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[chronique:00157] ハート/ネグリの討論会

2001/05/29

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       哲学クロニクル 第157号
           (2001年5月29日)
       ハート/ネグリの討論会、その二
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■日本の労組の生産性
■佐々木力『二十世紀数学思想』
■『原典メディア環境1851-2000』
■火星の人面岩騒動
■三島由紀夫を殺したのは誰か
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さて、ネグリ/ハートの討論の後半部分です。
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【問】ジジェクが発表したドイツ語の文章では、お二人の著作は21世紀の『共産
党宣言』に他ならないと言っています。1948年当時に、マルクスが目撃していた
プロレタリアートと同じように、現代の物質的でない労働者は普遍的な階級だと
思いますか。
【ハート】物質的でない労働者を普遍的な主体とみなすためには、物質的でない
労働という概念を作り直すために努力しなければならないでしょう。多くの製品
が物質的でないものとなりましたが、労働そのものが完全に物質的なものでな
くなったというわけでありません。現在では生産はわたしたちの身体、脳、情動、
生命のすべての力を通過して行われているからです。

【問】わたしたちは長い間苦闘してきたのですが、後味のわるいものになってい
ます。デモで主張してきたことには意味があったのですが。好ましい遺産として
は、わたしたちは子供に連帯を教え、わたしたちの時代の知的な貧困に注目する
ように教えてきました。わたしたちはもっと他のことをできたのでしょうか。
【ネグリ】これは『帝国』にはかかわらない質問だと思いますが、お答えはでき
ます。なにかすることができるかという問いであれば、イエスです。もっとも帝
国を推し進めるのです。帝国を推し進めるということはまずソ連を崩壊させるこ
とを意味しました。最初から国際闘争をさらに強力なものとすることを意味しま
した。国民国家を攻撃し、人々の移動を存在者する能力を攻撃することを意味し
ました。国境を開くことを意味しました。これらは部分的にしか実行できていま
せんが、少なくとも帝国においは、工場の体制を崩壊させることができます。こ
れはグローバリゼーションへ向かっての基本的なステップです。

【問】『帝国』は中心のない資本の普遍的な支配だと言っておられますが、欧
州連合も米国も、互いに覇権を争っているようにみえます。欧州連合はユーロ
を導入し、ヨーロッパ防衛組織を作ろうとしています。この争いはどう考
えられますが。
【ハート】帝国が地球的な規模の組織だとしても、まだ国家や国際的な組織が通貨、
経済の流れ、生産を制御しているという事実は変りません。わたしたちの帝
国の概念は、超越国家的で、実際には地球的な秩序に、国家、地方、国際的な組
織が混在したままで存在しているというものです。国民国家や、欧州連合などの
国際組織の権力と戦うことは、現在でもとても重要なことです。

【問】わたしは長年の共産党員です。世界で数百万人の人々を動かしてきたこの
共産主義という理想を信じるのは、まだ意味のあることでしょうか。
【ネグリ】信念の問題にはお答えできかねます。しかしいま共産主義者であるこ
とは、これまで以上に妥当なことだと思います。現在では労働の関係と社会的な
関係が、以前よりも共通なものとなってきました。そして頭脳労働とその他
の労働の間のこの共通性はこれまでになく重要なものとなっています。

【問】社会主義、とくにマルクス主義は、絶対的な民主主義の実践に到達するた
めに、どのように役立つのでしょうか。
【ネグリ】まず区別しておく必要があります。社会主義とは、それぞれが能力に
応じてということです。共産主義とは、それぞれが必要に応じてということです。
この二つは違うものです。

【問】『帝国』が、スピノザからマルクス、そして『千のプラトー』などのさま
ざまな源泉から概念を採用していることに、とても好ましい意味で驚きました。
それでいて、リベラルなイデオロギーを批判するために、ほとんど時間を浪費し
ていないのです。他の人々があなたの概念を利用するとしたら、どのように使っ
てほしいですか。
【ネグリ】わたしたちの概念がどのように使われるかという質問については、わ
たしたちになにも言うべきことがありませんし、読者に命令することもできませ
ん。これは読者の問題です。それからさまざまな学問分野の違いについてですが、こう
した学問分野の境界と区別を打破する必要があります。わたしたちのバイオ・ポ
リティクスの概念は、フーコーから受け継いだものですが、フーコーはこれをカ
ントの学部の争いの概念から受け継いだのです。バイオ・ポリティクスの概念からは、
学問的な区別を克服する必要が生まれるのです。

【問】お二人の協力関係に関心をもったのですが、アメリカ語で書かれたのはなにか理
由があるのですか。
【ハート】わたしたちはすべてのテクストについて協力して作業しているので、
どの章をだれか書いたということはありません。二人で草案を交換しあったので、
最後にはどの文章も自分が書いたものとなったのです。トニーの法的な状況のた
めに、協力作業をするには、わたしは年に数回もヨーロッパを訪問する必要があ
りました。最初はフランスに、次はイタリアに赴き、顔をつきあわせて協力作業
をしたのです。
【ネグリ】アメリカの英語で書いたのは、作業の際に読んだ文献が、主にアメリカの英
語で書かれていたからです。そしてこの書物が米語で書かれた理由はごく平凡な
ものです。米語は、わたしたちのアイデアを世界に広めるために、もっともシンプルで
直接的な言葉だからです。


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  ポリロゴス事務局
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     (c)中山 元
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