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私が理論物理学の研究を通して身に付けて来た研究方法を、これらの問題に適用します。
2種類の対称性の関係
2019/05/04対称性の量子的破れであるアノマリーを説明しています。
前回はグローバル対称性をゲージ対称性に持ち上げる操作の準備として、もう一つの量子化の方法である経路積分をお話ししました。
経路積分とは、あらゆる可能性を足し上げることでしたね。
この足し上げによって量子論に移行できるのでした。
さて、グローバル対称性をゲージ対称性に持ち上げる操作に戻ります。
2回前に、実験を行う箱などを系と呼ぶと話しました。
その系を調べるために、外からいじれるパラメータとして外場を導入しました。
外場の「外」は理論の固有の自由度ではなく、あくまで系・理論の応答を調べるために「外から」導入したパラメータである、という心で付いています。
言い換えるなら、外場を変えようと、理論は変わりません。
その変換、つまり対称性の操作に対する理論・系の応答がわかるだけです。
(例えば、調べたい物質を箱に入れ、この箱を様々な温度の熱浴に浸すことを考えましょう。
熱浴とは箱・系を一定の温度にするための装置のことで、わかりにくければお風呂などを想定してもらえば良いです。
この実験で物質の性質がわかると期待するのは、温度を変えようと物質の性質は変わらないと仮定しているからです。
もし温度ごとに物質の性質が変わるとしたら、温度を変えた時の物質の応答からその背後に潜む普遍的な物質の性質を抜き出すことはできません。
せいぜい各温度ごとに物質の性質を記録することしかできません。)
ところが、この外場を理論固有の自由度に持ち上げることができます。
その方法とは基本的には外場を経路積分するだけです。
つまり、「外から」人為的に指定されたパラメータではなく、理論に含まれる自由度と相互作用して、あらゆる可能な値を取ることを許します。
実は、今この文章を読むのにあなたの目がキャッチしている光は、素粒子物理学では光子と呼ばれる自由度(覚えていらっしゃったらより専門的にはゲージ場の一つです)と考えられており、ある対称性に対応した外場を経路積分したものです。
だいぶ長くなってきましたので、ここまでの流れをまとめておきます。
理論にグローバル対称性があるとします。
すると、それに対応した外場を導入することができ、外場を変えることはグローバル対称性の操作・変換を施すことを意味するのでした。
そして、この外場について経路積分することで、外から手で指定したパラメータだった「外場」が理論固有の自由度となりました。
この一連の操作をゲージ化と言いますが、ゲージ化によってグローバル対称性はどうなるのでしょうか?
経路積分をすることによって、パラメータがまだ外場だった頃の変換前後のパラメータは全て足し上げられています。
したがって、元外場の変換は、ゲージ化後は記述の仕方の変更に過ぎなくなります。
このことを簡単な例を使って説明しましょう。
2回前にいくつかの自然数を足し上げる問題を考えました。
今度は全ての整数を足し上げる問題を考えてみましょう。
この問題をプログラムにやらせるなら、「全ての整数jを足し上げよ」と命令すれば良いです。
ですが、もしかしたらあなたのお友達は「全ての整数kを足し上げよ」と命令するかもしれません。
そして、よくよくプログラムを見比べてみると、k=j+1という関係があることがわかったとしましょう。
つまり、あなたが用いたパラメータjに1を加えるという変換をすれば、あなたのお友達のパラメータに翻訳できます。
この変換はjが外場だと思うとグローバル対称性の操作を施すことになるのでした。
ところが、今の場合、全ての(可能な)j(あるいはk)について足し上げていますので、外場を経路積分したのと同じ状況です。
そして、あなたのあるjに対応してただ一つだけお友達のk(=j+1)が存在しますので、j,kどちらを使おうがどちらのプログラムも正しく全ての整数を足し上げる計算をしてくれます。
つまり、k=j+1という翻訳・変換はただ記述の仕方を変えるだけで、結果は変えません。
これはゲージ対称性の定義と言えました。
結果として、元外場の変換(k=j+1)はゲージ化後は記述の仕方の変更(jを用いるかkを用いるか)に過ぎないことがわかります。
したがって、先ほどの「ゲージ化によってグローバル対称性はどうなるのか?」という問いは、「ゲージ対称性になる」が答えになります。
グローバル対称性をゲージ対称性に持ち上げる操作なのでゲージ化と呼ばれています。
ようやく道具立てができましたので、次回はゲージ化を使ってアノマリーを説明します。
最後までお読みいただき、どうもありがとうございました。
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創刊日:2018-09-25
最終発行日:
発行周期:毎週火土曜日
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