国際情勢

JOG Wing 国際派日本人のための情報ファイル

政治・経済・外交・社会・文化などの分野において「元気な日本」を作るためのオピニオン誌です。

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JOG Wing No.0122 by CLICK INCOME

2000/01/28


 _/          _/  _/                      三島由紀夫の『文化防衛論』
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 _/  _/  _/    _/  _/    _/  _/    _/      H12.01.28 2,939部
  _/  _/      _/  _/    _/    _/_/_/        JOG Wing No.0122
                                 _/     国際派日本人の情報ファイル
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              ほそかわ・かずひこさんよりの投稿

     今日わが国は、大きな危機にあります。昭和40年代にも、
    わが国は存亡の危機に直面していました。左翼の革命運動が高
    揚して国内が騒然とし、これに呼応して共産主義国が侵略して
    くる恐れがあったのです。当時、日本を守るために行動した人
    々の一人が、自決した作家・三島由紀夫です。

     国際反日運動に対する対応が求められる今日、三島がかつて
    唱えた「文化防衛論」を振り返ってみたいと思います。

◆日本を守るとは

     「日本を守る」というときに、私たちは、何を守るべきでし
    ょうか。
    
     まず「国土」や「国民の生命と財産」、あるいは「主権と独
    立」を守ることが考えられます。しかし、日本が共産主義国と
    なっても、国土は国土であり、国民の生命や主権等を守ること
    は、変わりがありません。また、「自由・平等・民主・人権」
    などの価値を守ることは、どの民主主義国でも言っており、わ
    が国では共産党までが言っています。

     つまり、これらを守るというだけでは、共産主義や反日勢力
    に対して、日本を守ることにはならないのです。

     そこで、日本を守るとは、わが国古来伝えてきた独自の国柄
    を守るということであることに思い至ります。これを伝統的な
    言葉でいえば、「国体」を守るということです。
    
     「国体」とは、簡単に言えば、日本の歴史・文化・伝統に基
    く、天皇を中心とした国柄だと言えましょう。そして、国体を
    守るということは、より具体的に言えば「天皇」を守るという
    ことになります。天皇なくしては国体は成立せず、日本の独自
    の国柄は失われてしまうからです。

◆文化を守ることを提唱

     三島由紀夫は、昭和40年代の日本共産化の危機において、
    共産主義に反対し、国体を守り、天皇を守ることを唱えました。

        「なぜわれわれは共産主義に反対するのか? 第一にそれ
        は、われわれの国体、すなわち文化・伝統と絶対に相容れ
        ず、論理的に天皇の御存在と相容れないからであり、しか
        も天皇はわれわれの歴史的連続性・文化的統一性・民族的
        同一性の、他にかけがえのない唯一の象徴だからである。
        …」(1)

     三島は、さらに独自の考察を進めます。

        「…どうしても最終的に守るものは何かというと、天皇の
        問題。それでもまだあぶない。カンボジアみたいに王制で
        だね、共産主義という国もあるんだからね。いまの共産党
        は『天皇制打倒』を引っ込めて十年経つが、ひょっとする
        と天皇制下の共産主義を考えているんじゃないかと思う。
        これでもまだまだだめだ。天皇を守ってもまだあぶない。
        そうすると何を守ればいいんだと。ぼくはね、結局文化だ
        と思うんだ、本質的な問題は」(2)

     このような考察に基いて、三島は、国体を守るために「文
    化」を守ることを提唱しました。私は、重要な着眼だと思いま
    す。国体とは、単に国家の通時的な構造をいうのではなく、文
    化の社会組織的な表現でもあります。文化とは精神の表れです
    から、日本の文化と国体は、日本人の精神の表れです。それゆ
    え、「文化」を守るとは、日本の精神を守ることであります。
    これは、日本人のアイデンティティに関わる課題です。三島は、
    こうした課題を自己の問題として取り組むことを、同時代、そ
    して将来の日本人に呼びかけたものと思います。

◆「文化概念としての天皇」を希求

     「文化」を守れ、という三島の提唱は、一般的な伝統文化・
    民族文化の保存を説くものではなく、国体を守り、天皇を守る
    ことを訴えるものです。これは、彼の個性的な天皇論・文化論
    による主張です。

     三島は著書『文化防衛論』で、「政治概念としての天皇」に
    対する「文化概念としての天皇」という天皇像を提起しました。
    彼は、天皇の本質とは、政治的な権力者ではなく、「文化共同
    体の象徴」「文化の全体性の統括者」であると考えました。三
    島は、明治国家が創り出した天皇像を、西欧近代の国家原理の
    影響を受けて政治権力と結びつけられたものとして、拒否しま
    す。そして、「歴史的な古い文化概念としての天皇」の復活を
    希求しました。

        「われわれの考える天皇とは、いかなる政治権力の象徴で
        もなく、それは一つの鏡のように、日本の文化の全体性と、
        連続性を映し出すものであり、このような全体性と連続性
        を映し出す天皇制を、終局的には破壊するような勢力に対
        しては、われわれの日本の文化伝統を賭けて闘わなければ
        ならないと信じている…」(3)

     こうした主張は、彼独自の文化論に則ったものです。彼は皇
    室を中心とした古代の王朝文化に、日本文化の最も重要な源を
    見ます。

        「日本の民衆文化は概ね『みやびのまねび』に発している。
        そして、時代時代の日本文化は、みやびを中心とした衛星
        的な美的原理、『幽玄』『花』『わび』『さび』などを成
        立せしめたが、この独創的な新生の文化を生む母胎こそ、
        高度で月並みな、みやびの文化であり、文化の反独創性の
        極、古典主義の極致の秘庫が天皇なのであった。…

         文化上のいかなる反逆もいかなる卑俗も、ついに『みや
        び』の中に包括され、そこに文化の全体性がのこりなく示
        現し、文化概念としての天皇が成立する、というのが、日
        本の文化史の大綱である」(4)

     そして、彼は次のように述べます。

        「天皇を否定すれば、我々の文化の全体性を映す鏡がなく
        なるだろう。天皇は最終的に破壊されれば、我々の文化の
        アイデンティティはなくなるだろう」(5)

     さわり程度の紹介ではありますが、三島はこのような天皇
    論・文化論を展開して、「文化」の防衛を訴えました。「文
    化」を守ることなくしては、国体、そして天皇を守ることはで
    きず、日本を守ることはできないと考えたわけです。それは、
    昭和40年代、日本共産化の危機が迫る状況の中で、突き詰め
    られていった考察でした。

◆日本の将来を洞察
 
     いわゆる70年安保をめぐる騒乱の中で、昭和45年11月
    25日、三島は、自衛隊市谷駐屯地において、自衛隊員に憲法
    改正を目指す決起を呼びかけて失敗、割腹自殺しました。当時、
    私は高校2年生でした。

     自決事件の4ヶ月ほど前、三島は、次のような感懐を記しま
    した。

        「私はこれからの日本に対して希望をつなぐことが出来な
        い。このまま行ったら日本はなくなってしまうのではない
        かという感を日増しに強くする。日本はなくなって、その
        かわりに、無機的な、空っぽな、ニュートラルな、中間色
        な、富裕な、抜け目がない、ある経済的大国が極東の一角
        に残るであろう…」(7)

     また、前年10月の講演で、次のように語りました。

        「この安保問題が一応片がついたあとに初めて、日本とは
        何だ、君は日本を選ぶのか、選ばないのかという鋭い問い
        かけが出てくると思うんです。そのときはいわゆる国家超
        克という思想も出てくるでありましょうし、アナーキスト
        も出てくるでありましょうし、われわれは日本人じゃない
        んだという人も出てくるでありましょう。……そのときに
        向かって私は自分の文学を用意し、あるいは行動を用意す
        る。そういうことしか自分に出来ないんだ。これを覚悟に
        したい、そう思っているわけであります」(8)

     これらの発言は、その後の日本について、予言的な響きがす
    るほどに、深い洞察を示したものだと思います。

◆どのように評価するか

     三島由紀夫の行動と死に対する評価は、さまざまです。私は、
    彼が、昭和40年代の日本の危機において、いかにして日本を
    守るかを考え、発言・行動したことを評価します。しかし、彼
    が自衛隊にクーデターを呼びかけたこと、また自決したことは
    評価できません。

     私は、もし彼が自らの美学へのとらわれを捨て、死への衝動
    に打ち克ち、国家社会のために生き抜き、尽くす道を選んだな
    らば、もっと有意義な行動をなし得たに違いないと思います。
    その点は残念ですが、彼が「文化」を守ることを提唱した言葉
    の中には、日本人が避けることのできない重要な問題が多く語
    られていると思います。

参考資料
(1)三島由紀夫著『文化防衛論』(新潮社、初版は昭和44年)
(2)同上『若きサムライのために』(文春文庫、初版は昭和44年)
(3)-(6)  (1)と同じ
(7)産経新聞 昭和45年7月7日号
(8)猪瀬直樹著『ペルソナ 三島由紀夫伝』(文春文庫)


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    ほそかわ・かずひこの<オピニオン・プラザ>
    http://www.simcommunity.com/sc/jog/khosokawa
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■編集長・伊勢雅臣より■

    「日本はなくなって、ニュートラルな・・・経済大国が姿を現
    すだろう」、という三島の予言はあたりましたが、文化も価値
    観も見失った経済大国は、バブル以降、経済もふるいません。
    もう一度、「日本」を見つけだしていく所から始める必要があ
    ります。

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