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JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

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Wing-Mel No.430 民主主義を疑ふ (4)

2001/11/26

 _/          _/  _/                      民主主義を疑ふ (4)
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_/    _/    _/  _/  _/    _/  _/    _/                YoJirou
 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H13.11.25 4,867部
 _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/         JOG Wing No.430
                                _/     国際派日本人の情報ファイル
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■現代人は他者を愛しうるか■

■愛する心を殺してしまふ

     最後にロレンスが提出した問ひはかうである --- 現代人は
    たして他者を愛しうるか、個人と個人はいかにして結びつきえ
    ようか。ロレンスの答は否定的である。個人はつひに愛するこ
    とができぬ。個人は、キリスト教徒は、民主主義者は、つひに
    他者を愛しえない。近代の男女は個人として以外に自分自身の
    ことを考へえない。共に仰ぎ見る何ものも持たぬのだ。故に彼
    らのうちにある個性は、自分のうちにある愛し手(他人を愛す
    る心)を殺さねばやまぬ運命にある。といふことは、愛する対
    象を殺すといふことではなく、個性を主張することによつて、
    自己のうちにある愛し手を殺すといふことなのだ。

     もつと分かりやすく説明すると、近代人は個人として以外自
    分のことが考へられない以上、たがひに愛しあはうと努力すれ
    ばするほど、他人を支配しようとする我意が現れてくるか、さ
    もなくば相手に底の底までしぼりとられ、つひには個人の死を
    招来するか、いづれかである。個人は何としても己れの立場を
    堅持していかなければならぬものである以上、底の底までしぼ
    りとられてはたまらぬので、愛はつひに抵抗とならざるをえな
    い。そして最後には抵抗のみ残つて愛は消滅してしまふ、とい
    ふのである。このことは個人間の愛情のみにかぎつたことでは
    ない。現代のすべての愛と名のつくものに通じるものである。

     人々は何故、人間は本来権力欲、支配欲を持つたものだとい
    ふことをはつきりと是認しないのか。黒を黒だとはつきり宣言
    しないで、自分たちのうちにある権力欲、支配欲を愛他思想で
    くるんでしまふから、ぬぐひ難く己れの中に巣食つてゐる権力
    欲が歪んで陰惨なものとなるのである。歪んだ個人々々の権力
    欲でこの世の愛を滅ぼすよりは、きつぱりと虚偽の立場をかな
    ぐり捨て、カをカとして認めようではないか。そして現在のや
    うな苦悶と不幸のかはりに、平静と幸福を与へてくれるやうな
    自己の概念を見いださうではないか、といふのがロレンスの主
    張するところである。これで一応「アポカリプス論」は終つた
    のであるが、もう少しロレンスの思想を説明することによって
    民主主義批判をしてみよう。

■平面的世界よりも立体的世界■

■力と愛

     ロレンスには相互に関連した二つの根本的思想があるやうに
    思ふ。その一つは、現代人は男女の関係のみならず、総じてあ
    らゆる相互問の信頼と結びつきを失つてしまつてゐる。それを
    回復するには、すべての結合の根本である自然の根源的生命と
    の結合を求めなければならない。そしてそのための一番容易な、
    また一番本質的な通路は男と女の結びつきであつて、これが不
    可能であつたならば、友人の間にも、社会にも国家にも階級間
    にも、また民族と民族との間にも真の平和は訪れないであらう
    といふことである。ロレンスの重要な思想の他の一つは、いま
    まで書いてきたことであるが、権力はどんなに否定したところ
    で厳然として存在するのであるから、愛他思想でくるんだりせ
    ず、カはカとしてはつきりみとめよ。さもなくば権力欲は抑圧
    されて陰惨なものとなり、つひにはこの世の真の愛を殺してし
    まふ。その結果人間相互の信頼と結びつきを失つてしまふので
    ある、といふ具合にしてはじめ述べたことと関連を持つてくる。
    以上の説明によつてロレンスにおいては、愛とか信頼といふこ
    とが何故「権力」、「カ」といふことと密接な関係をもつてゐ
    るかが分るのではあるまいか。

■平面の世界

     このことを図式的に説明すると次のやうになる。いつさいの
    「力」、「権力」といふものを否定する「民主主義」の世界は
    平面の世界である。この世界では人々は下を向いて這ひずりま
    はつてゐる。そして絶えず誰かこの平面から飛び上りはしない
    かとお互に警戒し合つてゐる。自我の責めぎ合ひである。この
    世界で他人とつながるといへば、自分のすぐそばにゐる隣人と
    つながることしか意味しない。隣人との縁が切れれば、その向
    うにゐる多数の他人とはどうにもつながりやうがないのである。
    さうなれば個人はそれぞれ孤立してしまふ。さみしくてたまら
    ないといふことになる。そこで「団結」といふことが流行るや
    うになる。そこにおいては利害関係でお互いがからうじてむす
    ばれてゐるので、自分のさみしさを誤魔化すことができる。
    「団結」の流行る所以(ゆえん)である。

■立体の世界

     これに反して力を力としてみとめる世界といふのは、平面の
    上空に一点をみとめた立体的な世界である。この世界では人々
    は胸を張り、上を仰いで歩いてゐる。すでに皆のみとめた上空
    の一点が存在するので、人々はこの一点の下に平等と考へるこ
    とができ、個人個人が自己の存在を卑屈に考へない。ロレンス
    流にいへば、臣民(subject)として平等だからである。個人個
    人がそれぞれの立場で充足してゐる。人々は上空の一点を讃仰
    し、忠節を捧げることによつて大きな愉悦と昂揚感をおぽえ、
    自己の権力欲を昇華する。またこの世界では上空の一点とつな
    がりを持つことによつて、各個人はそれぞれの隣人を跳び越え
    て、遠く広く、他の多くの人間とつながることができる。通信
    衛星を通じて地球の端と端がつながるやうなものである。

■ダイナミックな結合

     ここまで書いてくればロレンスの次のやうな言葉は案外素直
    に理解できるのではなからうか。

        「個々の人間は各々独自な個性的な自己完成をとげねばな
        らぬ。--- まさにそのとほり。だが、如何(いか)にし
        て? 他の人間との生けるダイナミックな結合を通じて、
        --- これもまさにそのとほり。だが如何なる種類の生きた
        ダイナミックな結合なのか。結合は結合でも、愛の結合で
        もなければ、組合のそれでもなし、平等による結合でもな
        い。来るべき結合は、計量しがたい信頼と責任とによる人
        と人との結合、奉仕と統率 (leadership) 、服従 (obedie
        nce)と純然たる権力による結合でなければならぬ。そして
        それは円錐形の貴族政--- 社会がピラミッドのやうに次第
        に先が細くなつて絶対至上の一指導者に至るといふ組織 
        --- でなければならぬ。これは現代においては非常に不愉
        快に聞こえる。だが愛と精神とデモクラシーとのこの時代
        に、吾々が学んだ貴重な教訓を土台にしてこそ、新しい秩
        序を建てうるのである」。

     ロレンスはこれを書いたとき、誰も真剣に聞いてくれるもの
    はゐないであらうと絶望しゐる。だが分かる人は分かつてくれ
    るだらうと一条の期待をもいだいてゐた。これは吾々に残され
    た義務といへないであらうか。

■日本の国体(国のありやう)再認識を

     戦後の日本では「民主主義」とは絶対至上の道徳律のごとき
    観を呈し続けてきた。だが以上ずつと見てきたとほり、近代民
    主主義の本家、本元のやうにいはれる英国においてすでに「民
    主主義」に対する根本的懐疑が提出されてゐるのである。吾々
    は、かくのごとく根本に大きな疑惑を蔵した「民主主義」の表
    面のみをみて、わが国歴史の命脈を乱すやうなことがあつては
    ならない。

     ロレンスは「民主主義」の害悪を糾弾し、その害悪から救済
    されるにはどうしたらよいか叫び続けた。それは絶望的な叫び
    であつた。誰もまじめに耳を傾けてくれるものはゐないであら
    うと絶望しながら、それでもなほ叫ばずにはゐられなかつたの
    である。

     だが吾々日本人は、わが国建国以来の祖先の大いなる知恵を
    吾々自身がよく理解しうるやうになつたあかつきには、ロレン
    スの糾弾し続けた害悪から逃れうる可能性が残されてゐるので
    はなからうか。今こそ吾々は浅薄なる「民主主義」の議論にふ
    りまはされることなく、日本人の父祖の知恵に深く思ひをいた
    すときではないか。 (完)

(昭和42年) (1968)

■編集者・YoJirouより■

     この小論を通して、当時の筆者(21歳)が言いたかったこ
    とは、天皇、皇室を戴いた日本の国体(国のありよう)を再認
    識し、護っていかなければならない。それを「民主主義」とい
    う名分でないがしろにしたり、なきものにしては絶対いけない
    ということであった(当時荒れ狂おうとしていた、共産党等左
    翼への警鐘であった)。しかも、それを単なる政治論にしない
    で、少し深く追究してみたかった。しかし、当時の時代の空気
    や自分の勇気の問題でずばり明言することをはばかったため、
    分かりにくい人もあったことと思う。自分ではこの小論はまっ
    たく古くなっていない、むしろ益々新しい問題となるであろう
    と思っている。最後まで付き合っていただいた方ありがとうご
    ざいました。

【関連】
『民主主義を疑ふ (1)』 YoJirou JOG Wing No.420 (H13.11.05)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000426.html
『民主主義を疑ふ (2)』 YoJirou JOG Wing No.423 (H13.11.12)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000429.html
『民主主義を疑ふ (3)』 YoJirou JOG Wing No.427 (H13.11.19)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000433.html
【参考】
 『民主主義・再考』(JOG No.213 H13.10.28)
http://macky.nifty.com/cgi-bin/bndisp.cgi?M-ID=0367&FN=20011028001206

【福田恆存氏 参考サイト】
福田恆存 關聯情報
http://www.d1.dion.ne.jp/~tnozaki/FUKUDA/
『反近代の思想』
http://www.d1.dion.ne.jp/~tnozaki/FUKUDA/hankindai.html
from D.H.Lawrence, Apocalypse
http://ps200web.gpwu.ac.jp/~todok/apocalypse.html

◆11月25日は『憂国忌』、三島由紀夫氏の命日でした。
 私の三島由紀夫論を読んでみてください。
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000259.html

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