哲学・心理学

哲学クロニクル

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[chronique:00156] ハート/ネグリの討論会

2001/05/28

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       哲学クロニクル 第156号
           (2001年5月28日)
       ハート/ネグリの討論会、その一
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今回は2000年の5月にハートとネグリを招いて行われた討論会の内容の抜粋をご
紹介します。もちろんサイトで読み始めた『帝国』とその後にかかわるテーマ
が話し合われています。二回に分けての掲載です。

サイトでは『帝国』を読むの六回目「警察のモデル」を掲載しました。
http://nakayama.org/polylogos/
からどうぞ



【問】お二人においていただいて幸いです。なにかご意見をいただけませんか。
【ネグリ】帝国の概念と、わたしたちのその他の仮説は、現在の秩序を解明する
ことを目的としたものですが、ほんとうに重要なのはこれではありません。なに
よりも重要なのは、アウグスティヌスの二つの都市のイメージです。片方にエク
ソダス(脱出)があり、人々は腐敗した権力の都市から脱出を計っていますが、
同時に新しい都市を建築してもいるのです。いまはその概要がはっきりとつめか
ない状態ですが、すでに国境は越えています、まだ到着していないのですが。

【問】そのエクソダスの概念についてもっと説明していただけませんか。
【ネグリ】エクソダスという概念で、わたしたちは直接に対決する闘争ではなく、
権力を拒否し、服従することを拒否するというマイナスの闘争を考えています。
仕事を拒否し、権威を拒否するだけでなく、運動と欲望をブロックしようとする
すべての種類の障害物を拒否する運動が、移住が重要なのです。わたしたちは自分
を世界の市民だと考える必要があります。同時にエジプトを脱出する民のように
貧民であるという自己認識が必要です。この貧しさには弱さだけではなく、強さ
もあるのです。

【問】お二人はこれからどのような協力作業を進められる計画ですか。
【ネグリ】わたしは監獄の中で書いた『アルマ・ウェヌス』という本を出版した
ばかりですが、これは『帝国』で登場したいくつかの概念について検討した本で
す。現在のわたしたちの関心は、バイオ・ポリティクスの秩序にあります。そし
てこのバイオ・ポリティクスの秩序の中で、強力な組織がどのように登場するか、
新しい社会闘争や革命がどのように組織されるかを理解しようとしています。ほ
んとうの問題は、わたしたちがどのようにしてエクソダスを組織できるかという
ことです。
【ハート】それに付け加えたいのですが、わたしはパゾリーニの仕事について研
究しています。

【問】帝国というと歴史的に興隆、衰退、安定、崩壊ということを考えがちなの
ですが、もはやローカルなレベルに戻ることは不可能だし、無益だと考えておら
れるようです。地球規模で機能して、人々を搾取しない社会組織の形式が存在する
と思いますか。
【ネグリ】質問がよくわからなかったのですが、ローカルなものを防衛し、ロー
カルなところに戻ることと、地球規模でものを考えるのは、ほんとうは矛盾した
ことではないと思います。矛盾したものとなることはあるでしょうが、シアトル
の事件が示したように、帝国の権力の集中化に対抗する闘争では、この問題はま
だ結論がでていません。
【ハート】シアトルとワシントンのデモは、これまでは関係がなく、対立する視
点だとみられていたアナーキスト、環境保護グループ、組織労働者が共闘できた
という意味で、注目すべきものでした。こうしたデモにおいてわたしたちは、ロー
カルなものと地球的な規模のものが、いかに一致できるかを考えたのですが、ま
だ理解できていないのです。

【問】『帝国』ではポストコロニアルの議論で重要であるとされている蓄積の問
題があまり取り上げられていませんが。
【ネグリ】わたしたちは経済学の論文を書いたわけではないのです。ポストコロ
ニアルの時代、ポスト国民国家の時代の一般的な特徴の概要を把握しようとした
のです。ですから蓄積の概念にはあまり焦点があたっていません。実のところ帝国
は、蓄積のために社会の最大限の協力を搾取しているのです。帝国は共産主義の
土台を搾取しているのです。

【問】IMFと世界銀行はどのような措置をとるべきだと思いますか。
【ハート】IMFと世界銀行に反対したワシントンのデモで関心をもったのは、こ
うした超国家的な組織を抗議の対象として選ぶのは、基本的に新しい事態だとい
うことでした。デモの参加者たちが内部の機能について無知だと批判する意見を
よくみかけますが、このように若者たちの大きなグループが、これらの組織を抗
議の対象として選んだことに、とても強い印象を受けました。もうひとつ関心を
もったことがあります。この抗議活動は統一されたものではありませんでしたが、
報道とは違って、グローバリゼーションそのものに抗議したのではないのです。
デモの参加者が求めたのは、もっと違い形でのグローバリゼーションでした。民
主的なグローバリゼーションを求めていたのです。わたしたちのプロジェクトの
目的もまさにそこにありました。
【ネグリ】基本的に重要と思われるのは、これらの組織からエクソダスを実行し、
こうした組織から離れることでその権力を弱め、別の種類の関係を求めて闘争す
ることです。重要なのは、こうした組織を民主的なものとすることではなく、別
の場所に民主主義を構築することです。

【問】『帝国』では、コミュニケーションが想像力と近代性を導き、その経路と
なると書いておられます。もう少し説明していただけますか。コミュニケーショ
ンとは、コミュニケーションの装置のことでしょうか。コミュニケーション/情
報というイデオロギーのことでしょうか。「コミュニケーション」とか「情報」
として理解されるレトリックと美学的な形式のことでしょうか。
【ハート】わたしたちはコミュニケーションをさまざまな意味で理解しており、
技術的な装置だけではなく、人間的な交流を含めたものと考えています。この問
題を考えるために基本的に重要になるのは、マルクスの一般的な知性という概念
です。この一般的な知性とは、個人のレベルを大幅に逸脱する知識の社会的に強力で、
現在の多くの生産活動でも直接に生産的な力を発揮しているものです。集
団的で社会的な形式で、コミュニケーションの生産性を考えることができるので
す。

===========
ところで例のテレビの「のぞき番組」に関連したメールをいただきました。
>こんにちは。
>私はイギリスで歴史学を勉強している院生です。
>登録してまだ1ヶ月も経っていませんが、いつもメルマを楽しく拝見しています。
>日本語でのこういう情報を得られるのはとても助かります。
ご支援ありがとうございます。
国外におられる方にも役立っていると思うとうれしいです。

>ところで、「のぞき番組」のお話を引っ張るようでナンですが
>同じような番組がこちらにもありましたので、思わずメールしました。

ふふ。実はあるMLでもフランスの例の番組のホームページを紹介していただきました。
少し引用しますね。
=====
>という紹介がありましたが、この_Loft Story_という番組のサイトです;
>
>  http://www.loftstory.fr/
>
どうもありがとうございます。
オーストリアでもあるらしいし、どこでもやっているようですね。
フランスではLoft Storyはほとんど固有名詞になっていて(笑)
新聞などでも説明なしにでてきます。
これなんだろと思っていたのですが(笑)
======
同じMLでフランス人の方からも投稿がありまして
「息子の学校では、国語の授業の時間の代わりのLoft Storyスペシャルとなり
ましたよ。信じられないぐらい」なのだそうです。


>> >「●同じ日の朝日の社会面の記事で雑報をいくつか。どこかで聞いた話しだが、フランスではテレビののぞき番組が
>> >
>> >45%もの高視聴率を確保しているという。これは男性5人と女性6人を広いアパートで共同生活させ、新聞もテレビ
>> >
>> >もなく、新聞も電話も禁止して、生活の様子を26台のカメラで24時間放映しつづけるのだそうだ。インターネット
>> >
>> >でも中継している。
>> >
>> >毎週、出演者と視聴者の投票で1人が「追放」され、最後に残った男女が家を一軒もらえる。だれかふられるかで、視
>> >
>> >聴者はワクワクするらしい。でも手にした家で二人は暮らすのだろうか。のぞき番組に批判が続出する一方で、地元
>> >
>> >の出演者をたたえた市長まで登場したらしい。」
>> >
>> >
>> >これは、こちら(オーストリア)では「Taxi Orange」と呼ばれている番組ですね。室内だけでなく、カメラつき
>> >
>> >タクシーも使って放送しています。平日の晩に2回づつ放映されているようです。
>
>イギリスでは去年の7月から8月にかけて、同じような番組をやっていました。
>タイトルはそのものずばり「Big Brother」(ジョージ・オーウェルの「1984」)で、
>毎週、その家に住む出演者が各自、Big Brotherに誰を追放したいのか報告するという
>仕組みになってました。
>
>視聴率はかなり高かったようで、何かの事件が起きるとタブロイド紙がそれを一面で
>報じるというほどでした。後半まで残っていた出演者の数人はその後、CDを出したり
>テレビ番組の司会者になったりしています。あまりのヒット番組だったので、なんと
>今日から新しいメンバーでの第2弾が始まるとのこと。
>
>どうやらヨーロッパ各地で同じような番組をやっていそうですね。
>それでも各国で微妙にルールの違いがあるのがなかなか興味深いです。
>
>それではまたの号を楽しみにしています。
>ではでは。
この流行は日本にはまだ上陸していないようですが、社会現象としても
おもしろいですよね。
またメールをいただけるのを楽しみにしています。

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  ポリロゴス事務局
 office@polylogos.org
     (c)中山 元
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哲学クロニクル
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