文学

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風物語

2004/05/23

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      あすかマガジン  メルヘンワールド   VOL.1

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          ★演劇発表会★ 

  演劇発表会かあ、いやだなあ。
  小学校から帰るしたくをしながら、わたしはゆううつな気持ちでいっぱい
だったわ。
  それじゃなくてもお外は雨ですっきりしないのに。
「あらっ、真美ちゃん、まだ帰らないの?」   
  いつのまにか教室に来た、担任の一条恵理子先生が背をかがめて、話しか
けたから、わたしは、うつむいたまま、こくりとうなずいたの。
 そしたら、先生は、わたしの顔をじっと覗き込んだわ。
  なんだかとっても恥ずかしくて、お顔が真っ赤になっちゃったの。
  先生は首をかしげ、
「どうしたの、真美ちゃん。なんか不安なことでもあるの?」
 わたしはただ、こくんと頷くしかなかったのね。
  ほっぺが思いっきり赤くなったんじゃないかな?
  お熱でポッポしたの。
  そんなわたしに先生は軽く微笑んで、
「何があったのかな?先生に話してみて、真美ちゃん」
 わたしは、本当に先生が心配してくれているなって思ったから、
ずっと胸につかえていたものを打ち明けてみることにしたの。
  きっと、恵理子先生ならわかってくれるって信じたから。
 ふだんから、とっても優しい先生なんだよ。一条先生は。

  わたしって、明るい子じゃないのね。
  まわりの子たちと打ち解けることが出来ないから、お友達になって
くれる子が少ないの。
 たった一人のお友達が静香ちゃんなのね。
  静香ちゃんは、世話好きだし、頼りになる存在だから、みんなに好
かれているの。
  そんな子がわたしのお友達になってくれたから、嬉しかったわ。
 その静香ちゃんをわたし、怒らせちゃったんだ。
 演劇発表会のことでね。
 今回の演目ってシンデレラなのね。
 静香ちゃんね、主役のシンデレラやりたかったみたいなの。
 でも、ずっと風邪が治らなくて、セリフの練習が出来なかったのね。
 大声がどうしても出せないだって。
 それで、主役から外されちゃったの。
 そこで選ばれたのがわたしだったわ。
 わたし自身がびっくりよ。
  わたしは別にそんな役、やりたくなかったんだけど、みんなが決めた
ことだから、しょうがなくて、引き受けたんだけど、それからよ。
 静香ちゃんがわたしを無視するようになったのは。
 わたし、とても悲しかったわ。
 たった一人の親友を失うなんて。
 こんなふうになるんだったら、シンデレラなんて引き受けなければ良かっ
たわ。
 もともと、わたしに向いていないもの。主役なんて。
 でも、あと十日しかないのに今さら断れないの。
 わたし、どうしたらいいのかわかんない――

「そうだったの……」
 恵理子先生はわたしに大きく頷いて、しばらくはじっと考えていたけど、
「そうだ、いいことがあるわ。先生に任せてね!」
 先生はわたしにVサインしてくれたから、ほっとしたの。
  大丈夫、先生なら、きっと解決してくれるわ。

 翌日、恵理子先生は、ホームルームでとんでもないことをみんなに
伝えたの。
 ホームルームが終わっても、クラスの中の騒ぎが収まらなかったわ。
 その先生の意見があまりにもとっぴすぎたからね。
 でも、それが一番いいことなんだって、わたしは思ったの。
 本当に先生はわたしのこと、考えてくれているんだなって。
 その先生の意見が取り入れられたのはそれから三日後だったわ。
 わたしも静香ちゃんも演劇発表会に向けて、一生懸命、練習したの。
 とっても不思議なことなんだけど、みんなで練習しているとね、連帯感
っていうのかな?そういうのが生まれるみたいだね。
 一緒に練習している子たちとわたしもだんだん、仲良くなることが出来
たの。
 えっ?どんな練習してるんだって?
 それは、演劇発表会を見てのお楽しみよ。

 それから七日後の土曜日、とうとう小学校の演劇発表会が開催されたの。
 わたしにとっては、初めての舞台よ。
 一年一組から始まって、わたしたちが三番目。
 六年五組まであるから、三十組の演劇発表を二日間にかけて市民ホールで
するの。
 各クラスの持ち時間は三十分。その中で三位、準優勝、優勝を決めるの。
 みんな熱が入るわけよ。わたしのクラスも負けていられないわ。
 演目はもちろん、シンデレラよ。
 シンデレラ役の静香ちゃん、可愛かった。
 特に白いドレスに着替えた静香ちゃんって、最高よ。 
 えっ?わたしはどこにいるかって?
 みんなには見えないけど、静香ちゃんのセリフのとき、わたしは
声の出演をしているの。どう、驚いたでしょ?
 結果は上々だったわ。静香ちゃんとも仲直り出来たしね。
 残念ながら、優勝はしなかったけど、特別賞よ。
 わたしも、もう立派なクラスの一員だわ。
 みんな笑顔の受賞。
 最高ね!一年三組。
                            (完)

 
                       発行人  南風あすか

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創刊日:2000-11-03  
最終発行日:  
発行周期:隔週  
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