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Cinemaの王国

個性派ライターによる映画レビューのマガジン。毎週1〜2本、新作映画を中心に言いたい放題で斬りまくります。

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Cinemaの王国 vol.1643〜『エルネスト』

2017/10/13

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【INDEX】
◆1.今週のこの1本!
  ─『エルネスト』─
◆2.ぽちのひとりごと
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◆1.今週のこの1本! 〜『エルネスト』〜
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●『エルネスト』
(2017年 日本・キューバ)(上映時間2時間4分)
監督・脚本:阪本順治
出演:オダギリジョー、永山絢斗、フアン・ミゲル・バレロ・アコスタ、ロベ
ルト・エスピノーサ・セバスコ、ルイス・マヌエル・アルバレス・チャル、ア
ルマンド・ミゲール、ヤスマニ・ラザロ、ダニエル・ロメーロ・ピルダイン、
ジゼル・ロミンチャル、アレクシス・ディアス・デ・ビジェガス、ミリアム・
アルメダ・ビレラ、エンリケ・ブノエ・ロドリゲス
*TOHOシネマズ 新宿ほかにて全国公開中
ホームページ http://www.ernesto.jp/
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<ストーリー>
日系ボリビア人の青年フレディ前村(オダギリジョー)は、医者を志してキ
ューバの国立ハバナ大学へ留学する。まもなくキューバ危機の状況下でチェ・
ゲバラ(フアン・ミゲル・バレロ・アコスタ)と出会ったフレディは、彼の魅
力に心酔する。そんな中、ボリビアで軍事クーデターが起こると、フレディは
ゲバラの部隊に参加する。ゲバラから"エルネスト"の戦士名を授けられたフレ
ディは、ボリビアでのゲリラ活動へと身を投じていくのだが……。

<レビュー>
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自分の思いに忠実に生きた日系人青年の人生
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エルネスト・チェ・ゲバラといえば、キューバ革命の英雄。だが、そんなゲバ
ラと関わりのある日系人がいたという事実は、まったく知りませんでした。そ
の名はフレディ前村ウルタード。日系2世のボリビア人です。彼の半生を阪本順
治監督が映画化した日本とキューバの合作映画です。

ただし、冒頭からしばらくの間はフレディではなく、キューバ革命後にキュー
バ政府の経済使節団として訪れたゲバラが、日本政府の意向に反して広島を訪
れた一件が描かれます。ゲバラは、平和記念公園で献花したほか、原爆資料館
に足を運び、被爆者が入院する病院にも足を運びます。

おいおい、これはフレディではなく、ゲバラの伝記映画なのか? と思ってし
まったのですが、その鍵はゲバラが語った「君たちは、アメリカにこんなひど
い目に遭わされて、どうして怒らないんだ」という言葉や、のちに広島の惨状
を踏まえて「核戦争に勝者はいない」と語った言葉にあるのではないでしょう
か。常に弱者の側に立つというゲバラの姿勢にこそ、フレディが共鳴したに違
いないという阪本監督の考えを示した構成かもしれません。

その後、ようやくフレディが登場します。1962年、彼は仲間とともにボリビア
からキューバにやってきます。医師になる夢を持ち、そのためにハバナ医大へ
の入学を目指してキューバにやってきたのです。

そこからは、フレディの青春の日々が描かれます。20歳の彼は、ハバナ大への
入学を前に、最高指導者カストロによって創立されたヒロン浜勝利医学校で、
医学の予備過程を学びます。同時に、仲間とともに機関誌を発行するなど様々
な活動を展開。その一方、一緒にボリビアから来てシングルマザーとなった女
性に、ほのかな思いを寄せて、彼女と娘を何かとサポートします。

やがてキューバ危機が起きて、フレディたちも学業を中断して軍事訓練に励み
ます。そんな中、1963年の元旦に学校にやってきたゲバラに、フレディは話し
かけます。「あなたの絶対的自信はどこから?」。ゲバラは「自信とかではな
く怒っているんだ、いつも。怒りは、憎しみとは違う。憎しみから始まる戦い
は勝てない」と答えます。

まもなく母国ボリビアでは軍事クーデターが起きます。フレディは"革命支援隊
"への参加を決意し、やがてゲバラから"エルネスト"の戦士名を授けられます。

フレディはゲバラのような英雄ではありません。学生としても反政府ゲリラと
してもリーダーではありません。日系人ではあるものの日本との直接的な関り
もありません。そんな人物をどう描くのか。

阪本監督はフレディの生き様をひたすら丹念に描きます。前作『団地』のよう
なヒネリのきいた作品も多い阪本監督ですが、今回は正攻法の描き方です。

それを通して見えてくるのは、今の時代には貴重ともいえる「まっすぐに生き
た青年」像です。フレディは、「貧しい人、弱い人を助けたい」という思いの
まま、医者を目指し、そしてゲバラに共鳴して反政府ゲリラになります。途中
で戦いに突き進む葛藤らしきものも描かれますが、基本は自分の思いに忠実に
生き抜いた男。それを素晴らしいと思うのか、理想主義すぎると笑うのか、そ
れは観客次第でしょう。

ゲバラの没後50年の日本・キューバ合作映画ということもあり、いろいろと難
しい点もあったと思います。もう少しフレディの心理の奥底に迫って、影の部
分などもあぶりだして欲しかった気はしますが、こうした人物がいたことを知
らしめただけでも、十分に価値のある映画ではないでしょうか。

オダギリジョーが全編スペイン語で熱演を見せているのも、大きな見どころで
す。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(84点)

2017年10月7日(土)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時40分の回
                          (ぽち)

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◆2.ぽちのひとりごと
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*完全な映画ジャンキー生活に突入しております。
                           (ぽち)

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創刊日:2000-12-02  
最終発行日:  
発行周期:毎週金曜+不定期の水曜  
Score!: 100 点   

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