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Wing-Mel No.2896 1分で読む日本の思想(12) 平家物語 〜 平家一門の盛衰を伝える一大叙事詩

2019/08/23

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1分で読む日本の思想(12) 平家物語 〜 平家一門の盛衰を伝える一大叙事詩

■■ 転送歓迎 ■■ No.2896 ■■ R01.08.23 ■■ 7,761部■■

歴史の舞台が、平安王朝の女流文学が描いた宮廷生活から全国に及ぶ武士の争乱の世界にうつるとともに、文章もまた力強い男性的文体を生み出している。ここで扱われた民族の深刻な動乱の体験は、大叙事詩としてまとめられ、後に生くるものの精神、情緒に消えがたい感銘を与えた。『平家物語』は、単なる軍記物ではなく、その範疇を超えた我々われの誇るべき民族の傑作であり、『古事記』と共にわが国の二大叙事詩の一つと言われる。

 胆力・人情味を兼備した源氏の豪勇の士熊谷次郎直実との一騎打ちに敢然と応じた敦盛は、直実に組み伏せられるが、敦盛は誇りを失わず、助命の好意を拒否する。直実は、名乗る時点から最後まで、大将軍と思しき若者に対して敬語を使い続ける。両者の遣り取りは、簡潔に情緒深く表現され、『平家物語』の自眉といわれる。
わが子と同じ年頃の敦盛を心ならずも討ったことが直実の心に苦しみとなり、世の無常を感じ、出家を決意するようになる。ここでは、武士としての衿持、高貴なものへの礼節、敗者への思いやりなどの精神が余す所なく描写されている。

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熊谷、涙をはらはらと流(なが)いて、「あれ御覧候へ。いかにもして助け参らせんとは存じ候へども、御方の軍兵雲霞の如くに満ち満ちて、よも逃し参らせ候はじ。あはれ、同じうは、直実が手にかけ奉つて、後の御孝養をも仕り候はん」と申しければ、「たゞ何様にも、とうとう首を取れ」とぞ宣ひける。
熊谷、あまりにいとほしくて、いづくに刀を立つべしとも覚えず。日もくれ心も消えはてて、前後不覚に覚えけれども、さてしもあるべき事ならねば、泣く泣く首をぞかいてげる。
「あはれ、弓矢取る身ほどくちをしかりける事はなし。武芸の家に生まれずば、なにしに、たゞ今かゝる憂き目をば見るべき。情なうも討ち奉つたるものかな」と、袖を顔におし当てて、さめざめとぞ泣き居たる。

熊谷は涙を流しながら、「お助け申し上げようと思いましたが、あのように多くの兵がやってきていますので、きっとお逃げにはなれないでしょう。同じことなら直実の手におかけ申して、後世のためご供養致しましょう」と申したところ、「たゞもういか様にも、早くこの首を取れ」とぞおつしゃった。
熊谷はあまりにもいたわしく感じ、どこに刀を立てたらいいか分らず、日も曇り心もすっかり失せて、どうしていいか分からなくなったけれど、いつまでもそうしていられないから、泣く泣く首をかっ切った。
「ああ、弓矢をとる武士ほど情けないものはない。武士の家に生まれなければ、このような辛い目に会うことはないものを。情けなくも討ち取ったるものかな」と嘆き、袖を顔におし当ててさめかヽと泣いた。


1. 國武忠彦『語り継ごう 日本の思想』、明成社、H27
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/479421426X/japanonthegl0-22/

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