるこの酒は風味豊かだが、ドライで切れがいい。
ポルトガル文化には「柔らかさ」と「鋭さ」が共存していることを感じた。

加藤英樹


-----------------------声帯エッセイ-------------------------

「口腔のマジック恐るべし」

ホムス・トゥオヤル -ホムスは歌う- の公演がはじまった。

ホムスとは、サハ語で口琴のこと。
口琴とは口にくわえて、弁をびょ〜んと弾く小さな楽器のことだ。東シベ
リアに位置するロシア連邦サハ共和国。そこは、世界で最も口琴が尊ばれ、
国民に親しまれている所だ。今回サハから、イヴァン・アレクセイエフと
スピリドン・ シシーギンそしてフェドーラ・ゴーゴレヴァという口琴名人
中の名人、そしてふたりの美人口琴奏者にして伝統歌手が集合した。

イヴァンとスピリドンは、昨年ぼくは会うことが幾度かあった。
ベルリンの「ズンゲンシュラング・フェスティバル」では、
同じ日の同じステージで演奏したし、その秋には 北海道の道東をアイヌの
ムックリ演奏家の磯嶋さんと一緒にツアーしたことがある。ツ アーの最後
には阿寒湖のまりも祭りの全国アイヌ大会でも演奏をした。

彼らは真剣に口琴の魅力を世界に伝えようとしている人々だ。その演奏は、
一度聴い たら虜になるだろう。イヴァンの淡々とした中に深い哲学を感じ
させる演奏、スピリドンの精神が自由に空に舞っているかのような演奏は、
口琴がちょっと鳴るくらいで 演奏がうまいと勘違いしている人には驚嘆す
べきものだろう。

今日、
そのホムス・トゥオヤル日本公演、東京六本木国際文化会館のレクチャー
コンサー トに行ってきた。
司会は、尺八奏者としても有名な国際文化会館のクリストファー氏が行っ
た。レクチャーはサハのスライドから始まった。彼らを招聘した日本口琴
協会の直川礼緒氏による解説でサハという知られざる国の紹介だ。世界で
最も夏と冬の温度差がある国とのこと。それも100度の差があるそうだ。
その差をスライドから感じることはむずかしいが、写真で見る限りひじょ
うに美しい所だ。

一番手は、
アリビナ・ジェグチャリョーヴァとオリガ・ポドルージナヤの口琴と伝統
歌唱トユク。美しい師弟コンビによる「白い鶴」と「白夜」という歌であ
る。このコンビはサハの口琴だけでなく声のテクニックの数々を披露する
とのことで、超歌唱研究上大いに期待していた。

クルィハハ:裏声の技法
ハブィルガ・ウィルィア:「喉の歌」の意、喉を一瞬閉じる特殊技法
タガライ・ウィルィアタ:息を吸い込みながら舌の表面を口蓋につけて音を
            出す唱法
動物の鳴き声の模倣:馬のいななき、鶴の鳴き交わし、カッコウ、など。

サハにはこれらの声のテクニックがあると口琴協会のホームページに書い
てあったもののやはりこれは聴かなければ、よくわからないものだった。
彼らのCDも来日に合わせて発売されたが、見ると聴くとでは、その不思
議さは大違い。これは聴くだけでなく見なくてはならない。

「白い鶴」では、アリビナとオリガの口琴から、オリガのクルィハハによ
る歌、そしてタガライ・ウィルィアタを駆使したデュエット、続いて鶴の
鳴き交わしを聴くことができた。口というのは本当に面白いことができる
器官である。特にタガライ・ウィルィアタ は、吸い込んだ息の音を舌で止
めるという操作で、予想以上の不思議な音の効果を作りだす。
クルィハハは、モンゴルのオルティン・ドーのこぶしやアルプスのヨーデル
の裏声を想起させた。だが、ひじょうに細かく周期的に裏声に変化させる。
「白夜」では、口を閉じて裏声を鼻から出すというテクニックが使われてい
た。しかも、これらのテクニックはこれみよがしなものでなく、普通の歌の
中に自然に組み込まれていて、まるで何気ないもののように歌われる。

続いて、イヴァンの「九柱の神のトユク」という口琴演奏。サハでは世界
は、三つに 別れているという話。
上の世界、中の世界、下の世界というのがある。
そしてそれぞれの世界は9つに別れているという。
これは上の世界の9つの神が人間を見ているという曲だとのこと。
そして、スピリドンの「組曲ツンドラ」からの抜粋で「トナカイ牧民の歌」
が演奏された。
いつもながら会場の空気がぶるぶると振動し歌いだすかのような演奏だ。

さて、皆さんは、日本の本州にも鉄製の口琴があったことをご存知だろう
か。実は、千年前の口琴が大宮の氷川神社跡から発見されているのだ。実
物は大宮の教育委員会の方で現在保存しているのだが、もう千年も前のも
のだ、発見された時、全体は錆で蔽われ、弁の先も折れてしまっていた。
だいたいそれが口琴であるとわかるまでだいぶかかったようだ。それをつ
い最近、3年前から口琴製作を開始した日本の鍛冶師、 目次伯允氏が復元
した。会場に大宮の教育委員会の方と目次氏が来ていて、その復元モデル
を公開してくれた。その復元モデルを演奏用にしたものを、今日イヴァン
が演奏した。イヴァンは、われわれを千年前の日本に誘うかのような演奏
をした。これは素晴らしいエポックだった。

次はスイスの口琴名人アントン・ブリューヒンの主演のドキュメンタリー
映画「トルンピ、ホムス、口琴」にも出ているフェドーラ・ゴーゴレヴァ
の演奏。
曲は「父のアラースにて」。
彼女のお父さんはサハでも名うての口琴製作者だった。
アラースとは家族が住んでいるテリトリーのことだそうだ。
彼女の演奏は凄い迫力だった。
なにしろ国際口琴大会に9人の名人に選ばれたひとりである。
口琴を逆さにくわえ弁を舌で弾き、カッコウという鳥の声からはじまり、
超絶技法の嵐に次ぐ嵐。観客の口はあきっぱなし。
大きな拍手で一部が終わった。

レクチャー終了後、ちょっとしたすきを見計らって、
フェドーラさんに舌で吸う息を止める手法タガライ・ウィルィアタを教わっ
た。
帰りの道すがら、ぼくは歩きながら、サハの裏声の技法や、舌で吸う息を止
める手法を練習していた。
世界にはまだまだ知られざる声があるようだ。
サハはさすが口琴の国、口腔のマジック恐るべしである。

4月12日 国際文化会館講堂

巻上公一

公演情報はこちらにあります。お見逃しなく。
 http://www.ne.jp/asahi/nihon-koukin/kyoukai/sakhaF.html

---------------------スケジュール---------------------------
●4月25-30日 阿佐ケ谷ザムザ
 演劇公演『エジプトロジー〜わたしの頭は大トンカチだった」
 リチャード・フォアマン作 巻上公一 演出
 http://www.st.rim.or.jp/~makigami/rf.html
 きみの頭がとんかちか測るチャンス到来! ご予約をお薦めします。
 一日限定120席

●5月6日(土)午後6時30分開演 秋葉原 CLUB GOODMAN
 スカイフィッシャーVSヒカシュー
 他にHiwatt Electric、千葉レーダー
 前売り 2300円  当日2600円
 *ヒカシューの出演は7時頃から1時間です。 
 テクノポップ新世代の競演に出演。

●5月27日(土)午後7時30分開演 渋谷ラママ 03-3464-0801
 WOLRD HIKASU MODE 21 
   出演 ヒカシュー

●6月8日、9日 北沢タウンホール
 天鼓が企画するヴォイス企画 詳細は追って 

●6月13日(火) tribute to the love generation
   (お台場メディアージュ6F) 03-5531-2024
 声帯実験スペシャル 巻上公一ほか
 二部制入れ替え 7時、9時30分
 お台場に今度オープンするライブレストランでの初のヴォイス炸裂

●6月18日(日) 午後6時開演
 自由ケ丘ラリュー 03-3717-8363
   「音のうたかた」シリーズ
 豊住芳三郎(drums)、巻上公一duo

●7月1日、2日
 「モダン・ヴォーカルを創る」ワークショプ 
 講師 巻上公一
 問合せ・申込み ミューズ・カンパニー 03-3479-8535

▼渋谷パルコ毎日新聞カルチャースクールのボイスパフォーマンス講座は、
 5月12日からです。03-3477-8969

▼あなたもあなたのそばで超歌唱声帯コンサートを企画しませんか?
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登録・解除は、
http://www.st.rim.or.jp/~makigami/index.html#magから
登録・解除 バックナンバーはこちらで読めます。
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創刊号のみこちらです。
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不定期刊行
編集・発行人 巻上公一
http://www.st.rim.or.jp/~makigami/
makigami@st.rim.or.jp
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