物理学

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2つの異なる同じもの

2019/05/14

ボスとの研究の話です。

研究テーマは最近お話ししている2次元共形場理論のトフーフトアノマリーです。

トフーフトアノマリーなので、考えているのはグローバル対称性で、ここまでの話から対応した外場を導入し、その外場の変換の下で分配関数が変わるか否かを調べれば良いことがわかります。

対称性が連続的であれば外場の導入の仕方は教科書に書かれているレベルでよく知られています。

一方、対称性が離散的な場合は(少なくとも私が知る限り)まだ教科書には載っておらず、ここ数年でよく理解されてきました。

したがって、離散的なグローバル対称性のトフーフトアノマリーも最近注目を集め始めた量です。

そんな未知の部分が多い離散的対称性のトフーフトアノマリーですので、検出方法も系統的なものは(私たちが知る限り)知られていません。

この系統的な離散的トフーフトアノマリーの検出方法を提案しようというのが私たちの研究の目的です。


ところで、以前曲がった空間上の共形場理論を話した時に説明しましたが、場の量子論は様々な空間の上に置くことができます。

我々が考えている共形場理論は場の量子論の特殊な場合なので、当然曲がった空間の上に置くことができます。

曲がった空間は色々あります。

球面や、ドーナツの表面のような空間などなど。

後者は専門用語でトーラスと言います。

ドーナツの中の部分は無いので、ちょうどホースの両端をくっつけたような中空の空間です。

そしてドーナツの表面はちょうど2次元なので(ホースの長さ方向とそれに直行した2つの方向があるので)、このトーラスの上に2次元共形場理論を置くことができます。

(一般的にはより高次元のトーラスも考えることができます。)

2次元共形場理論をトーラス上に置いた時にはオービフォールドと呼ばれる操作がよく知られています。

そして、この操作は離散的トフーフトアノマリーを検出できると(主にデータに基づいて)信じられていました。

この予想が正しいと説明し切った論文を我々は知りません(我々の研究が進んだ結果、どうやらこの予想は誤りのようだと判明したので証明が無いのは当然とわかったのですが)。

ただ、オービフォールドによって離散的トフーフトアノマリーを検出できると期待できる理由も理解できます。

というのも、この操作は離散的なグローバル対称性のゲージ化と同じ操作だからです。

ゲージ化というのは外場を導入して、その外場について経路積分する操作でしたので、トフーフトアノマリーがあると元外場の変換の下で分配関数が不変でなく、ABJアノマリーとなります。

よって、トフーフトアノマリーを持つグローバル対称性をゲージ化しようとすると、分配関数は病的な振る舞いをします。

オービフォールドにするには元の分配関数を「捻った」上で足し上げます。

捻るというのが外場を導入することに対応します。

この点をもう少し詳しく説明しましょう。

(2次元)トーラスは次のように作ることもできます。

長方形の紙を用意し、向かい合った2辺を同一視(くっつける)します。

同一視というのは、実際的には「同一視された2辺の一方から入ったらもう一方から出てくる」と思ってもらえば良いです。

一昔前のゲームを思い出してもらえばわかりやすいと思います。

昔のゲームではフィールドを右にずっと行くと左端から(右向きに)出てきました。

また、ずっと上に行くと下端から(上向きに)出てきました。

したがって、あのゲームのフィールドは数学者が2次元トーラスと呼ぶ空間です。

さて、左右や上下にトーラス上を1周すると元の位置に戻ってきます。

元の位置に戻った時に理論の自由度に様々な操作をすることができます。

最も素朴なのは、「同じ位置」なのだから何周しようが区別することはできないはずで、「1周する前と同じであれ」と要請することです。

これは理論の自由度に対して何もしない「捻らない」場合です。

一方、「1周したら符号が変わりなさい」などと要請することもでき、これが「捻った」場合です。

ここまでの文脈から推測できるかもしれませんが、自由度に行う操作は離散的グローバル対称性の操作です。

したがって、オービフォールドの操作で「捻る」ことは離散的グローバル対称性に対応した外場を導入することに相当します。

(外場を変えることは、対応するグローバル対称性の操作を行うことと同じだったことを思い出しましょう。

連続的対称性であれば少しづつ外場を変えることができますが、離散的対称性の場合、外場をONにするかOFFにするかが外場を変えることに相当します。

これが、「捻る」ことで理論の自由度に操作を行うことが外場をONにすること、つまり外場を導入することと等価な理由です。)

全ての可能な外場について足し上げるのがゲージ化でしたから、様々に「捻った」分配関数を足し上げるオービフォールドはゲージ化の操作そのものです。

これら2つの操作の一致がオービフォールドによってトフーフトアノマリーを検出できると考えられていた理由です。

我々のこの分野における寄与のメインとなるのは、表面的には同じオービフォールド化とゲージ化が異なることを明らかにし、これまでの予想をより明快にする点でしょう。

私が個人的にこの研究を通して得た教訓は、表面上「同じ」であっても前提が異なれば一般には「異なる」ということでしょうか。



最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。

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