Wing-Mel No.803 海洋国家日本の21世紀地政学戦略(4)(山本英祐・江田島孔明)
発行日:3/22
■■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル ■
海洋国家日本の21世紀地政学戦略(4)
◆新冷戦時代『封じ込め政策』の復権◆
国際戦略研究者・山本英祐/地政学研究者・江田島孔明
■ No.803 ■ H16.03.22 ■ 7,443部 ■■■■■■■■■■■■■
今回はこのシリーズのメインテーマである、「新冷戦時代の
封じ込め政策」を「環太平洋連合」
(http://www.boon-gate.com/12/)の著者であり最初に戦略的
地政学議論のブームを起こした立役者の江田島孔明氏と徹底的
に研究・分析して行きたい。
■先制攻撃ではなく中国・ロシアの『封じ込め政策』にアメリカは軌道修正すべし■
(山本英祐)
アメリカの戦後冷戦時代の基本戦略は『封じ込め戦略』でし
た。これによりアメリカは勝利したのでした。
アメリカは中東イスラムへの先制攻撃戦略ではなく、中国・
ロシアを主敵とした『封じ込め政策』に軌道修正すべきです。
すなわち”ケナンやスパイクマンの現実主義的外交政策に立
ちかえれ”ということです。
中東などのユーラシア大陸国家への先制攻撃は軍事的リスク
が高く、中東・アジアの他地域で同時紛争が発生すればアメリ
カですら制御が困難となります。
すなわち、バランス・オブ・パワーによる軍事的包囲網構築
と対共産圏への経済封鎖措置を主体とする勝利です。
この『バランス・オブ・パワー』の地政学における理論的な
支柱は、ニクラス・スパイクマン(*)による『リムランド理論』
です。
またソ連・東欧共産圏封じ込め政策はジョージ・ケナンによ
り提唱され実際に遂行されました。 彼は地政学者ではありま
せんが、現実主義的外交政策を提唱した外交官であり国際政治
学者です。
*ニクラス・スパイクマンNicholas J.Spykman
(1893-1943)アメリカ人 地理学者、地政学者
スパイクマンは、ランドパワーとシーパワーの境界に位置す
る地域をリムランドと呼びこの地域の地政学上の重要性を主張
しました。特にリムランドの中でも海上に位置する英国と日本
は軍事的に極めて重要な位置にあると主張しました。
そしてハートランドを取り囲むリムランドの国々と同盟し、
ハートランドの勢力と対峙すべきであり、「リムランドを制す
るものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界を
制す」と主張したわけです。
アメリカはリムランド諸国と同盟関係を構築しパワーバラン
サーとして、ユーラシア大陸における覇権国家の膨張を抑止す
べきであるという優れた理論です。
一方、ジョージ・ケナンは1947年、フォーリン・アフェ
アズにXというペンネームで、「ソビエトの行動の源泉」と題
された論文を投稿しました。この論文は忽ち大きな反響を呼び、
(いわゆる”X論文”)外交論文としてあまりに有名です。
即ち、ソ連自身の内部矛盾により将来における崩壊を予言し、
ソ連に対抗するための有効な手段として封じ込め政策を打ち出
したわけです。
戦後の冷戦において、アメリカはユーラシアを囲い込む地域
すなわちリムランド(Rimland)に位置する国々と軍事同盟条約
を結びユーラシア中央部に位置するソ連・東欧の共産圏を『冷
戦』という形で封じ込め、結果的に崩壊させることに成功した
わけです。
これにより戦後アメリカは、地政学者ハルフォード・マッキ
ンダー(*)によるハートランド理論、すなわちユーラシアのラ
ンドパワー優位の理論を完全に否定することができたわけです。
これはとりもなおさず、ニクラス・スパイクマンのリムランド
理論やケナンの封じ込め政策の有効性が実践で証明されたわけ
です。
*サー・ハルフォード・マッキンダー
Sir Halford J. Mackinder
(1861-1947)英国人。弁護士、地政学者、下院議員
主な著作:「英国と英国の海」(Britain and the British Seas)
ここでいうリムランドとの同盟とは、ユーラシア西側では、
西欧諸国、トルコなどを含めたNATOであり、東側では、日
本や韓国との同盟です。
これによりアメリカ・英国といったアングロサクソン海洋国
家勢力は、ユーラシア外延部の欧州と、ユーラシア東端のリム
ランド重要国である日本等による「ユーラシア包囲」同盟を形
成しました。
そしてユーラシア大陸ハートランドに位置するロシアとその
衛星国家(東欧)そして中国を封じ込め、バランス・オブ・パ
ワーで世界平和を維持しソ連崩壊に成功したわけです。
■アメリカの中東戦争介入は戦略的大失敗■(江田島孔明)
何故アメリカはイラク攻撃直接のような下策をとったのか?
思うに国防総省や国務省もバカではない限りこうなることは
予想してたと思います。しかし、彼らにはイラク戦争に突っ走
る理由があったのです。
その理由は大きく二つであり、一つはイスラエルの安全保障
(ユダヤとイスラムの出生率の差から長期的にはユダヤ人国家
として維持できないことが明白なため、周辺国直接支配を狙っ
た)、もう一つは石油直接支配による決済通貨をドルからユー
ロへ移行させないこと、つまりドル機軸体制維持です。
果たしてこの目的は戦争によって達成されるのでしょうか?
短期的には達成できても、長期的には維持できないと思います。
日本はそれに備えるべきです。
私は、歴史を学んだ立場から、ユーラシアの「ハートランド」
を志向するマッキンダーの理論は誤っており、正しくはリムラ
ンド理論が地政学の指導理論であると考えます。
これは、米ソ冷戦で実証されています。
■中東への介入はアメリカに「ニ正面作戦」、「三正面作戦」を余儀なくさせる■
(山本英祐)
仮にアメリカが、中東とアジアの二つの地域での戦闘を時間
差攻撃で行ったとしても、即ちイラクを安定化させて朝鮮半島
を各個撃破しようとしても、思惑通りには行かないと思います。
中東イスラム諸国はアメリカ軍が中東を睨んでいるときは面
従腹背ですが、アジアなどで戦争が勃発し、アメリカ軍がそち
らのほうへシフトすると、今度はサウジやイラクやイランでテ
ロや紛争が再び激化する可能性が高いと思います。
そして、結果的に、両地域で戦争が火を吹き、アメリカは
「ニ正面作戦」場合によっては「三正面作戦」を余儀なくされ、
最悪の場合には第三次世界大戦へと引火して行く危険な導火線
となると考えます。
それゆえ、今回の中東への介入は大きな戦略的失敗だったと
私も考えます。
アメリカはそれゆえ従来の『バランス・オブ・パワー』理論
と同盟国と協力した封じ込め政策に回帰すべきなのです。
それこそが世界に安定と平和をもたらす唯一の方法です。
特に『中国経済』の強大化と中国の膨張拡大こそがアメリカ
にとっての最大の脅威です。
これを放置しておけば台湾や韓国やASEAN諸国は経済的に中
国に併呑されて行くことになります。
メルマガライターの田中宇や大前研一などの反日売国奴言論
人や「経済売国専門新聞」である日本経済新聞はこれを狙って
いるわけです。
残念ながら現在の日本のリーダーは無為無策でパフォーマン
スだけで生き長らえている小泉政権です。
彼には全く国家戦略とか経済浮揚戦略などはありません。こ
れが現在の日本に取っての『最大の不幸』なのです。
早急に『政界再編』による『救国政権』の樹立が不可欠でしょ
うね。
■アメリカの中東戦争介入が東アジア戦争を不可避にする■(江田島孔明)
日本にとっての最大の問題はアメリカが中東への介入のあま
り、東アジアでのパワーバランサーの役割を放棄し、大陸勢力
の中国、韓国、ロシアといった国々との間で衝突の危険が増す
ことです。これは、近未来における東アジア戦争が不可避にな
ることを意味します。そういう事態を避けるためにも、英豪と
連携し、アメリカの中の勢力均衡派、シーパワー派と連携しア
メリカをかってのシーパワーに戻す必要があります。
イラク戦争後、世界のパワーバランスは崩れてます。アメリ
カは世界の安定のためのシーパワーによる海上交通維持(戦力
均衡戦略)より中東直接支配を選択しました。
ランドとシーの二正面作戦は無理がありすぎます。今後の展
開を想定するに、イランとシリアへの攻撃は時間の問題です。
伸びきった戦線を保持するためには核攻撃しかありません。短
期的にはそれで中東を抑えることができても。中長期的にはか
ならず破綻します。モンゴル帝国やアレクサンダーのように。
その破綻に備えて、環太平洋連合
(http://www.boon-gate.com/12/)を英、豪その他海洋国家と
構築する必要があるというのが拙著の主張。これら諸国共同で
制海権を保持する必要があります。
私が見るに、世界はアメリカの衰退から戦国時代を迎える可
能性が高いとの認識が前提にあります。
昨年の火星大接近はこのことを暗示していたかのようです。
火星は軍神マルスの星、すなわち、戦争の時代の始まりです。
イラク戦争への参戦も決まり、戦後日本はこのような環境に無
かったため、あえて、危機に目を向け、豪州や英国との安保上
の連携を主張することが喫緊であると考えたのです。
最大の問題点はアメリカが中東に介入するあまり、東アジア
を中国に譲るという選択をすることです。米中談合で沖縄や台
湾を中国領にするという可能性を懸念すべきです。そうさせな
いために、英や豪と共同でアメリカをかってのシーパワーに戻
す必要があります。事は一刻を争います。そのための枠組みが
環太平洋連合なのです。
そこで、島国日本にとって、安全保障の観点から制海権確保
が重要であり、海洋国家間の同盟を提唱したものです。制空権
だけを持っていても、シーレーンで原油運べませんから。兵員
を含む大規模輸送はいつの時代も船なのです。
■中東と北朝鮮で戦争が起これば第三次世界大戦に発展する可能性が高い■
(山本英祐)
私は過去何度もこの論文で主張しているように、次ぎの中東
戦争の火種はサウジアラビアの「王制倒壊」の可能性が高いと
予測しています。世界第二位の産油国であるサウジの王制倒壊
によるイスラム原理勢力による政権樹立はアメリカは絶対に阻
止せざるを得ないでしょう。
アメリカはサウジの石油地帯を確保するためにサウジへの大
規模な軍事行動を開始せねばならないでしょう。
アメリカがサウジに軍事介入するとなれば、サウジを始めと
する中東で、『イスラム原理勢力vsアメリカ』の図式により泥
沼の消耗戦・ゲリラ戦争が開始されます。
一方、同時期に朝鮮半島で北朝鮮が南侵攻撃あるいは金正日
暗殺などにより政権が内戦状況に陥れば極東における第二戦線
が火を吹きます。
更に、日本における最大の危機は中国との戦争...すなわ
ち『東アジア大戦』です。この場合には日米台湾韓国も巻き込
んだ、核戦争・弾道ミサイル戦争の大規模な応酬に発展します。
中国に進出している日本企業は全滅します。
そしてアメリカが果して無傷でそのニ正面作戦を遂行できる
でしょうか? アジアと中東で同時に全面戦争となった場合、
アメリカは世界の治安維持を果すことは不可能となるでしょう。
そうなれば世界の秩序とパワーバランス大きく崩壊し、今度
は台湾・中国・インド・パキスタンなどの地域紛争が一気に発
火する可能性があるでしょう。
アメリカはそうなれば欧州から大規模に軍事力を撤退させざ
るを得ません。そうなれば、「KGB独裁帝国」化したロシア
が西ヨーロッパを一気に狙える可能性が出てくるわけです。
来るべき第三次世界大戦では少なく見積もっても10億人以上
の人口が消滅する可能性があります。それは戦争や大量破壊兵
器や飢饉や恐ろしい疫病などによる犠牲者です。また核兵器も
アジア・中東。欧州で大規模に使用される可能性が高いです。
我々は決して空想でこんなとを言っているのではなく十分に
政治的・軍事的分析に基づくシミュレーションを行っているの
です。我々には未来が予測できるからこそ現在その危険性をこ
うやって多くの人々に訴えているのです。
日本を取り巻く最大の脅威は『中国』なのです。そして欧州
にとっての脅威はアメリカとの対立によるNATO体制崩壊とそれ
によるユーロ通貨危機と崩壊です。更にその後に来るロシアの
軍事的脅威です。
その結果はおっしゃる様に「軍神マルス」の支配する時代す
なわち、中東戦争であり、アジア大戦であり第三次世界大戦で
す。それは血みどろの宗教戦争でありテロリズムであり資源争
奪戦であり核戦争のホロコーストなのです。そして同時に飢饉
や恐るべき疫病の蔓延や飢餓なのです。
我々はそうした最悪の事態も想定した準備が必要となってき
ています。
<参考資料>
●「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
http://www.melma.com/mag/06/m00045206/
●太田述正の時事コラム
(元防衛庁長官官房防衛審議官のコラム)
http://www.ohtan.net/column/index.html
●環太平洋連合
江田島孔明著
http://www.boon-gate.com/12/
●国際派日本人の情報ファイル
地政学大変動時代:
「日米欧三極同盟」で「中露朝」を封じ込めよ (1)(2)(3)
EUを滅ぼす『ユーラシア連合』という悪夢
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000793.html
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000796.html
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000799.html
●国際派日本人の情報ファイル
『欧州の陽のもとに』(1)、(2)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000693.html
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000696.html
●国際派日本人の情報ファイル
『英国ウインザー王朝の落日』
http://melma.com/mag/56/m00000256/a00000802.html
●国際派日本人の情報ファイル
『3つのローマ帝国(1)』
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000733.html
●国際派日本人の情報ファイル
『3つのローマ帝国(2)』
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000754.html
● 国際派日本人の情報ファイル
「聖書の暗号」中東戦争は回避できるか?
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000636.html
●国際派日本人の情報ファイル
日欧の英知で『アメリカ流構造改革』に変わる新経済規範の樹立を(1)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000742.html
●国際派日本人の情報ファイル
日欧の英知で『アメリカ流構造改革』に変わる新経済規範の樹立を(2)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000745.html
●国際派日本人の情報ファイル
日欧の英知で『アメリカ流構造改革』に変わる新経済規範の樹立を(3)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000748.html
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