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JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

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JOG Wing(Melma!) No.0349 亡国の予兆? アノミー蔓延

2001/06/11

 _/          _/  _/                      亡国の予兆? アノミー蔓延
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_/    _/    _/  _/  _/    _/  _/    _/                YoJirou
 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H13.06.11 4,328部
 _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/         JOG Wing No.349
                                _/     国際派日本人の情報ファイル
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     少年による凶悪事件や児童虐待が深刻化する中、警察庁は5
    日、東京・霞が関の同庁で「全国少年課長・少年対策室長会
    議」を開き、田中節夫長官は「社会を震撼させる特異・重大事
    件が相次いで発生するなど誠に憂慮すべき状況にある」と訓示、
    関係部門・機関との連携を緊密にした対策や徹底した捜査を強
    力に推進するよう求めた。

     田中長官は少年による凶悪事件について、「動機がはっきり
    しないケースや周囲の人から『普通の少年』とみられていた少
    年が突然引き起こしたケースが多い」とした上で、「前兆段階
    で何らかの手を打つチャンスがあった」と指摘。全国に設置さ
    れている「少年サポートセンター」を中心に家庭や学校と連携
    し、地域における少年非行の防止対策を推進するよう指示した。
    (産経新聞6.6)

     駅構内やホームでの暴行や傷害事件が多発していることから、
    警察庁は6日、鉄道警察隊や機動隊、自動車警ら隊などによる
    駅の警戒を強化するよう全国の警察本部に通達した。

     警察庁によると、鉄道施設内で発生した暴行や傷害事件など
    粗暴犯は96年の1306件から昨年は2377件に増加。今
    年1〜4月も715件で、前年同期(578件)の約1・2倍
    となっている。(毎日新聞 6.6)

     8日午前10時15分ごろ、大阪府池田市緑丘1丁目の大阪
    教育大学付属池田小学校(山根祥雄校長、688人)に男が乱
    入し、児童に刃物で切りつけた、と学校関係者から110番通
    報があった。教諭3人を含む29人が刺され、児童8人が死亡
    した。男はかけつけた警察官に殺人未遂容疑で現行犯逮捕され
    た。男は「何もかも嫌になった。死にたい。死刑にして欲し
    い」と言っているとか。

■ 編集者・YoJirouより ■

■後世はどうみるか

    「ドイツ歴史学の泰斗ランケが言うがごとく、世界史の大事件
    が起こった時点においては、誰もその、致命的重要性には気づ
    かないものなのだ。大革命の予兆も、後世の歴史家にとっての
    世界史的大事件さえも、すべての人にとって、日常生活におけ
    るちょっとした物珍しい事件に過ぎないのである」。(小室直
    樹氏)

     いま日本は、後世の史家があのころが亡国の始まりだったと
    いうような状況になってはいないであろうか。

     二十年ほど前から、異色、異能の学者小室直樹氏が「あなた
    も息子に殺される」(著書名)と警告を発していた。当時、ほ
    とんど注意を払うものもなく、また小室氏が大言壮語をしてい
    るという程度にしか見られなかった(わずか二十年前はまだそ
    の程度の認識で、まだまだ治安大国日本という感じであった)。
    小室ファンの私でさえ、当時の読後感に「小室氏の分析は深い
    学識に裏付けられた鋭い分析だが、何かマユツバ的感じを受け
    る。今後を注意しながら見ていこう」と書いているくらいだ。
    だが、今になってみれば、小室氏の予言も生ぬるく感じるほど
    の凶悪犯罪、異常犯罪の多発である。「息子に殺される」など
    は珍しくもなく、「娘に殺される」、「目が合ったら殺され
    る」、「何の関わりもないのに殺される」時代にさえなってい
    る。小室氏はこの予兆をアノミーという観点から読みとってい
    た。以下、小室氏に沿って考えてみる。

■アノミーとは何か

     アノミーとは何か。無規範、無秩序などと訳されるが、真の
    意味は無連帯である。この考え方は、最初、社会学者の元祖デ
    ュルケームによって用いられた。デュルケームは、連帯こそ、
    人間にとっていちばん大切なことと説く。人びとの間の連帯は、
    社会にとって必要なだけでなく、各個人にとっても、このうえ
    なく重要である。連帯を失ったら最後、まったく正気な人でも
    メチャメチャ凶暴になる。これがアノミーである。アノミーは
    いかなるコンプレクスよりも強く人の行動を支配する。

     「連帯の中にいなければ、人間は人間としての生活を営めな
    い。連帯こそ人間生活の基礎だ。連帯からはずされると、人間
    は身の置き場がなくなってしまい、混乱の極に達する。それが
    アノミーだ」(デュルケーム)

     デュルケームは自殺の研究をしているとき、このことを発見
    した。不況、恐慌のとき自殺が増えるのは誰にも想像がつくが、
    景気の急上昇期、大繁栄の時代にも自殺者が急増するというこ
    とであった。急に生活水準が上がることは、急に貧乏になった
    のと同様、当人には耐え難いことがある。規範を異にする階層
    に上がるということは実に大変なことなのである。なかなか溶
    け込めず連帯感がなくなってしまう。

     「連帯」とはなんだろうか。分かりやすいモデルとしてイス
    ラムがある。コーランは、一生の間に、余裕があるかぎり一度
    はメッカにハッジ(巡礼)に行くようにすすめている。最近N
    HKでもやっていたが、ハッジでメッカに来た人たちは、身分、
    貧富、国籍、肌の色の違いの区別なく、まずテントに落ち着く。
    そこには「連帯」がある。イスラムの人びとに最初から連帯が
    あったわけではない。アラーというひとつの「権威」を共有す
    ることによって連帯が生ずる。はじめに権威ありきである。権
    威という言葉は、本来の意味は「正統性をつくる」ということ
    である。

■権威の喪失

    「権威」は、連帯を与えるだけでなく、規範もまた与えるので
    ある。連帯している人びとに同一の規範を与える。何が正しく
    て、何が正しくないか、「権威」がそのことを教えてくれるの
    である。権威がないと、これが教えてもらえなくなり、何が正
    しいことで、何が正しくないことか、わけがわからなくなって
    しまう。「倫理」「道徳」と言ってみたところで、何が「倫
    理」で何が「道徳」かが分かっていなければどうしようもない。
    これが「無規範」である。このようにアノミーはかならず無規
    範を生む。権威というものはこれほどまでに重要なのである。

    「アノミー」は無連帯状態であり、「権威」が失われることに
    よって起こる。そしてアノミーは無規範状態を生む。

    「無規範」という場合、二つ考えられる。規範は現存するが守
    らない者が出てきたというのがひとつ。これは程度問題であり、
    いつの世にもあることで、比率が問題になる。もうひとつは、
    規範そのものが融けてなくなる場合だ。このふたつは本質的に
    まったく違う。規範が融けてしまっているということになれば、
    是非善悪の区別がまるでなくなる。百鬼夜行だ。アノミーが生
    む無規範のうちでこれが特に恐ろしい。これもすべて「権威」
    の喪失から起こる。

■戦後日本の向かった方向

     以上、まさしく、敗戦後五十数年、日本の歩んできた方向で
    はなかろうか。やっと今になって、誰の目にも見えかけてきた。
    変化が起こらないはずはない。

     エッセイストで共立女子大教授の木村治美氏はあるインタビ
    ューで次のように語っている、

        ― 人間関係の中で最も濃密であるはずの親子関係までも
        希薄になっている。

        「それは、今現時点の家族だけではなくて、祖先の綿々と
        した血脈の中での自分のとらえ方がなく、ポツンと個人と
        しての自分が存在しているかのようなとらえ方こそ、現代
        のおける非常に大きな問題と思います」。

     これ、まさにアノミーの根元とも言える。

     この先にはやがて「天皇」という問題、「人権」という問題
    が見え始めるだろう。この問題についてはまたの機会に掘り下
    げてみたいと思う。

■ 参考 ■
1. 小室直樹「あなたも息子に殺される」(太陽企画出版) 昭和57年
(1982)7月刊
2. 小室直樹「偏差値が日本を滅ぼす」(光文社) 昭和59年(1984)2月刊

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