[chronique:00173] ソンタグ講演、その一
発行日:6/19
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哲学クロニクル 第174号
(2001年6月19日)
ソンタグ講演、その一
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先日お知らせしたソンタグのイエルサレム講演の内容を入手しましたので、その
概略をご紹介します。2回連載です。
サイトでは時評を次のテーマで更新しました。
■遺伝子スイッチ
■エシュロン
■日本の狂牛病の可能性
■チョムスキー氏のインタビュー
またフーコーの『主体の解釈学』の五回目「プラトン以前のスピリチュアリテ 」を
アップしました。
http://nakayama.org/polylogos/
からどうぞ
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イエルサレム講演(一)
スーザン・ソンタグ
作家の最初の仕事は、自分の意見をもつことではなく、真理を語ること、そして
虚偽や誤解の共犯になることを拒むことです。文学というものは単純化を求める
声に抗して、ニュアンスや矛盾する事柄を表現することです。作家の仕事は、世界
をありのままに眺めるために手助けをすること、すなわち世界には多くの異なっ
た要求や経験があるのを理解できるようにすることです。
現実を、現実のつまらなさを、熱狂の現実を描写することです。文学によって生
まれる叡智の本質は、文学がもたらしてくれる複数性にあります。これこそが、
なにが起ころうとも、つねにそれとは違うなにかが起きていることを理解させて
くれるのです。わたしはこの「それとは違うなにか」が大切なのだと思います。
わたしは、自分が大切に思う権利と価値の対立に強い関心をもっています。たとえば、真
理を語ることが正義にならないこともあります。正義を推進することが、真理の
かなりの部分を抑圧することもあります。
二〇世紀の多くの著名な作家たちは、公的な意見を表明しながら、公正
な大義と信じるもの(多くの場合は、かつて公正な大義であったにすぎないもの)
を推進するために、真理の抑圧の共犯となりました。そしてわたしは、真理を語
るか、正義を推進するかを選ばざるをえなくなれば(もちろんそうならないよう
に願っていますが)、真理を語ることを選ぶでしょう。
もちろんわたしは正義の行動というものを信じています。しかしこれを実行する
のは作家のつとめなのでしょうか。三つのことを分けて考えるべきだと、わたし
は思います。話すこと、書くこと、存在することです。わたしは今話しています
し、今回の賞をいただくためには、わたしは書くことに従事してきました。そし
て存在することとは、正義の行動と、他者との連帯を信じる人間であることです。
これらは異なる次元のあり方なのです。
わたしが政治的な意見をもつのは当然のことですし、わたしの意見には、読むこ
と、討論すること、反省することによって形成されたもので、直接的な経験から
生まれたものではないものもあります。ですが今回は、わたしが直接に経験した事
柄についての意見をお聞きいただこうと思います。
わたしは集団的な責任に基づいて集団的な処罰を加えるという理論は、軍事的に
も倫理的にも根拠がないと考えています。市民の生活の場の近くで行われたもの
かどうかを問わず、敵対的な軍事行動への処罰として、市民にバランスを失した
砲撃を加えること、市民の住宅を破壊し、果樹園を破壊すること、市民の生計の
もとを奪い、職場、学校、コミュニティに赴けなくすることは、軍事的にも倫理
的にも根拠がないと考えるのです。
そして〈領土〉にイスラエル人の入植地をつくることをやめて、入植地を解体し
ないかぎり、この地に平和が訪れることはないと思います。このホールにおられ
る多くの聴衆の方々に、この二つの意見に同意していただきたいと思うのです。
しかしこうしたわかりやすい意見は、わたしの作家としての意見でしょうか。それ
とも良識のある人物として、わたしはこうした意見を語り、作家としてのわたし
の地位を利用して、同じことを主張している人々の声に、わたしの声を重ねよう
としているのでしょうか。ある作家が行使できる影響力は、純粋に外在的なもの
で、有名人のもつ一つの側面にすぎません。
┏┏┏┏┏┏┏┏┏
ポリロゴス事務局
office@polylogos.org
(c)中山 元
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哲学クロニクル
http://nakayama.org/polylogos/chronique/
では、ご意見やご感想をお待ちしています。
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