国際情勢

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。

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JOG Wing No.0143 by CLICK INCOME

2000/03/17


 _/          _/  _/                       日本の「公」と「私」
 _/          _/      _/_/_/      _/_/_/   第5回 「公」を衰弱させる憲法
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 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H12.03. 3,076部
  _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/        JOG Wing No.0143
                                 _/     国際派日本人の情報ファイル
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      第1回 公は「大きい家」 
      第2回 「公の体現者」 
      第3回 「天皇と公民」の来歴
      第4回 明治における「公と私」 
    ★ 第5回 「公」を衰弱させる憲法
      第6回 「私民社会」の危機
      第7回 21世紀へのメッセージ
      第8回 地球的視野の公民教育を

     ほそかわです。今回と次回は、現行憲法における「公と私」
    について、書かせていただきます。

◆「公」の精神の変質と危機

     王政復古、文明開化、富国強兵、立憲・教化、日清・日露戦
    争などの時代を、知ろしめした明治天皇は、次のような御製を
    残されています。

        まつりごとただしき国といはれなむもものつかさよちから
        尽して  (*もものつかさ=文武百官)

        世の中の人の司となる人の身のおこなひよただしからなむ

     これらの御製は、「公」に尽くすことをその務めとする、政
    治家・官僚・指導層に、あるべき姿を諭されたものでしょう。

     しかし、現実は、この御製の主旨に外れるものとなっていっ
    てしまいました。

     日露戦争の勝利によって、東アジアが安定し、また殖産興業
    による経済成長が軌道に乗ると、幕末・明治の「公」の精神は
    徐々に形骸化してゆきました。明治の元勲が一人二人と減り、
    世代交代が進むと、武士道は弱まり、政・官・財等の指導層は、
    「私」的な利益の追求に傾きました。

     第1次世界大戦、ロシア革命、世界経済恐慌など、大正・昭
    和戦前期のわが国は、厳しい国際環境と経済危機に直面しまし
    た。激動する世界の中で、わが国の指導層は、的確な判断と行
    動ができなくなってしまいました。

     行き詰まった状況の中から台頭した軍部は、政治に介入しま
    した。それは、「軍人は政治に関与してはならない」という明
    治天皇の遺訓に反する行為でした。そして、昭和天皇の御心に
    背いて、度重なる暴走を続け、国の進路を誤ってしまいました。
    日中関係の泥沼化、日独伊三国同盟の締結、日米開戦、そして
    敗戦へ。

     大東亜戦争の敗戦の時、最大の課題は、天皇と国体を守るこ
    とでした。幸いにも、それはかろうじて果たされました。

     戦勝国は、日本を弱体化するために、一連の占領政策を強行
    しました。弱体化の最大のポイントは、天皇と国民の強い団結
    を打ち砕くことです。それは、日本の「公と私」の伝統を、破
    壊するものでした。

     日本弱体化の目的の下、GHQによる「神道指令」の発布、
    いわゆる天皇の「人間宣言」などが推し進められ、天皇の「
    公」的権威は弱められました。「公」の精神を培ってきた家族
    的な国民道徳は否定され、「公」の基盤であった家族的共同体
    にも、解体の手が加えられました。
    
     「教育勅語」は国会で、国民の代表自身の手で失効とされま
    した。明治天皇の教訓は教育から除かれました。そして、いつ
    の間にか、聖徳太子も紙幣から消えてゆきました。

     最も重大なことは、帝国憲法に代わって、占領軍の外国人が、
    わずか1週間で作った粗製英文憲法が押し付けられたことです。

◆憲法が「公」を衰弱させている
 
     GHQ製の憲法は、日本の「公」の精神を衰弱させるものと
    なっています。国家の基本法である憲法が、そのよって立つ国
    家国民の公共性を弱めていると見られるのです。それゆえ、現
    代日本の「公と私」の問題は、憲法の問題として、論じられな
    けなりません。

     現行憲法は、主権は、天皇ではなく国民にあるものとしまし
    た。いわゆる「主権在民」です。そして、「象徴天皇制」とな
    り、天皇は「象徴」であって、元首とは明記されていません。
    これらの2点は、戦後憲法の4大特徴のうちに挙げられます。
    他は、「平和主義」と「基本的人権の尊重」です。
    
     問題は、こうした特徴をもつ憲法によって、「天皇と公民」
    の関係が大きく変えられ、天皇が統治大権とともに「公」的な
    権能を多く失い、一方、主権者とされた国民は、「公」の精神
    を失う結果となっている点です。

     現行憲法は、「基本的人権の尊重」を特徴の一つとします。
    これは、帝国憲法に規定された、民主的な「臣民の権利」をさ
    らに拡大したものであり、評価すべき点です。しかし、権利と
    義務のバランスを欠いているために、人権の尊重が、反面では
    「公」の精神を低下させています。

     憲法は、基本的人権の保障を詳細に規定している反面、国民
    の義務は、3つしか定めていません。即ち、納税の義務、教育
    の義務、勤労の義務です。このうち教育や勤労は義務というよ
    り権利という性格が強いですから、義務らしい義務は、税金を
    納めることだけです。

     これに対し、日本以外の多くの国では、国法の遵守や国防の
    義務が定められています。日本にはそのような義務は存在しま
    せん。そのため、お金さえ出していれば、誰かがやってくれる
    だろう、という意識が生まれています。

     このように、現行憲法は、権利に対して義務が少ないという
    アンバランスな規定となっています。権利を「私」の方向、義
    務を「公」の方向と考えると、現行憲法は、国民を「私」の方
    向へ、誘導するものとなっています。

     主権が存するとされる国民が、「公」のことより「私」の方
    へ向いているのでは、国政がうまくいかないのは、当然でしょ
    う。

     この最大の問題が、国防にあると、私は考えます。

◆自衛意識と愛国心の喪失

     「平和主義」は、現行憲法の大きな特徴です。しかし、それ
    は、単なる「平和主義」ではなく、戦勝国が敗戦国に強制した
    ものであって、わが国の軍事力に大きな制約をかけるものでし
    た。第9条の「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権否認」は、
    さまざまな解釈を生み、自衛権までを放棄したという解釈も、
    生まれました。しかし、憲法の内容は、国際社会の現実からか
    け離れたものでした。わずか数年以内に、この憲法を押し付け
    た米国自身の手で、自衛隊が創設され、また日米安保条約が締
    結されました。

     ここで重要なことは、日本は以後、米国の軍事的な保護を受
    けることによって、国民が自国の国防を自分の問題として考え
    なくなったことです。

     近代西洋国家においては、国防は、国民の義務とされていま
    す。

     権利とは「人権(human rights)」といわれるものの、実際
    にはそれぞれの国家がその国民に保障している権利です。つま
    り、国民の権利です。国民の権利を保障しているのは、国家で
    すから、その国家が保護されなければ、誰も国民の権利を保護
    してくれません。国家を保護するものは、その国の国民以外に
    はありません。それゆえ、国民は自分の権利を守るためには、
    国家を自らの手で守らなければなりません。そこに、国防の義
    務が、国民の当然の義務として発生するのです。(9)

     しかし、戦後のわが国では、国民に国防の義務がありません。
    そして、国家を保護しているのは、国民自身ではなく、外国の
    軍隊、つまり米軍なのです。

     国民に国を守る義務がなければ、自衛意識は失われます。そ
    して国を愛する心、愛国心を持たなくともよいということにな
    ります。事実、わが国の学校教育では、愛国心についての教育
    がほとんどされていません。国家や社会全体のことを考えるの
    は、全体主義や軍国主義の復活につながるというのです。

     その結果、国家や社会全体のこと、つまり「公」のことを考
    えない、「私」的で自己中心的な考えをもつ世代が生み出され
    ます。戦後世代が増えるにつれ、社会から公共性が低下してゆ
    くことになります。

     私は、国民が国防を自らの問題として考えなくなったこと、
    この点が、戦後、「公」の精神の衰弱した重大な原因であると
    考えます。

     次回は、引き続き現行憲法の問題点について、私見を述べま
    す。

参考資料
(9)吉田和男著「21世紀の繁栄のための憲法改正論」(PHP研究所)

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    ほそかわ・かずひこの<オピニオン・プラザ>
    http://www.simcommunity.com/sc/jog/khosokawa
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■編集長・伊勢雅臣より■

     国防の義務がなければ、国民は私利私欲を追求だけしていれ
    ば、良いことになります。昨今の官庁、企業などの汚職、職務
    怠慢などの激増も、戦前の教育を受けた世代が一斉に引退し、
    戦後教育を受けた全共闘世代がトップを占めたのと時期が一致
    しています。「公の精神」を教わっていない世代なのです。

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