国際情勢

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。

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JOG Wing No.0325 by melma!

2001/04/20

 _/          _/  _/                     フェミニズムから公共道徳へ(2)
 _/          _/      _/_/_/      _/_/_/            ほそかわ・かずひこ
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 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H13.04.20 4,184部
 _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/         JOG Wing No.325
                                _/     国際派日本人の情報ファイル
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◆反省の中から共同体の重視へ

     1980年代、レーガン大統領のもとで、それまでのデュー
    イによる個人主義的・自由主義的な教育論の弊害が反省され、
    道徳教育ルネッサンスが起こりました。一夫一婦制の伝統的家
    庭を強化する運動が、草の根レベルで広がりました。また、共
    同体主義(コミュニタリアニズム)が、理論的な影響力を持つ
    ようになりました。

     共同体主義は、自由主義(リベラリズム)に対抗する思想・
    運動です。ホッブズ・ロックに始まる自由主義は、個人の自由
    や権利を重視します。これに対し、共同体主義は、家族や社会
    などの共同体(コミュニティ)の公益を重視します。19世紀
    以降、自由主義が、物事の良し悪しの基準を、快楽か苦痛か、
    効用があるか否かに置く功利主義と結合しているのに対し、共
    同体主義は、社会の秩序や正義など伝統的な価値観を尊重しま
    す。

     1980年代のアメリカでは、自由主義に対する共同体主義
    の論争が行われました。そして、共同体主義は、社会的に注目
    されるようになりました。それは、アメリカの社会に、自由や
    権利一辺倒の個人主義的な価値観への反省が起こってきたから
    です。それまでのあり方は、社会の必要よりも個人の欲求、全
    体的な公益よりも個人的な利益、共同体よりも個人の自由を重
    視するものでした。このあり方に、不満や疑問を持つ人々が増
    えてきたのです。そこへ、「個人の権利と責任のバランスをと
    れ」「道徳を回復せよ」「コミュニティを復権させよ」という
    共同体主義者の声は、受け入れられていきました。いわば「公
    と私」のバランスを回復しようという動向です。

     この新しい共同体主義は、人間を「間柄的存在」ととらえる
    和辻哲郎の倫理学や、歴史・伝統に基づく道徳の回復を訴える
    西部邁の「国民の道徳」などに、通じるところがあると思われ
    ます。

◆道徳回復運動の広がり

     1992(平成4)年、レーガン=ブッシュと続いた共和党
    政権に代わって、民主党のクリントン政権が誕生しました。
    その翌年、ウイリアム・ベネットが、「徳の本」(The Book o
    fVirtues)を出版しました。ベネットは、レーガン時代に教育
    省長官を務め、道徳教育ルネッサンスを推進した人物です。

     「徳の本」は、子どもの徳育について、父母向けに綴った教
    科書ともいわれます。「自己修養」「思いやり」「責任」「友
    情」「仕事」「勇気」「忍耐」「正直」「忠誠」「信仰」とい
    う10項目の徳目が挙げられ、これに関する教育を実行するた
    めに、実話や寓話を多数掲載したものです。子どもの教育を考
    え直そうとする親たちは、競って同書を購入し、たちまち全米
    で読まれました。

     そして、道徳回復運動は、共和党の保守派だけでなく、民主
    党のなかにも広がっていきます。そこには、共同体主義の増勢
    が見られます。

     1993(平成5)年、社会学者アミタイ・エツィオーニの
    「コミュニティの精神」が発売され、ベストセラーになりまし
    た。同書は、共同体主義者の間でバイブル視されている著作で
    す。クリントン大統領は、同書を読み、少なからぬ影響を受け
    たと見られます。

◆クリントンが訴えた「家族の強化」

     クリントンは、1994(平成6)年の「一般教書」演説で、
    「家族・共同体」という伝統的な絆の復活を訴えました。
    95年の演説では、「ワシントンの中央政治ではなく、地域コ
    ミュニティに基盤を置く社会を実現させたい」と熱く語りまし
    た。これらの発言は、共同体主義の広がりと関わっているので
    す。

     2期目を迎えたクリントンは、1997(平成9)年2月に、
    「一般教書」演説を行いました。ここでは、アメリカが力をあ
    わせて挑戦すべき6項目を挙げました。その一つが「家族の強
    化」でした。

     教書の言葉を拾ってみましょう。「より強い家族が、より強
    いアメリカをつくる」「家族を強化することで、10代の妊娠
    の比率は下がる」「家庭内の男女がたがいに尊敬しあうことで、
    家庭内暴力を終わらせなければならない」「アメリカの家族が
    一緒にとどまるべく、努力することに挑戦しよう。なぜなら家
    族は一緒にいると経済的にも助かるばかりでなく、子どもたち
    のためにもなる」「子どもは生まれたばかりのときから、情緒
    的にも知的にも発達するのだから、両親が幼児に話しかけ、歌
    いかけ、読み聞かせることが非常に大切である」等々。

     クリントンは訴えました。「21世紀のアメリカに向けて、
    我々はより強い家族を建設しなければならない。…我々はより
    強い共同体(コミュニティー)を建設しなければならない」と。

     彼自身は女性スキャンダルで名を汚しましたが、こうした彼
    の訴えは、今後もアメリカ社会で、受け継がれていくでしょう。

◆わが国のフェミニズムへの疑問

     病める大国・アメリカにおいて、良識ある人々は、個人主義
    や性の自由化やフェミニズムの弊害を悟ったのでしょう。その
    国民社会は、家族や共同体の価値を認める方向に変化していま
    す。公共道徳の再建がめざされているのです。

     わが国のフェミニストたちは、欧米「先進国」を目標として
    いるように語ります。しかし、彼女らは、アメリカにおける変
    化には、目をつぶっているかのようです。国民にはそれを知ら
    せずにおこう。国民を無知なままに置いて、その間に自分たち
    の願望を実現しようとでもしているのかも知れません。

     1970年代より、国際的に女性への差別の解消がめざされ、
    女性の地位が上がりつつあります。わが国でも1980年代の
    女子差別撤廃条約の批准と、男女雇用機会均等法の成立は、多
    くの女性の支持を得ました。家庭内での対女性暴力や、職場等
    でのセクシャル・ハラスメントを無くそうとする運動も行われ
    ています。それらについては、私は概ね異論はありません。し
    かし、私は、現在推進されている男女共同参画社会実現運動に
    は、疑問を感じています。男女共同参画基本法は、すべての女
    性が家庭から外に出て、労働する社会を目指しています。これ
    はおかしいと思います。

     そのうえ、今日のフェミニストは、男女の自然な生まれつき
    の性差まで無視し、母性本能を否定します。そして、主婦に対
    して罵倒と非難を繰り返しています。夫婦別姓や、離婚事由と
    しての破綻主義、税制・年金制における専業主婦の優遇措置の
    廃止等を求める主張もしています。私は、これらには反対しま
    す。そこに見られるのは、個人主義の徹底であり、家族の解体
    です。その結果は、子どもの心を荒廃させ、教育と社会を混迷
    に陥れると思います。

     この10数年の間に、わが国の女性運動には、マルクス主義
    的フェミニズムの影響が強くなっていると思います。姿を変え
    た新左翼思想が浸透しているように思います。

◆男女が力を合わせて、公共道徳の復興を

     わが国では、近年、家庭の崩壊や道徳の低下が、急速に進ん
    でいます。17歳に代表される凶悪犯罪や、麻薬・少女売春、
    離婚や児童虐待の増大が、深刻になってきています。

     男も女も、どっちがどうだと争っていられる状況ではなくな
    っていると思います。男も女も力を合わせて、この社会を立て
    なすために、努力しないといけないところに、とうに入ってい
    ると思います。

     私は男女はお互いの特徴を認め合い、欠点を補い合って、相
    協力するところに、円満な家庭ができ、子どもも健やかに成長
    できると思います。明るく楽しい家庭は、心豊かな社会、平和
    な世界の基礎です。

     わが国は「個人」や「私」を偏重してきたことを改め、国
    家・社会全体の利益、「公」を回復する方向へと、転換すべき
    時期を迎えていると思います。

     また、さまざまな社会運動は、公共道徳の復興をめざすもの
    となってこそ、健全で良識ある社会を実現することができると
    思います。

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    ほそかわ・かずひこの<オピニオン・プラザ>
    http://www.simcommunity.com/sc/jog/khosokawa
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創刊日:1999-03-10  
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