Wing-Mel No.768 ザ・ラストサムライ(志永三郎)
発行日:12/25
■■■■■■■■ JOG Wing ■ 国際派日本人の情報ファイル ■
ザ・ラストサムライ
志永三郎(しながさぶろう)
■ No.768 ■ H15.12.25 ■ 7,187部 ■■■■■■■■■■■■
今日(12月11日)、午後から後半休を取ってアポロシネ
マへ行きました。ザ・ラストサムライを見ようと思ったからで
す。今日は平日(木曜日)です。午後1時20分から本日2回
目の上演に照準を合わせて行ったのですが、30分前の12時
50分には今まで見たこともないような長蛇の列が出来ていま
した。アポロシネマは全館完全入れ替え制なので全員が占座で
きるのですが、30分も前からこんなに長蛇の列が出来ている
のは初めてです。
入館して辺りを見回してちょっと驚きました。若い高校生
(男のグループも女のグループも)があちこちに散見できるの
です。どの学校も期末考査中で午後からは学校がないからなの
でしょう(でも明日は金曜日で試験があるのに勉強しなくてい
いのかな)。平日だというのに客層は高校生も含めて若い人が
四分の一はいたでしょう。これが一つの驚きでした。
映画が始まりました。主演のトム・クルーズが屈折した精神
の持ち主として1870年代のアメリカを舞台にして登場しま
す。やがて日本の渡辺謙や真田ヒロユキがスクリーンに現れま
す。それからのストーリーは映画に譲ります。
映画が最終場面に差し掛かりました。隣の婦人がハンカチを
取り出しました。私の頬はそれより先に、すでに、滂沱たる涙
に濡れていました。これは本当にアメリカ人が作ったハリウッ
ド映画なのか。日本人の手による日本映画より感動させてくれ
るではないか。映像の美しさや戦闘シーンの迫力で感動してい
るのではないのです。これがアメリカ映画かと驚嘆せずにはい
られません。つい最近までのアメリカ人による日本描写(妙な
日本や変な日本人)がないのです。それどころか日本の歴史、
伝統・文化そして武士道という哲学までもほぼ完璧に理解した
ような描写がストイックなストーリー展開とともに小気味よく
流れて行きます。何と言うことでしょう。これが二つ目の驚き
です。
主演はオールグレン大尉役のトム・クルーズです。映画は彼
を中心に展開します。ハリウッド映画だから当然です。しかし、
私にはそうは思えません。いま振り返っても勝元役の渡辺謙が
主演なのです。何故か。ラストサムライとしての勝元の台詞が
余りに示唆に富んでいたからです。これは戦後民主主義に毒さ
れた、今の日本人には作れない、本当の本来の日本男児の物語
なのかもしれません。映画館内が上映後数分にして私の小さい
頃の思い出にあるような日本になっていたのです。映画館にい
た観客の誰もが本来の日本人になっていたかのようでした。こ
れが三つ目の驚きでした。
映画が終わって映画館を出ました。ザ・ラストサムライとい
う映画は本当にアメリカ人の手による映画なのか。昔の古き良
き日本を知る日本人が作った映画ではないのか。あんな映画が
本当にアメリカ人に作れるのか。アメリカ人の日本理解は例え
ばスピルバーグのスターウオーズのように、まだまだ完全なも
のだとは私には思えなかったので、今眼前に展開されているラ
ストサムライが驚異に見えました。
帰りの電車の中は、いつもの日本です。あと数十年後には、
李鵬元中国首相が言ったように世界地図から日本という国が消
えてなくなっているのかも知れない、そんな情景が浮かんでく
るようないつもの日本です。
その時です。私の隣にいた人のスポーツ新聞が目に入りまし
た。松井カズオのニューヨークメッツ入団の記事が見えました。
私は、何か悟ったような気持ちがしました。近鉄からドジャー
スに行った野茂投手、オリックスからマリナーズに行ったイチ
ロー選手。そして巨人からヤンキースに行った松井選手。アメ
リカ人は彼らをこの数年間ほぼ毎日のように見てきました。そ
れ以前からも、アメリカの知識人の中には、ライシャワーやド
ナルドキーンなどのような知日派と言われる人の日本紹介があ
りました。
しかし野茂やイチローはアメリカの何千万という一般大衆が
日々目の当たりにしているのです。野武士のような野茂の風貌
とその寡黙さ、剣の達人を思わせるサムライ・イチローの居合
い切り一閃のバットコントロール、そして常に沈着冷静な松井
選手の礼儀正しさ。アメリカ人は毎日彼らを見ているのです。
特集番組やニュースで見る一瞬の日本ではなく、紛れもない日
本人の実際をアメリカ人たちはこの数年間見てきたのです。
ザ・ラストサムライはアメリカ人のアメリカ人によるハリウッ
ド映画です。アメリカは一部の政治家や経済人・学者ではなく
大衆段階で日本を知りつつあるようです。
それはこの映画の冒頭でトムクルーズ扮するオールグレン大
尉がインディアンの部落を急襲し、頻りに無辜を殺戮するシー
ンがあります。あのような描写は見たことがありません。日本
に対して東京大空襲や広島長崎への原爆投下を思わせるような
シーンです。アメリカの大衆はあのシーンだけは見たくはない
でしょう。この映画はアメリカでは好不評入り交じることでし
ょう。いわばアメリカ版自虐史観的要素のある映画です。日本
と日本人を美化こそすれ醜悪に描いた部分は殆ど皆無です。
家に帰って夕刊に目を通すと、「凶悪事件の少年被疑者 顔
写真を公開も」と言う記事が一面に出ていました。テレビを付
けるとNHKがイラクへの自衛隊派遣を珍しくも中立的に報道
していました。日本もサムライの時代の面影を取り戻しつつあ
るのかな。映画を見てきた後なのでそんなことを思ったりしま
した。日本人は、湾岸戦争以来徐々に覚醒し出してきました。
数年前から本屋に並ぶ本が変わってきました。小林よしのりの
「戦争論」以後急に加速が付いてきました。そして誰もが言う
ように昨年の九月十七日以来の「拉致事件」で決定的になりま
した。一方アメリカでも日本のアニメや日本の文化が話題にな
って来ました。そして映画ラストサムライを見て、それが日本
人大リーガーたちの活躍によるのではないかと思えてきました。
今の日本はまさに幕末のような雰囲気です。勤王佐幕や尊皇
攘夷を唱えて大混乱に陥った幕末日本を見ているようです。絢
爛豪華な元禄文化(=昭和のバブル時代)に浮かれ、パックス
トクガワーナ(徳川三百年の太平の世=戦後の反戦平和、一国
平和主義)が染みついた、そしてニヒリズムとシニカルな一面
を持つ化政文化(=平成の自虐日本時代)の後の世界動乱の時
代(東アジアへの欧米列強進出=イラク戦争での世界の混乱、
そして日本の混乱)、まさに歴史は繰り返すです。幕末から明
治の幼年期、日本人の多くは恐らく数年後には日本と言う国は
なくなっていると思ったのではないか。そして今日の日本、同
じ思いが脳裏を過ぎる人は少なくない。
しかし、今日の映画を見て勇気が湧いて来ました。勇気を与
えてくれたのがハリウッド映画だというのが何だか妙に引っか
かりますが。
映画のラストシーンで明治大帝が次のように毅然と胸を張っ
てこのように言います。
「日本は技術と大砲と洋服を手に入れた。しかし、歴史と伝統
と文化を同時にしっかりと守って行かねばならん。朕の思いは
そこにある」
イラク戦争や北朝鮮に対してふらつく日本に対する「日本よ
しっかりせんか」というアメリカの強烈なメッセージなのか、
野茂やイチローを輩出する素晴らしい国日本という賛美なのか。
いずれにせよ色んなことを考えさせてくれる映画に違いありま
せん。
-----------------------------------------------------------
購読申込・既刊閲覧: http://come.to/jogwing Mail: jog@y7.net
購読解除: http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/quit_jog.htm
Japan on the Globe 国際派日本人養成講座 http://come.to/jog
広告募集: http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jog/jog_pr.htm
-----------------------------------------------------------
最新の記事
このメルマガもおすすめ
-
Japan on the Globe 国際派日本人養成講座
- 最終発行日:
- 2013/05/19
- 読者数:
- 13174人
日本に元気と良識を。歴史・文化・政治・外交など、多方面の教養を毎週一話完結型でお届けします。3万8千部突破!
-
月刊アカシックレコード
- 最終発行日:
- 2013/05/16
- 読者数:
- 17735人
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家が、政官財界の分析にも進出し、宣伝費ゼロで読者19,000人を獲得。2009年9月から月刊化。
-
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- 最終発行日:
- 2013/05/21
- 読者数:
- 20157人
評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
-
頂門の一針
- 最終発行日:
- 2013/05/21
- 読者数:
- 5191人
急所をおさえながら長閑(のどか)な気分になれる電子雑誌。扱う物は政治、経済、社会、放送、出版、医療それに時々はお叱りを受けること必定のネタも。
-
甦れ美しい日本
- 最終発行日:
- 2013/05/17
- 読者数:
- 7057人
日本再生のための政治・経済・文化などの発展・再構築を目的とし、メールマガジンの配信を行う
発行者プロフィール
過去の発行記事
- 2003/12/29
- 2003/12/26
- 2003/12/25
- 2003/12/24
- 2003/12/22
- 2003/12/19
- 2003/12/17
- 2003/12/15
- 2003/12/12
- 2003/12/10
- 2003/12/8
- 2003/12/5
- 2003/12/3
- 2003/12/1
- 2003/11/28
- 2003/11/26
- 2003/11/24
- 2003/11/21
- 2003/11/19
- 2003/11/17
- 2003/11/14
- 2003/11/12
- 2003/11/10
- 2003/11/7
- 2003/11/5
- 2003/11/3
- 2003/10/31
- 2003/10/29
- 2003/10/27
- 2003/10/24
- 2003/10/22
- 2003/10/20
- 2003/10/17
- 2003/10/15
- 2003/10/13
- 2003/10/10
- 2003/10/8
- 2003/10/6
- 2003/10/3
- 2003/10/1
- 2003/9/29
- 2003/9/29
- 2003/9/24
- 2003/9/22
- 2003/9/19
- 2003/9/17
- 2003/9/15
- 2003/9/12
- 2003/9/10
- 2003/9/8
- 2003/9/5
- 2003/9/3
- 2003/9/1
- 2003/8/29
- 2003/8/27
- 2003/8/26
- 2003/8/25
- 2003/8/22
- 2003/8/20
- 2003/8/18
- 2003/8/15
- 2003/8/13
- 2003/8/11
- 2003/8/8
- 2003/8/6
- 2003/8/4
- 2003/8/1
- 2003/7/30
- 2003/7/28
- 2003/7/25
- 2003/7/23
- 2003/7/21
- 2003/7/18
- 2003/7/16
- 2003/7/14
- 2003/7/11
- 2003/7/9
- 2003/7/7
- 2003/7/4
- 2003/7/2
- 2003/6/30
- 2003/6/27
- 2003/6/25
- 2003/6/23
- 2003/6/20
- 2003/6/18
- 2003/6/16
- 2003/6/13
- 2003/6/11
- 2003/6/9
- 2003/6/6
- 2003/6/4
- 2003/6/4
- 2003/6/2
- 2003/5/30
- 2003/5/28
- 2003/5/26
- 2003/5/23
- 2003/5/21
- 2003/5/19
- 2003/5/16
- 2003/5/14
- 2003/5/12
- 2003/5/9
- 2003/5/7
- 2003/5/5
- 2003/5/2
- 2003/4/30
- 2003/4/28
- 2003/4/25
- 2003/4/23
- 2003/4/21
- 2003/4/18
- 2003/4/16
- 2003/4/14
- 2003/4/11
- 2003/4/9
- 2003/4/7
- 2003/4/4
- 2003/4/2
- 2003/3/31
- 2003/3/28
- 2003/3/26
- 2003/3/24
- 2003/3/21
- 2003/3/19
- 2003/3/18
- 2003/3/18
- 2003/3/17
- 2003/3/14
- 2003/3/12
- 2003/3/10
- 2003/3/7
- 2003/3/5
- 2003/3/3
- 2003/2/28
- 2003/2/26
- 2003/2/24
- 2003/2/21
- 2003/2/19
- 2003/2/17
- 2003/2/14
- 2003/2/12
- 2003/2/10
- 2003/2/7
- 2003/2/5
- 2003/2/3
- 2003/1/31
- 2003/1/29
- 2003/1/27
- 2003/1/24
- 2003/1/22
- 2003/1/20
- 2003/1/17
- 2003/1/15
- 2003/1/13
- 2003/1/10
- 2003/1/8
- 2003/1/6
- 2003/1/3
- 2003/1/1



