音楽

歌お!かねひろマガジン

みんなのうた「象だゾウ」の作者、かねこひろゆきの音楽エッセイ。

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歌お!かねひろマガジン169[コンペティションストーリー2]

2005/11/30

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歌お!かねひろマガジン169[コンペティションストーリー2]

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ご無沙汰しております!お元気ですか?
東京地方はここしばらく晴天が続いております。

前回からずいぶん時間が空いてしまったような気がしますが、
読者の側からすると、そうでもないのかも知れません。

さて、そんなこんなで今回もかねマガをよろしく。

◆コンペティションストーリー2

前回のあらすじ

三流作曲家Kは某コンペ突破を目指し、旧友Fに歌入れを依頼。
しかし結果は敗北に終る。
落胆するKに新たなコンペ情報を告げるディレクター氏。
Kの新たな挑戦が始まった!行け!作曲家K!
未来をその手でつかむのだ!

新たなコンペ!
それは新人ロックバンド用の曲だった。
「ロック、ロック、ロック」Kは繰り返し呪文のようにつぶやいた。
そうすることによって脳内にロックのイメージを呼び覚ますのである。

ギュイーン!
ギターの音が聞えた。
ずどどどどっ!ツインバスドラの重低音が響く。
そこにタイトなベースがからむ。
そして…ハイトーンのヴォーカルだ。
オルガンも鳴る。
女性コーラスも加わって来る。

Kの頭の中は今やコンサートホールと化していた。
来た来た来た〜〜〜〜!
イエーーーーイッ!(と頭の中で叫んでいる)

カッと目を見開いたKは五線紙に猛烈な勢いでおたまじゃくしを
書き付けていった。

「できたっ!」
作曲を開始してからきっかり30分後の事であった。

すぐさまパソコンを起動。
打ち込みソフトを使ってアレンジ作業を開始!

「できた〜〜〜〜〜」
アレンジを開始してから6時間が経過していた。
時計を見ると、午前7時であった。
Kは徹夜をしたのだが、他の仕事が全くない彼にとって時間や
日付など、何の意味もないのであった。

しかし曜日だけは依然として意味を持っていた。
「お!今日は木曜日か!燃えないゴミを出さねば」

ゴミ出しを終えた彼はパソコンをチェックした。
コンペ情報を流してくれたディレクター氏からメールが届いていた。

「前回のデモのヴォーカルはとても訴求力があって良かったです。
ところがヴォーカルのランクが上がった結果今度はアレンジがチープに
聞えてしまったように思うのです。次回はその点を改良されます様
お願い致します」

うむむむむむむ。Kはうなった。
ふむむむむむむむむ。Kはもう一度うなった。

アレンジか!そう来たか!
もうやってしまったのだがなー。

迷った挙句、Kは前回ヴォーカルを頼んだFに電話をかけた。
「もしもし。F?今、話せる?」
「おいおいおいおい、何時だと思っているんだよ」
「8時くらいかな?」
「8時!おやすみ〜」
「ちょっと待て、切るな〜。アレンジャー紹介してくれ!」
「アレンジャー?おまえアレンジ出来なかったっけ?」
「できるけど、もっとプロフェッショナルな音にしたいんだよ」
「なんで?」
「コンペに勝つために!」
「わかった。じゃあいつものファミレスに14時な」
「お!サンキュっ!」

徹夜明けのKはそれまでちょいと一眠りしようと横になった。
だが寝過ごしたらまずいと思い直した。
こうなったら約束の時間まで6時間あるがさっさとファミレスに行って
しまおう。

Kはファミレスに急行するとモーニングセットを頼んだ。
それにはドリンクバーもついていてお得なのだ。

Kは眠気を追い払うためにアメリカンコーヒーを飲んだ。
カフェラテを飲んだ。ブレンドコーヒーを飲んだ。
やさいジュースでビタミンを補給するのも忘れなかった。
アイスティーも飲んだ。
ホットティー(ダージリン)も飲んだ。

さすがにお腹がガボガボになった。
「そうだ、新聞を読もう!」
ファミレス備え付けの新聞は数が少ない。
たまたまその時はY新聞が一部残っていた。

ラッキー!

Kは新聞を丹念に読み始めた。
作曲家たる者、新聞からも創作のヒントを掴もうと努めるのだな、
と思った人がいるかも知れない。
しかしこの時のKは有り余った時間を潰すためだけに熟読していたに
過ぎない。

14時を20分過ぎた頃、Fとアレンジャーがやって来た。
アレンジャーはアルファベットの名前を付けてもややこしくなるだけ
なので漠然と「アレンジャー」と呼ぶことにする。

アレンジャーは長身であった。
189!)あった。ちなみにKは170!)、Fは175!)。
だが、彼らの身長は話の本筋とは全く関係がないのであった。

「コンペがありましてー、そのー、アレンジをですねー」
Kが説明を始めるとそれを遮るようにアレンジャーは言った。
「2万でどうです?」
Kは絶句した。無料とは思わなかったが1万くらいの心積もりをして
いたのだ。逡巡しているとすかさずFがこう言った。
「良かったなあK!安くやってもらえて」

話は決まった。Kは笑顔の裏で泣き崩れたのであった。
だがこれでコンペが通れば!その為ならば2万の出費くらいは…

「歌はまた俺が歌ってやるよ」とFが胸を叩いた。
そうだFに払う5千円を忘れていた!まあいいさ、2万5千円くらい。

歯を食いしばるKにそっとFが耳打ちした。
「せっかく安くアレンジ引き受けてもらったんだから、ここの支払いは
Kが払わないと悪いぜ」

ファミレスの支払いは¥6615だった。
息もタエダエになりながらKは思った
「3万1千615円の出費くらい(泣)」

その数日後にはアレンジャーからアレンジが上がって来た。
歌入れはアレンジャーの自宅で行った。
その出来栄えは流石に素晴らしく市販のCDにひけを取らないもので
あった。

これならいける!
Kはディレクター氏にデモを送ると結果を待った。

翌週の事だ。ディレクター氏から電話が来た。
「おめでとうございます!通りましたよ!」
「あ、ありがとうございます!」Kは思わずハラハラと落涙した。

そこからは早かった。デモはアーチストの手に渡り、詞が付けられた。
レコーディングの日程が決まった。

そしてCDは発売された。
だが、Kをはじめとするスタッフの願いも空しく
そのCDはごくごく僅かの枚数しか売れなかったのである。

1年後、Kの口座に印税が振り込まれた。
その金額は2万6千円であった。

「5645円の赤字だ」Kはがっくりと肩を落とした。
だが、その後提出したコンペの結果待ちが3件残っている。

「まだ完全に終った訳じゃないさ」Kは無理やり笑顔を作ると
新曲の制作に取り掛かった。

次のコンペは音頭だった。
「はぁ〜〜〜!」Kの頭の中で祭り囃子が始まった。

これが映画ならば、そんなKを陰から見守る女性が登場する場面である。
しかし、これはメルマガなのでそんな事は起きないのであった。
すまんすまん。

これにて「コンペティションストーリー」全巻の終わりであります。
最後までお付き合い下さいまして誠にありがとうございます。

「コンペティションストーリー」はフィクションです。
実在する人物、団体とは無関係です。(と、今回も重ねて記す)

次回は「アカペラ中学生」をお届けします。

◆編集後記 ------------------------------------------------------

お話しにすると長くなってしまいますね。
エッセイ形式はぎゅっと言いたい事だけを言えるのでいいですね。

今回のお話しは当初意図した方向と違う展開になってしまい、
自分でも「アチャー」という感じです。
それにしてもKはどうやって生計を立てているのでしょうね?

感想、大歓迎! kanehiro3@hotmail.com  へ送ってね。

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http://www.os.rim.or.jp/~kanehiro/

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発行者:かねこひろゆき
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創刊日:2001-02-18  
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発行周期:週刊  
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