国際情勢

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。

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JOG Wing No.0134 by CLICK INCOME

2000/02/25


 _/          _/  _/                      日本の「公」と「私」
 _/          _/      _/_/_/      _/_/_/   第2回 「公の体現者」 
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 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H12.01. 部
  _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/        JOG Wing No.012
                                 _/     国際派日本人の情報ファイル
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                     ほそかわ・かずひこ

     ……………… 目   次 ………………

      第1回 公は「大きい家」 
    ★ 第2回 「公の体現者」 
      第3回 「天皇と公民」の来歴
      第4回 明治における「公と私」 
      第5回 「公」を衰弱させる憲法
      第6回 「私民社会」の危機
      第7回 21世紀へのメッセージ
      第8回 地球的視野の公民教育を


◆十七条憲法が示す「和」の理念

     聖徳太子は、7世紀に、十七条憲法を制定しました。これは、
    日本で初めての成文憲法であり、また世界最古の憲法とも言わ
    れます。

     この太子の憲法には、神話に伝えられ、大和朝廷に形作られ
    た日本の国柄と、それに基く日本の「公と私」のあり方が、よ
    く表されていると思います。

     十七条憲法は、天皇を中心としつつ豪族が政治権力に参加す
    る政治制度を説いています。その理念が「和」です。憲法は、
    第一条の「和を以て貴しとなし…」という言葉で始まり、以下
    の条文では私利私情や独断を戒め、話し合いに基づく政治を行
    うことを説いています。この思想は、専制的(tyrannical, de
    spotic)でなく、驚くほど民主的(democratic)です。古代ア
    ジアを制圧した君主の専制政治ではなく、衆議公論による君民
    和合の政治が目指されています。

     太子の「和」とは、家族的共同体としての「公(おおやけ=
    大きい家)」における、大家族的な感情に基く調和の理念と考
    えられます。こうした、太子の理念には、神武天皇の建国伝承
    以来、皇室を中心に保たれてきた固有の国柄、つまり日本の
    「国体」が表現されていると言えましょう。

◆聖徳太子の説いた「公と私」

     次に、こうした国体を基にした「公と私」のあり方が、憲法
    の条文に記されています。

     第十二条には、「国に二君なく、民に両主(ふたりのある
    じ)なし。率土(くにのうち)の兆民(おほみたから)、王
    (きみ)を以って主とす」とあります。すなわち、国の中心は
    一つである、中心は二つもない。天皇が国民統合の中心である
    ということです。そして、国民は、天皇を主と仰ぎ、一方、天
    皇は「民」を「おほみたから」つまり大御宝としています。

     第三条には「詔(みことのり)を承りては必ず謹(つつし)
    め」とあります。太子は、豪族・官僚たちが天皇の言葉に従う
    ように、記しています。そして、第十五条に、「私を背きて、
    公に向(おもむ)くは、是れ臣(やっこ)が道なり」とありま
    す。すなわち、私利私欲を超えて、公共のために奉仕すること
    が、官僚の道であると説いています。

     これらの条文は、「和」の理念に基く、天皇を中心とした家
    族的共同体の公共倫理を表していると理解されます。またそれ
    は、「天皇と公民」の関係を明文化するものでもあります。第
    1回で引いた高森明勅氏は、第十二条を挙げ、次のように述べ
    ています。 

     「聖徳太子の十七条の憲法の第十二条には、豪族の私的支配
    を拒絶する原則がはっきり打されている。つまり民は国家の統
    治の下にあるものであって、豪族の私的な権力の下にあるもの
    ではない、という原則を打ち立てていく。すなわち、『公民』
    の概念です。

     この公民の登場が意味するものこそ、日本における古代国家
    の確立ということです。そしてその国家の公共の統治を体現す
    るのが天皇だということなのです」(4)

◆天皇は「究極の公共性の体現者」

     「和」の理念の下に、天皇を中心とした公共の秩序を形成す
    るには、「公(おおやけ)」が「私(わたくし)」より尊重さ
    れなければなりません。そのためには、自由に対する何らかの
    制限がなくてはなりません。

     制限には、支配・服従による強制的制限と、合意・承服によ
    る随意的制限があります。前者は権力により、後者は権威によ
    るものです。これらのどちらか、あるいは両方がなければ、公
    共の秩序は成り立ちません。

     高森氏は、次のように述べます。

         「公について納得できる回路を日本人は歴史の中で育て
        てきた。その際、大事なのは公の体現者がもつ権威なんで
        す。権力によっては、公は維持できない。権力は外から押
        さえるから、必ず反発を生む。逆に内側から納得させるの
        が権威です。

         公を納得させる権威をもつためには、その存在が長い来
        歴をもっている、つまり自分の父も祖先も代々それに従っ
        たということ。そしてそれによって共同体というものが現
        に維持されてきたという事実が大切です。

         わが国において、天皇とは歴史に担保された公の体現者
        であった。誰しも素直にそこに公を感得できた。国内の統
        合を果たして以来、その地位に歴史的な変更を被らなかっ
        たという事実が自ずからそのことを納得させずにはいなか
        ったのです」(5)

     そして、高森氏は、天皇は「日本の究極の公共性の体現者」
    であると表現しています。氏は、その権威は、祭事を司ること
    によって、天皇が「自ら公共性を体現するにふさわしい自己へ
    と精神的な高みを保持されてきた」ことによると述べています。

◆自然に仰ぎ、和合するような権威

     私は、天皇の権威は、神話・伝承に基く伝統的な要素、祭
    祀・神器に基く神聖的な要素、親子的な感情に基く家父長的な
    要素、人格・心性に基く有徳的な要素などが融合したものと思
    います。そしてこの権威は、生命的でまた民族的・文化的な、
    集合的無意識に深く根ざしたものと考えています。

     いずれにせよ、天皇の権威は、高森氏の言うように、人々を
    「内側から納得」させるようなもの、言い換えると、人々が自
    然に仰ぎ、その下に和合するようなものとして働いてきました。
    武力の強大さを背景とした、威圧的なものではないところが特
    徴です。

     そして、歴代の天皇の御心は、現代の天皇にまで受け継がれ
    てきたのでしょう。今上陛下は、常に国民の幸福と世界の平和
    を祈り、慎み深いご日常を送っておられます。まさに、日本の
    「公」の体現者たるべく、気高い「無私」の精神を保ちつづけ
    ておられるわけです。私たちは、現代の天皇の姿を通して、古
    代から受け継がれてきた、歴代の天皇の御心を想うことができ
    ると思います。

     こうした天皇の「和」をもたらす権威のもとに、日本人は
    「公(おおやけ)」としての一大家族的共同体に統合され、と
    もすれば「私」に分裂し対立しやすい諸民・諸家が、天皇を中
    心として、一つの「公民」へと形成されてきたと考えられます。

     次回は、その後の「天皇と公民」の来歴を振り返ってみたい
    と思います。


参考資料
(4)雑誌『日本の息吹』平成11年10月号
(5)同上

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    ほそかわ・かずひこの<オピニオン・プラザ>
    http://www.simcommunity.com/sc/jog/khosokawa
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■編集長・伊勢雅臣より■

     聖徳太子の「和をもって貴しとなす」の「和」とは、お互い
    に「私」を離れた、「公」の世界に成り立つものなのですね。
    家族でも、友人でも、会社でも、お互いが「私」、すなわち、
    自分のことだけ考えていては、「和」は成り立ちません。

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