投資

月光為替のマーケットよもやま話

ブログでは書けない、書かない、相場観や銘柄選定手順、AIの話やヘッジファンドの中の人だから話せる業界事情、はたまたプライベートな話やおすすめのうまい店紹介など、ヘッジファンドの現役ポートフォリオマネージャーのよもやま話を週刊でお届け。配信は毎週日曜日。

全て表示する >

第15回 最新の機械学習と投資の関係

2017/07/09

さて、前回までの話にも愛想をつかすことなくついてきてくださっている読者の方は、相当やる気のある勉強家か、元々頭が良いかのどちらかであろう。


今日はそのような読者の方のポテンシャルを信じ、更に込み入った話をしてみようかと思う。


読者の方の中には、既に自身で機械学習等を勉強し、今はやりのリターン分類問題などを解いている方も出てきているかと思われる。


では、所謂機械学習を分析手法にいち早く取り入れてきたブリッジウォーターや、わが世の春を謳歌しているルネッサンス、ツーシグマなどのクォンツファンドがこのようなリターン分類問題を解くために機械学習を用いているのだろうか?



答えは、当然ながらNoである。


では、どのように機械学習を彼らは用いて、莫大なリターンを得ているのだろうか。それに対して、俺も完全に知り得ているわけではないが、ある程度分かってきたこともあるので、俺のエッジに関わらない程度にシェアしていきたいと思う。


さて、機械学習をトレードに応用していく手法というのは、概して現在のところ3種類ある。


1.様々なファクターの特徴抽出・非線形変換によるリターンの直接的な予想
2.チャート等の画像認識からのリターンの直接的な予想
3.リターンに間接的に関わる指標の予想



例えば1は言わずもがな、金融商品の価格のある期間のリターンを、例えば3つに分け(1%上昇、1%下落、それ以外、など)その教師データのラべリングを学習するように、様々な説明変数(ファクター)をもちいて学習器を作る方法である。


ネットで様々な人間がやっているほとんどの機械学習の金融市場に対する応用がこれであるといっていいだろう。ネットの匿名の人間に限らず、有名な投資信託の会社が昨今こぞって出しているAIファンドも、大抵はこのタイプだ。


そして2は、所謂ディープラーニングの技術でも有名な、CNN(畳み込みニューラルネットワーク)を応用するパターンだ。説明変数をファクター等にするのではなく、チャート自体を画像変換し、そこからフィルタリング、特徴抽出を繰り返していくことによって、リターンにつながる指標、もしくはパターンを抽出していくことを目的としている。


アルパカなんかもこのタイプで、それこそ自分のチャートパターンなるものを機械に自動認識させていくことで、効率的なトレードを可能にしていくことを目指している。これは、ある程度現時点でも、やっている人は少ない。


最後に3である。これは例えば有名どころで言えば、原油の供給量予想に産出国の衛星写真から港にとまっているタンカーとの因果関係を見出したり、衛星写真の光の量からGDP予測をしたりなどがある。(大抵この場合は特徴抽出が問題になってくるので、DNNを用いることが多い)。



さて、ここで1,2,3どの使い方が最も有望だと貴方は思うだろうか。



実をいうと、答えは特にない。何故ならこの機械学習の金融時系列への応用という命題自体がかなり最近の話題であり、まだ学術的にも実務的にも研究され尽くした分野ではなく、試行錯誤を繰り返していくことでしか未来に進んでいく手立てはないからだ。



例えば1に関して。これは、いうなれば今までのファクターモデルが線形回帰(重回帰)分析という線形変換の世界から、非線形変換への拡張によって、よりモデルが複雑に記述できるところに優位性がある可能性がある。


分かりやすく言えば、テクニカル指標に対して、20移動平均がこうなって、MACDがこうなって、BBがこうなって、、みたいな複雑な条件は、ほとんどの場合線形モデルで記述できないことが多い。


なので、そういった従来のテクニカル分析のより深い最適化の手段として、日の目がまだまだある可能性はある。



2に関しては、個人的には懐疑的だが、まだ人が気づいていない魔法のインジケーターを探すことができる可能性がある。

結局のところ、全てのディープラーニング技術は、オートエンコーダ型にしても、フィルタリング型にしても(CNNはこれにあたる)、ボルツマンマシン型にしても、特徴抽出(次元削減)を行ってから出力層の手前で従来のNNをかけているに過ぎない。



つまり、説明変数の選択すら機械にやらせるというところが従来のNNとDNNの違いなのだが、その選択にもしかすると何か光明があるかもしれない。(重ねて言うが、個人的には懐疑的である)


さらに、自分のチャートパターンに優位性があると考える人がいるのであれば、そのチャートパターンに類似したチャートを自動抽出してくれる技術からは、明らかに恩恵を受けるだろう。(そのチャートパターンにのみ、エッジがあるのであれば、の話だが。まぁどちらにしてもスクリーニングの恩恵はあるか)



そして3に関して。実証的に言うと、一番可能性があるのはこの分野である。何故なら、ブリッジウォーターにしても、ルネッサンスにしても、ツーシグマにしても、彼らの機械学習の使い方はこの3に集約されるからである。



例えばブリッジウォーターは、所謂自分達のポートフォリオが、ピュアにアルファを探索できるようにするため、βを消すというところに機械学習を用いている。


ツーシグマ・ルネッサンスなどは、物理学者を雇っているというのがポイントで、確率分布的に金融時系列の状態をとらえ、例えば残差系列だったり、ファクターパラメータの同時推定などに機械学習のアルゴリズムを用いている。



この3に関しては、まだまだ本当にフロンティアで、やっている人間は非常に少ない。だが、近年のルネッサンス・ツーシグマの躍進をみるに明らかだが、そこに果実は大きく眠っていることは否定できない。



今まで裁量、もしくはクォンツとして、金融時系列と慣れ親しんできたマネージャーだからこそ、豊富なアイディアがあるはずで、そのアイディアに対して最もよい結果を表す機械学習のアルゴリズムの応用方法が必ずある。


猫も杓子もディープラーニング、リターン分類、では、必ずブームが過ぎ去り、そして勝てなくなる。断言しても良い。


理由は単純で、簡単だからだ。そもそもネットに出ているようなディープラーニングで株価予測しました的なものは猫も杓子も同じ目的変数、同じデータセット、同じ説明変数かつ同じモデルで問題を解いているだけなので、当然ながら説明変数から持ってきている特徴量も似通うし、その変換アルゴリズムも似通う。



しかもそれがただのSEくずれが簡単に組めてしまう時点で、そこのアルファなどはほぼ存在していないのと同じと言って明白だと俺は考えている。


俺自身、3のアプローチで作り上げたモデルを逐次更新しながら、マネージドアカウントで運用している。さすがにその中身について詳しい話はできないが、勘のいい人間なら、ある程度上の記事からどのようなアプローチをとっているかわかるかもしれない。


読者のみなさんの、より深い機械学習技術と投資への応用の理解に繋がれば幸いだ。



さて、ここ最近重たい話題が続いたので、来週は番外編のグルメレポをしたいと思う。(丁度来週は休みを取る予定なので軽い話題で)

では、また次週もお楽しみに。



後、これは切なるお願いなのですが、ブログランキングをぽちっとお願い致します。
ここから→http://kawasegekko.com/

なんだかんだブログ等、情報発信の分かりやすい対価としてこれでやる気が変わりますので。
あんまり、怪しい感じのブログとかに負けてると、なんかやっててもあんまり意味ないのかなと思ったりするので、是非にお願い致します!

規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2017-03-09  
最終発行日:  
発行周期:週刊  
Score!: 98 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。