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東京および首都圏の演劇を独自の観点から批評したメールマガジンです。小劇場演劇が主体で、時モダン・ダンス、舞踏などの公演もチェックします。戯曲・演出・役者・美術など、項目別の五つ星採点表付きです。

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劇評ざんまい・東京の当代演劇

発行日:7/31

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○◎★  □□ <劇評ざんまい・東京の当代演劇> □□
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★              2004年 7月29日  新01号(隔週刊)
 
                             ★      
  ●メールアドレス:lyu-wen@msg.biglobe.ne.jp      ★○
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                          ★○◎★

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★0【口上】

 長い間、ご無沙汰しておりました。読者の皆様には、大変申し訳
のないことをいたしました。はじめに深くお詫びを申し上げます。
 さて、今年は豪雨に高温と異常な気象が続いていますが、読者の
皆様はいかがお過ごしですか。評者は、今に至り、ようやく筆を執
り直すことが叶いました。ここ半年間、様々な事情がありまして、
生活が一変していました。そのことについては、折をみて触れたい
と思いますが、とにかく今日より小誌を再刊する運びとなりました。
 という訳で、心機一転、より精確かつ苛烈なる「劇評」を期して、
執筆して参りたいと存じます。それは、我が国の腐り切った為政者
を誅すがごとく、また資本主義の鋳型に人倫の正義までをも流し込
んで恥じないありとあらゆる商業主義者どもを殲滅するがごとく、
ここでの批評はどこまでも厳粛かつ果断たるものでありたいと念じ
ます。全ては革命の志の証として、評者はその生命を賭して真摯に
取り組んでいく所存です。今後ともよろしくお願い申し上げます。

                        劉 文  拝
 

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 ★ 0【口上】/<もくじ>/注記
 ★ 1【劇評】040501番:あなたに逢いたくて       (燐)
 ★ 2【編集後記】 

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■注記:「星取表」は、次の基準で採点(5段階)してあります。
 
【星取表】
  戯曲:★★★★★ (戯曲未読の場合は、上演時の物語で判断)
  演出:★★★★★ (上演時の舞台上での総合的演出を見ます)
  役者:★★★★★ (主演の他、全体のまとまり具合を見ます)
  美術:★★★★★ (舞台装置や衣装など、視覚的効果を判断)
  音響:★★★★★ (背景音楽や効果音、聴覚的効果を見ます)
  制作:★★★★★ (広報やチラシ、会場案内などを総合判断)
 
■注記:舞踊・舞踏・モダンダンス等も、便宜上「劇評」「観劇」
 と記述させていただきます。
 
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★1【劇評】040501番

■演目=あなたに逢いたくて    
 団名=燐
  作=北野ひろし
 演出=手塚敏夫
 小屋=両国:シアターΧ
 観劇= 5月23日昼
 時間=90分
 公演= 5月19日〜23日(第41回公演: 8ステージ)
 スタッフ:
  舞台監督=青柿ひろし/装置=宮崎義人/照明=高良康成/
  音響=山田健之/宣伝美術=矢戸優人/制作=劇工房燐・制
  作部

【星取表】
 戯曲:★★★★  「昭和」を描いた貴重な秀作。心が温まる。 
 演出:★★★★★ 淡々としていながら、じっくり見せる好演出。
 役者:★★★★★ 巧い。間がいいし、熱さも絶妙。  
 美術:★★★★  丁寧な装置といかにも「昭和」な服装がマル。
 音響:★★★★  これまた懐かしい「昭和」のオンパレード。 
 制作:★★★   期間をもっと長くできないか。もったいない。
 
【劇評】
 今作は大人の恋愛劇という形をとっているが、その実、昭和45年
という年そのものが、この芝居では主題だった気がする。毎回丁寧
に作られているこの劇団の上演パンフレットを見ると、「1970年っ
て…」というページには、時の総理大臣(佐藤栄作)や流行った映画
(「戦争と平和」「明日に向かって撃て」ほか)、テレビ番組(「樅
の木は残った」「時間ですよ」ほか)が、一覧表になって載せられ
ている。懐かしい、といいたいところだが、当時はまだ子供だった
評者としては微妙である。が、その年の国内最大のイベントだった
大阪の万博については、見物に行って来た担任の先生がクラスの生
徒たち皆に絵葉書を配り、たくさんの土産話をして下さったことを、
今もはっきりと覚えている。‥‥そういえば、栃木の田舎の小学校
で校長以外で初めて自家用車で通勤を始めたのもその新しもの好き
の先生だった。‥‥こんなつまらないことまで思い出してしまうと
いうのは、やはり評者も十分に「懐かしい」といえる世代であると
いうことか。そういえば、岡本太郎の「太陽の塔」とか、アポロで
持ち帰った「月の石」とか、次々に記憶が甦って来る。これは、ま
ずい。意味もわからずに学校の行き返りに「走れコウタロー」とか
「戦争を知らない子供たち」を歌っていた自分がいる。さらにいえ
ば、「よど号事件」に始まり、「三島由紀夫の割腹自殺」「安田講
堂の攻防」「浅間山荘事件」と、時系列とは無関係に次々と重大事
件の映像が蘇って来る。社会的な意味などわかるはずもないのだが、
それらの事件の「衝撃」といったものは、子供心にもきちんと受け
止めていたということだろうか。
 さて、今作の舞台はとある商店街の結婚相談所。外回りから帰っ
て来たベテラン相談員の矢部(安原葉子)と専務の野路(堀内博)
の掛け合いから始まる。二人のベテランのコミカルな演技が、この
芝居の雰囲気を巧く先導していた。その事務所の階下には、そこの
紹介でいっしょになった夫婦が理髪店を営んでいて、店は妻(横山
つや)が切り盛りし、夫(藤生達憲)は商店街の「仕事」で「忙し
い」。いかにも「昭和」の商店街といった設定である。ほどなく、
妻を亡くして12年という中年の男(宮崎義人)が訪れるが、相談所
の所長(大森照子)をはじめ、皆そのさえない風貌と、煮え切らな
い態度に焦れる。また、入会して3年という資産家の老婦人(小野
広子)が訪れて、それとなく野路への思いをほのめかす。
 どちらも伴侶を亡くして相談に来た客ということだから、話題と
してはシリアスなのだが、どちらも思わず笑ってしまう。生真面目
でいて頑固な中年会社員と派手でいながら情け深い女社長を宮崎と
大森が、少女のような可愛らしさをふりまく老婦人と先代の所長に
拾われその恩義を支えに自嘲気味な生き方をする初老の男を小野と
堀内が、それぞれ絶妙の掛け合いで演じていた。アドリブもあった
のかもしれない。セリフなのか、アドリブなのか。その呼吸の巧さ
は、大人の劇団ならではのものだといえる。
 笑いの中で物語は展開し、やがて曲がり角を迎える。以前、一度
来たことのある若い娘(小山久美)が血相を変えて乗り込んで来て、
「父の恋を止めさせて!」というのだ。父親には恋をしてほしくな
いという、その父親とはもちろん、件のさえない中年会社員である。
娘も独立し、自分の行く末も見え始めた中年ヤモメが、伴侶を探し
に結婚相談所を訪れたというのだから、それはそれでいいではない
か、と評者などは同情してしまうが、娘の心理としては、やはりそ
れは許せないらしい。いつまでも若い時の父親像を抱き続けたいと
いうことか。小山による必死の抵抗が健気に映る。
 それに対し、ほんの短い新婚生活しか知らずに戦死してしまった
主人との思い出が忘れられず、一人で年老いていくことに胸をつま
らせる老婦人。記憶の中のいつまでも若い夫への思慕に明け暮れ、
共に老い路を歩める伴侶がほしいという老女の切実な願いが、また
涙を誘う。淡々とした小野の語りが心を打った。父への思い、夫へ
の思い、愛する人への思いの深さといったものは、どんな世代でも
いつの時代でも同じだということだろう。が、愛する術はそれぞれ
に異なる。今作はその違いを老若の対比として見事に浮き彫りにし
て見せた。
 物語は、そこへ所長の薫陶よろしくすっかり若造りのファッショ
ンで決めた父親らが帰って来るといった展開となる。やがて、彼は
その相談所を訪れた意外な理由を語り出す。死別した妻とそっくり
な女性を偶然に喫茶店で見かけ、女性には知られぬままその面影を
求めて幾度となく通いつめたのだという。ある日意を決して後を追
うと、女性は建物の中に入り階段を上りドアの向こうに入って行っ
た。そして、それに続いてドアを開けて入ってみるとそこは、件の
相談所で、女性はそこの所長だった、という訳である。話としては
うまく出来すぎている感は否めないが、それよりも、まず男の心情
の真実味が我々の心を打つ。また、そんな男の一途さに応えて自分
ができる面倒は見てやると啖呵を切った所長の男気(?)も清々し
かった。宮崎と大森の芝居が抜群だ。セリフを掛け合うほどに熱っ
ぽくなる二人の演技に、我々も思わず飲み込まれた。
 思い返せば、そんな「人情」がまだ通用した時代だったのかもし
れない、昭和45年という年は。様々な意味で競争が激しく、生きる
ことが苦しい時代でもあったろうが、だからこそ、今まで培われて
来た「人情」が重みを持った時代だったともいえる気がする。そう
した意味において、商店街から流れ聞こえる三波春夫の「世界の国
からこんにちは」の能天気ともいえるメロディーは、何とも哀しく
も象徴的だ。その後日本はオイルショックを機に低成長時代に入り、
やがてバブルの狂乱期を迎える。全てが「カネ」の力いう時代とな
り、日本人全体がまるで平氏にでもなったかのように驕り高ぶって
いた。結果、少なからぬ人々が自らを見失っていった。この芝居の
人々もやがてそうした時代を迎えたのかと思うと胸が痛むが、だか
らこそ「人情」の売り惜しみなどなかった昭和45年という年は、い
よいよ貴重だ。今作は、作者をはじめ、そんな時代を生きた人々の
思いが込められた実に心温まるコメディーだった。
 
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★2【編集後記】

 形ばかりの復刊となりました。内容も薄く、批評としても今一つ
だった気がします。やむを得ず、しばらくはこのような状態が続く
ことと思いますが、どうかご容赦下さい。
 さて、評者がぐずぐずとしている間に、世の中は一変しておりま
した。すなわち、今は「景気が好い」という時代に変わってしまっ
ていた訳ですが、それを額面どおりに受け取れるならば、それはそ
れで、幸いなことです。しかし、現実には例えば三万人という自殺
者の数はあい変わらずですし、地方都市のシャッター街も店が埋ま
る気配は一向にありません。ただたださびれた繁華街をたむろする
若者の数だけは増え、そして彼らの人間としての質は低下する一方
です。多くの大人が死を選び、町はことごとく壊滅し、若者は凶暴
化・幼稚化し続ける。これがこの国の否定しがたい実像です。
 つまり、こうした現象は、もはや景気が好い悪いという問題以前
の、人間が成す集団としての「国家」にとって根源的な病が蔓延し
ているといわざるを得ない状況だということです。いいかえれば、
それは現体制が「社会」の在り方として極めて欠陥の多い不健全な
構造になっているということです。‥‥誤解を恐れずに極論すれば、
今の日本は「人の善意が通用しない社会」となってしまっているの
です。「善意」や「誠意」など一文の価値もなく、「金」や「数値」
や「法規」が、「資本主義」と「民種主義」という大義名分を背負
って人間の価値を査定する社会となっているのです。
 「そんなこと当たり前だ」「何を寝ぼけたことをいっているのだ」
とお思いになった方もいるかもしれません。しかし、そういう御仁
に限って、反「資本主義」的な官公庁や大企業の庇護に浴してして
いたり、非「民主主義」的な翼賛組織や寄合議会に属していたりす
るものです。そうした、社会主義的、国家主義的な価値観を営々と
二十一世紀まで携えた種族が生き残っているという事実自体も驚き
に値しますが、さらに悪いことには、そうした我利我利亡者が、こ
の国の中枢をいまだ牛耳っているのです。
 現政権が誕生した時、確か首相は八九割もの支持を得ていました。
その大政翼賛的な支持率の異常さを、評者は否定的に論評したこと
を覚えています。また、アメリカの同時多発テロの際も、自業自得
だと評しました。イラク戦争に及んでは、大統領が喧伝する大義な
どというものは何も実態がなく、彼にあるのは石油の利権と好戦癖
だけだと批判しました。
 それらのほとんど全てが評者のいうとおりでした。そして、評者
はイラクでの日本人犠牲者の発生も予見し、そのとおりでした。で
は今後、我が国はどうなるのでしょうか。日米において、このまま
現政権が継続するならば、日本はより戦争に加担し、憲法は改悪さ
れ、テロは頻発し、世界中から孤立してしまうでしょう。国家の破
滅は目に見えています。‥‥もっとも、「日本国」などという架空
の代物は、いつ滅んでも好いというのが評者の持論です。大切なの
は、「国家」ではなくて「国民」いや「市民」の安寧ただ一点です。
その大切な市民を要らぬ戦争に駆り立て、己の虚栄心を満足させる
為政者ども、それが日米の現政権担当者です。
 もういい加減、アメリカの走狗となる道は絶とうではありません
か。そのための「戦争」が必要ならば、それだけはやむを得ないと
声を大きくしていいたいです。以前も繰り返したことですが、ごく
ごく浅い歴史しか持たぬアメリカという国家は、歴史や文化、文明
を極端に形式的にしか捉えられず、その本質を見抜く力を持ち合わ
せていません。さらに悪いことに、金と軍隊の力だけは抜群ときて
いますから、我が道をはばむ者があればそれは必ず力で叩き潰そう
とします。そんな野蛮な国の従者となってしまったら、命が幾つあ
っても足りません。そして現実には、中国、インド、ブラジルなど
アメリカをしのぐ次世代の大国がすでに台頭しつつあるのです。特
に、中国においては台湾問題を孕み、中米の対立は時間の問題です。
このままでは、日本が米ソの代理戦争の戦場となった朝鮮半島やベ
トナムの二の舞になることは明白です。‥‥バカバカしい!!
 最後に、経済問題ではいつまでもデフレが収束しないといった指
摘や、イラクの日本人犠牲者が自衛隊員ではなくて民間人だったこ
となど、いかにも素人といった予見外れもありました。特に、中国
人の購買力の向上の大きさは全くの予想外でした。日本がGDPで
中国に追い抜かれるのも、これもまた時間の問題ということでしょ
う。今のうちに、日本は対中国防衛の準備を整えておかなければい
けません‥‥これは軍事防衛に限らず、経済、文化、生活全般につ
いてもいえることで、中国が日本を追い抜いた後、日本がアジアの
主導国であり続けるということは、もうあり得ないでしょう。それ
は、アジアの歴史を学べばごく当然のことで、ここ百数十年の日本
の繁栄こそが、歴史では「異例」のことだった訳です。ですから、
今後は日本が中国から受けるであろう「報復」を、いかに最小限度
に抑えるのか、それこそが外交上の最大の課題となりましょう。ア
メリカにしっぽを振っているヒマなどないはずです。
 そうした状況下、演劇にできることといったら、まずは、現状追
認のたわいない痴話や甘チャン同士の恋愛ごっこなどを、一掃する
ことではないかと評者は信じます。そんなヒマがあったら、現政府
を倒しましょう。例えば、銀行の不健全経営や社会保険庁の腐敗が
これだけ話題になりながら、国民の側から何の「反乱」も起こって
いないというのは、一つには演劇人の無能さに起因するといっても
良いでしょう。権力の腐敗を批判してこそ真の笑いを提供できる、
それこそが演劇の第一義の使命です。然るに、日本の演劇人は全く
といっていいほど、そうしたことには無関心で、小さな小さな世間
の中で、小さな小さな笑い(?)を提供しているに過ぎません。世
界の趨勢から見て、それは極めて異常な現象です。
 テロはいけませんが、社会保険庁を潰すことくらいは国民が自分
たちの責任と実力でもって断行して良いはずです。心ある人々が、
全国の社会保険事務所をどうして占拠しないのか、不思議です。そ
して、その先導をする人物が、演劇の世界から出ないことは非常に
残念でなりません。‥‥評者のような無力で無名な人間がこうして
いくら吠えても詮方ないことで、いまさらながら己の非力を恨みま
す。演劇界の実力のある人が先導して、国民の一大運動を起こすこ
とを切に願いつつ、ひとまず筆を置くことにします。ご愛読ありが
とうございました。
                        劉 文  拝
 

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<劇評ざんまい・東京の当代演劇>      2004年 7月29日 新01号
                       発行者 劉 文
 
  ・ご意見・ご質問は、lyu-wen@msg.biglobe.ne.jp
 
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