政治・経済

チホウ政治じゃーなる

「民主主義の学校」と呼ばれる地方自治には、不思議なことがいっぱい。そんな誰もが知れば呆れる「知呆」な「地方」の政治の話を樺嶋秀吉が独断で報告。

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チホウ政治じゃーなる vol.329

2005/12/26

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【チホウ政治じゃーなる】  ■■■ ■ ■ ■ ■ ■ ■■■ ■ ■
 vol.329 特別号      ■   ■■■ ■ ■■■ ■ ■ ■ ■
 2005/12/26 発行      ■■■ ■ ■ ■ ■ ■ ■■■ ■■■
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  知れば誰もが呆れる「知呆」な話題や、思わず褒めたくなる「知褒」な
  出来事を地方紙や地方版から探し、報告する地方政治ミニ・ニュース。
  この号の配信部数は合計3,809部でした。 http://www.kabashima.com/
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      政治家、公務員、都道府県別「ひどさ」を総検証!
        民主主義のコストについてとことん考える
          『「税金ムダ喰い」のカラクリ』
 樺嶋秀吉著 光文社ムック(光文社刊) 定価(本体952円+税)
  内容紹介はこちら→ http://www.kabashima.com/pr/zeikin.html
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発行人より
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●前号で千葉県市川市の「1%条例」報告書を作成、公開していることをお伝
えしましたが、今回のニューズレター「コラボ」のダイジェストではその報告
書の抄録を掲載しています。全文を読みたい方は、http://www.kabashima.com/
でダウンロードできますので、ぜひご覧ください(この1か月間にPDFファ
イルだけで160件以上のダウンロードがありました)。市川市の1%条例が
より改良された形で全国の自治体に広がってほしいので、NPO・行政関係者
の皆さんに参考にしていただけると幸いです。

●今年も残すところあと5日です。このただでさえ気忙しい時期に、近場です
が引っ越しをしました。ドタバタと大騒動でしたが、年末の大掃除だけは同時
進行で完了。ただ、年賀状のほうは全くの手つかず状態で、元旦到着はすでに
諦めました。まあ、こんな感じで目先のことに追われる毎日ですが、読者の皆
さん、来年もよろしくお願いします。


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コラボ vol.29 ■ダイジェスト■          2005-12-01
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http://www.npo-collabo.org/ (完全版の購読申し込みはこちらから)

[報告]
報告書「日本で初めての『1%条例』(千葉県市川市の事例)」抄録
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01:運用
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樺嶋秀吉 Kabashima Hideyoshi ジャーナリスト

<本報告書は、千葉県市川市の「1%条例(市川市納税者が選択する市民活動
団体への支援に関する条例)」が初年度どのようにスタートを切ったか、その
実態を他の多くの自治体やNPO関係者へ知ってもらうことを目的に、中・東
欧でパーセント法の普及支援をしている笹川中欧基金事業室(笹川平和財団)
の委託により作成した。

 報告書全体は「目的と背景」「制度設計」「運用」「課題」の4章構成だが、
ここではその中の根幹部分ともいえる、申請事業の審査方法、支援を受けた団
体の反応、さらに優れた制度となるための課題について要約を試みた。とくに、
支援を受けることができる団体の資格や、納税者(市民)に対する事業内容の
アカウンタビリティー(説明責任)については、審査会で会長を務めた松原明
・シーズ=市民活動を支える制度をつくる会事務局長と、副会長の山口郁子・
中央労働金庫営業推進部NPO推進次長から貴重な提言があった>
※なお、報告書の全文は、本文末尾にある関連サイトで閲覧、ダウンロードな
どできる。


★審査会★

 応募団体の受付が閉め切られると、その申請事業がこの制度にふさわしいか
どうかを市長の諮問に応じて調査審議するための「市川市市民活動団体支援制
度審査会」が2月7日に始まった。

 審査会は非常勤の委員7人で組織し、このうち4人は学識経験者、3人が公
募市民という構成になっている。審査会の役割は大きく分けて3つある。
(1)応募団体の事業について、条例が定める「交付資格団体」(第3条)と
「交付を受けることができる事業」(第4条)のそれぞれ要件を満たしている
か審査を行い、納税者の選択対象となる支援対象団体を選考する。
(2)納税者の選択結果により、団体が当初の計画を変更(交付申請金額の増
額および減額)があった場合、その内容を審査する。
(3)事業終了後に提出される団体の実績報告書が支援金交付決定の内容に適
合しているか審査する。

 いずれも書類上での審査が原則で、審査委員による団体関係者への直接の聞
き取り調査はない。書類では分からない疑問点については、審査会の事務局で
あるボランティア・NPO活動推進課の職員が代わって団体へ聞き取り調査を
し、その結果を審査委員に報告することになっている。

★81団体が通過★

 2月7日に行われた1回目の会合では、個別の団体についての具体的な審査
は行われず、どのような基準で審査を進めるかについて意見を交換して2時間
程度で終了した。審査委員は、この場で事務局から渡された83団体分の申請
書類をそれぞれ持ち帰り、第2回会合が開かれる3月3日までの約1か月間、
メーリングリストで互いに意見を交換したり、団体に対する調査を事務局職員
へ依頼した。

 3月3日に行われた2回目の会合では、こうしたメーリングリストでの協議
や調査・報告を下敷きにして、83団体すべてを一日がかりで一気に審査した。
結果は、2団体を除く81団体の事業が支援対象事業に選ばれた。

 83分の81というのは97.6%の「合格率」だが、このような結果にな
った原因は、「最終的に団体の事業を選択するのは一人ひとりの納税者」であ
るという制度の特殊性にある。この点について、他の自治体や民間財団でもN
PO助成金・補助金の審査をしている松原会長は次のように述べている。

「審査会の役割を委員で議論したところ、『市民(納税者)が選択権を十分に
行使できるようにバックアップする』という結論になった。そのバックアップ
とは、『市民の選択肢を狭めない』、なおかつ、『市民が誤って選ばないよう
に、変な団体はリストに載せない』ということだった」

★「価値観には触れない」という原則★

 しかし、制度に適さない団体の事業だけを除外するというのは、実際には困
難な作業だった。ある団体の事業を落としたら、それと類似した団体の事業を
なぜ落とさないかという疑問に全て答えていかなければいけないからだ。

 そして結局、後述するように審査基準が具体的でなかったために、委員の間
では「価値観には触れない」という大原則が申し合わされた。例えば、福祉は
いいけれどもスポーツはダメとか、あるいは同じ少年スポーツの中でも野球は
いいけれどもゴルフはダメとか、また事業によって営利性が生じるか生じない
か、といったような個人の価値観によって判断が異なる事項は除外理由の対象
にしなかったということだ。

 また、83団体のうち81団体の事業が審査を通過したことについて、市川
市民でもあり、また中央労働金庫でNPOに対する融資を開発してきた山口副
会長は、次のような辛口のコメントを語っている。

「非常にたくさんの応募に対しては『これも市民活動ですか?』というような
ものが多々あった。私の基準だけなら、少なくとも3分の1はなくなっただろ
う。この制度は公金なので、税金を払っている人の顔がちらつく。少なくとも
不安材料をたくさん持っている団体を棚の上に載せてはいけないと思っていた」

 多様な市民活動における線引きの難しさ、さらに、「少しでも多くの団体に
支援を受けるチャンスを持たせたい」という気持ちと「公金を使うことの是非」
の判断との間に生まれるジレンマを審査委員たちは感じていたようだ。

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02:申請団体
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 変更申請の手続きを終えて、6月21日付で正式な交付決定額が各団体へ通
知された。届出金額が多かった事業、交付申請額と交付決定額との差額(不足
額)が大きかった事業、交付申請額に対する届出金額の倍率が高かった事業、
納税者1人当たりの届出金額が多かった事業をリストアップしてみた。

★届出金額の上位★

 81団体の中で届出金額、交付決定額ともに最高だったのは「市川ジュニア
Bリーグ」の「小学校低学年児童を対象とした野球ゲームの開催事業」だ。

 当初の申請では事業費総額64万円・交付申請額32万円だったが、414
人から82万5908円の届出を受けた結果、柏井少年広場にある球場の整備
(4つのグラウンドに給水・散水設備、発電機の設置)を新たに加えて、事業
費総額136万円・交付申請額68万円に変更申請した。

 篠崎善治事務局長の話
「このグラウンドは市川市が地主から土地を借りている。4つのグラウンドの
うち市が施設を整備したのは2つだけだ。あとの2つは、『自分たちのことは
自分でやろう』という主義で、市の補助などは受けずに外野・バックネットの
設置などすべて自分たちで整備してきた。ようやく今回、増額分で4つのグラ
ウンドすべてのマウンドの後ろに給水栓を付けることができた。水を使えるよ
うになることが子どもたちの長い間の要望だったが、この制度のおかげでよう
やく実現できた。今回は、『1チーム10人お願いします』と各チームに呼び
かけた。監督、コーチ、選手の親だけで600人ぐらいいる。414人も支援
してくれたということは、私たちの活動に対して、それだけ感謝と期待をして
くれているということだと思う」

★不足額の上位★

「社団法人市川青年会議所」は、創立40周年の記念事業として、主に市内の
小学生から大学生を対象に募集した出演者による市民ミュージカル「家族〜あ
る夏の出来事〜」を8月7日に市川市文化会館大ホールで上演した。

 その事業費総額1277万7000円のうち400万円を交付申請したが、
届出金額は104人からの45万7717円にとどまったため、不足分(35
4万2283円)は企業などからの協賛収入(変更前の予算では100万円)
やチケット販売収入(大人3000円、中学生まで1500円。変更前の予算
では535万円)の増額で補う。

 田中幸太郎・40周年記念事業委員会委員長の話
「私自身はこの制度は青年会議所にあまり適していないように感じ、もっと小
さな団体にどんどん利用してもらえばいいと思っている。そして、そういう団
体に対して青年会議所としても独自の支援制度をつくってコミットしながら、
一緒に事業をしていけるようになればいいと考えている。今回、市の制度に参
加してみて、そういうアイデアが新たに生まれてきた」

★届出倍率の上位★

 交付申請額に対して届出金額が多かった「市川手をつなぐ親の会」(分野=
保健・医療・福祉の増進)の「知的障害理解のためのポスター作成と啓発事業」
は、10万円の交付申請額(変更前)に対して3倍以上の届出金額が集まった
が、変更申請の増額幅を5万円に抑えた。増額(総事業費は10万円増額)し
たことによって、「災害要支援者と防災に関するシンポジウム」の開催や、各
地域や学校で開催している出前講座で配布するパンフレットの作成を新たに行
う。

 この団体は1953年2月に設立され、会員は780人いる。すでに地域作
業所の運営に対して市から年間9000万円以上の補助金(作業所で働く人の
人件費)をもらっており、今回は、啓発ポスターを作りたいと思っていたとこ
ろにちょうどこの制度が出てきたので申請したという。

 田上昌宏代表の話
「市民の方々から多くの支援を受けたので、その気持ちに答えたいと思い、増
額申請した。支援額と同額をこちらでも準備しなければいけないので、私たち
の手持ちのお金では5万円の増額に応じることしかできなかった。この制度は
目的が小さなことからできる。ふつうの予算だと、『10万円の補助金をくだ
さい』というのは逆に難しい。障害者が日中活動する場を作るには足りないが、
そんなに高額ではないけれども補助金をもらえると助かるという事業にはあり
がたい。今回のポスター作成がまさにそれだった」

★1人当たり届出金額の上位★

 市が2004年7月に制度案を発表したとき、市長の予算提案権との関係な
ど、いくつかの疑問点がマスメディアから指摘されたが、その中に「高額納税
者がこの制度を悪用し、結びつきの深い特定団体だけが利益を得るという懸念
もある」(7月24日付産経新聞)というものがあった。

 この観点から気になったのは、平均的な納税者の1%額である約1364円
に比べて、「門前納税貯蓄組合」(分野=経済活動の活性化)の「納税のため
の啓発事業」が1万1716円と高額すぎることだ。制度を悪用するという意
図はもちろんないだろうが、日常活動をとおして高額納税者を知りうる団体が
このように突出した金額を得ていることには他団体との公平性において疑問を
感じざるを得ない。

 制度に対する評価は、届出結果によって各団体まちまちだが、届出金額が予
想を大きく下回った団体でも、「もっと小さな団体にどんどん利用してもらえ
ばいい」(市川青年会議所)、「ボランティアの底上げ制度」(NPO法人・
青少年地域ネット21)と一定の役割を認めている。また、届出結果がよかっ
た団体にも、「活動の幅を広げることができたのは、今回の支援制度のおかげ」
(心のふれあいボランティア「フレンズ」)、「高額ではないけれども補助金
をもらえると助かるという事業にはありがたい」(市川手をつなぐ親の会)と、
制度の趣旨を理解して、上手に使いこなそうという姿勢が見受けられた。

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03:課題
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★審査基準★

 6月定例市議会では、審査会による調査審議のあり方も取り上げられた。議
員からは「(支援を受けた団体の)全部がボランティア活動と言えるのか。会
費で運営すればいいところもあるのではないか」との質問が出された。

 大谷市民生活部長は「参加資格の制限は最小限度に留めている。活動団体の
参加の間口は広げることにして、団体活動に対する判断は、行政ではなく、地
域で生活している市民の物差しで考え、評価してもらうこととしている。そう
することで市民活動が様々な市民に理解され、参加してもらえる一つのきっか
けになると考えている」と答弁。ただし、次年度以降は申請団体が増えること
が予想されるので、「(今年度の)事業の実施状況や結果を見ていくとともに、
様々な方の意見を聞きながら、審査会の意見も伺いながら、マニュアルも視野
に入れて制度として改善すべきものは改善」(大谷部長)する姿勢を示した。

 じつは、審査基準については、より具体的な内容とするようにとの要望が審
査会側からすでに出ている。前述のとおり、今回は審査基準が具体的でなかっ
たために、価値観に触れる部分はすべて素通りとなり、その結果、83の応募
団体のうち81団体の事業が審査を通過して納税者(市民)の前に提示された。

 審査基準については条例にも施行規則にも明確な定めがない。「団体応募要
領」の中に次の7項目が列記してあるだけだ。
・団体から提出された書類について
(1)対象となる団体であるか。
(2)対象となる事業であるか。
(3)対象経費であるか。
・事業計画、事業収支については、
(4)市川市民の利益に寄与するか。
(5)計画に具体性があり、実現できるか。
(6)事業を実施することにより、見込んでいる成果や効果が得られるか。
(7)計画した事業が、次年度以降も継続でき、かつ、広がっていくことが可
   能か。

★見直しを求める審査会★

 審査会の松原会長は、制度自体については、「1%条例は、ふだんいい活動
をしているところへ支援が行く」と、基本的にはプラスの評価をしているが、
審査基準については次のように否定的な見解を述べている。

「基準を見直してほしいと市には言った。条例に書かれている『団体を構成す
る者のみを対象とするものでない』、『営利を目的としない』というだけでは
分からない。また『社会貢献に関わる分野』といっても、どんなものでも理屈
を付ければ関わる。トヨタ自動車だって、エコカーをつくることは社会貢献に
なる。また『1事業年度以上継続的に活動をしていること』とあるが、1年に
1回、ゴミ掃除とかを2年ぐらいやっていても『継続的』というのか。定義が
ないので大激論になった。審査基準は不十分であるというのが審査員全員の意
見だった」

 さらに、市民活動の範囲や定義に関して松原会長は「今の形では、例えば町
内会が街灯を取り替えたいという申請もOKになる。テニスサークルが、自分
たちのテニスの道具を買いたいというのも基本的にOKになる。税金をどうい
うところへ流していくのかという政策的な決定がはっきりしていない」と問題
点を指摘。

 これに対して、ボランティア・NPO活動推進課の五十嵐盛春課長は「まず
は制度を定着させることが大切だと考えている。審査基準を検証するための期
間も必要だろう。2回、3回とやってくると、何か見えてくるのではないか。
団体の中には次年度は応募しないところも出てくるし、逆に次年度から応募す
るところもあるだろう。この制度が自分たちの団体に合っているかどうかとい
う点からの淘汰が、団体側でもすでに始まっている」と語っており、審査基準
がすぐに見直されるかどうかは微妙だ。

★アカウンタビリティーの問題★

 審査会の山口副会長も制度そのものに対しては、「市民参加型の資金循環の
仕組みが他の自治体にもできていけばいい」と、松原会長と同様にプラスの評
価をしているが、制度を発展させていくための課題として、納税者(市民)に
対するアカウンタビリティー(説明責任)の問題を指摘している。

「『納税者(市民)に選んでもらう』のはとても正しい判断だが、その団体の
これまでの活動実績や、これからやろうとする事業内容や実現可能性、さらに
市民にとってのメリット、公益性はどこにあるか――という点について市民に
どこまでアカウンタビリティーが果たせていたか疑問だ。納税者が本当に納得
して資金を拠出するために、必要な情報が提供されることが重要だ」

 81団体分の申請書類はファイル化され、市のホームページに掲載されてい
たので、インターネットを利用できる人なら誰でもダウンロードして閲覧する
ことが可能だった。しかし、そのファイルの形式はPDFという、専用の閲覧
ソフト(無料)が必要なもので、ふつうにウエッブサイトを開くようには簡単
に見ることはできない。

 申請書一式はボランティア・NPO活動推進課に備えつけてあり、開庁時は
誰でも閲覧することができた。だが、同課のあるアクス本八幡は都営新宿線の
本八幡駅出口には近いものの、本庁舎からは徒歩で数分の距離があり、何かの
用事で来庁した人が、「ついでに見ていく」というわけにはいかない。実際、
「申請書類を閲覧に訪れた人はほとんどなく、電話での問い合わせが数件あっ
ただけだった」(同課の寺沢和博副主幹)という。

★PR方法のスキルアップ★

 納税者(市民)に対するアカウンタビリティーは、一義的には団体側が負う
べきだ。一般的に、公益を図る市民活動をしている団体は、自分たちの活動の
意義を住民に理解してもらうための努力を日常的にしなければならないが、納
税者(市民)に選んでもらうことによって支援金の交付を受けようとする団体
には、その努力が一層求められる。

 制度設計に携わった小川隆啓・教育総務部長(前総務部審議監)は、制度が
狙いとした「納税者意識の高揚」と「市民活動の活性化」という2つの目的の
ほかに、「やっていくうちに、プラス1の目的が見えてきた」と語っている。
すなわち、プレゼンテーションなどを通じて、NPOやボランティア団体の活
動が市民に広く知ってもらえるようになったということである。

 この「3つめの目的」を実現していくために、団体は納税者(市民)に活動
を正確に理解してもらうためのスキルを身につけ、さらに磨きをかけていかな
ければならない。各団体のスキルアップが進み、中間支援組織的なNPOが市
に代わってプレゼンテーション部分を運営するというのが一つの将来像として
期待される。納税者(市民)側は、団体が発信した情報をしっかり受けとめて
選択に生かすことが、そうした団体側の努力に応えることになる。


[会員の声]
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04:出生率の上向いた日本に帰ってきたい
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松永和久 Matsunaga Kazuhisa 会社員

★国際市場での地位低下をひしひしと感じる★

 私は現在、食品の輸入に携わる商社に勤めているが、このほどオランダに転
勤する事となった。転勤前に少々仕事柄、日本に対して思うことを述べてみた
い。

 最近、海外の食品メーカーとの商談をしていると「価格や品質に対して厳し
いことを言うようであれば、別に買ってもらわないでも結構。中国は、価格も
そこそこで品質に対しても厳しい要望もなく、しかも大量に買ってくれる」、
「日本の人口は年々減少していくことが予想されており、今後の売り上げの伸
びはあまり期待していない。むしろ主眼は多くの人口を抱える中国にある」と
いうような姿勢がひしひしと伝わってくる。

★少子化問題をもっと真剣に考えよう★

 最近、私は現在の日本人がどれだけ深刻に人口の減少に対して考えているか
少々疑問に思う。長い目で見た場合、年金、経済、財務、税金問題などの主要
な政治問題は全て人口問題に行き着く感があるように思うし、逆に人口の減少
を食い止めることで解決できることは多いのではないか。

 これから海外に赴任する私にとって、海外のメーカーと最前線でやり取りを
行う事になるが、今後ますます厳しい交渉を迫られる局面が予想されるなか、
何とか日本の立場を維持し、主張して海外との関係をお互いに益あるものにし
ていけるよう努力していきたい。その為にも、是非もっと日本人に人口減少問
題に目を向けて欲しい。何年か後に私が帰国したころには、出生率が現在より
も少しでも増加している事を切に願う。(了)


[テーマ書評]
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05:事例細見――合併が議会と住民に問いかけたもの
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宮川純一 Miyakawa Junichi 編集者

 市町村合併がこれだけ進んだ背景は、合併特例債と地方交付税減額によるア
メとムチといった自治体財政の問題や少子高齢化の問題など挙げたらきりがな
いのだが、実際に戸惑いだらけの自治体の現場ではどのような動きがあったの
だろうか。特に議会と住民の動きを中心に事例を拾い出してみた。

★合併論議から飛び出した直接民主制★

 自治体数が減少すれば、当然ながら議会及び議会議員の数も減少せざるを得
ない。が、多くの合併自治体では、最初の議会議員選挙実施までの期間、現職
議員の「在任特例」という一時しのぎで間に合わせたことはご承知の通り。し
かし、その一方でおもしろい試行錯誤が行われている。最新刊の『村が消えた
――平成大合併とは何だったのか』(菅沼栄一郎著 祥伝社新書 2005年)
を見てみよう。

 例えば、「町村総会」。町村総会とは、地方自治法94条にある規定で、要
は議会をおかず住民総会によってモノゴトを決めようという制度。つまり直接
民主制である。

 実際、山梨県の丹波山村と小菅村による合併協議の検討資料には、「議会の
廃止」が盛り込まれたそうである。というのも、この案が浮上した背景には、
両村合わせた村民数が1000人程度だったことから、世帯主1人が参加すれ
ば200人程度になるという読みがあった。丹波山村の議長は「村民の政治へ
の関心が薄い現状では難しい」とその可能性を否定しているようだが、問題提
起のなかには歳出の大きさや議論の質という点で、現状の議会のあり方に対す
る不信感があったようだ。

★合併後の議会に求められるもの★

 市町村合併による議会の変化の兆しにも触れておかないといけない。

 例えば、新議会選挙における「中小選挙区制の導入」。『地方は変われるか
――ポスト市町村合併』(佐々木信夫著 ちくま新書 2004年)によれば、
長野県諏訪地域では、当初6市町村により人口21万人、議員定数38の合併
を目指していた。ここで登場したのが中選挙区制の導入だ。

 各市町村の定数を人口比ではなく、もとの市町村議員数を按分する形で設定
するというもので、「人口比からみた一票の格差については極端な不平等感を
容認せざるをえない」と著者も指摘するものの、地域が独自に考え出したユニ
ークな発想だ。最後は合併協議の不成立によってこの試みは実現しなかったが、
合併後の地域にふさわしい選挙制度を考えようとした好例である。

★住民投票における実験★

 住民の動きはどうか。合併の際に、住民投票を導入した町も決して少なくな
い。住民意思によって直接、町の将来を決めようという試みの中でも面白い事
例がある。

 まず、「永住外国人への投票資格付与」の例。『自治体の創造と市町村合併』
(今川晃編集・木佐茂男監修 第一法規 2003年)によると、滋賀県米原
町は全国ではじめて住民投票条例によって年齢20歳以上の永住外国人に投票
権を認めたとある。

 以上、各合併協議の現場を見てきたが、これらは全国のほんのわずかの事例
でしかなく、また実際はどこも大混乱だったに違いない。しかし、その混乱劇
の渦中でも、いたるところでかつてない自治の実験が繰り広げられたことも、
また事実である。(了)


[あとがき]
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06:おしらせ
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 いよいよ師走となり、忙しい日々をお送りのことと思います。この冬は新型
インフルエンザの流行が心配されているので、体調にはくれぐれも注意をした
いもの。無理は禁物です。

 だからというわけではありませんが、このニューズレターの次回発行は、丸
2か月お休みをいただいた後の来年2月初めとなります。この間、内容刷新の
良案が浮かぶかどうか。とにかく次号をご期待ください。
(樺嶋)


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チホウ政治じゃーなる
編集・発行人 樺嶋秀吉
ご意見・ご要望は info@kabashima.com
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