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月光為替のマーケットよもやま話

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第14回 ヘッジファンドのトレード 戦略解説 〜ペアトレード戦略その3〜

2017/07/02

さて、今回はこのシリーズの本丸である、「なぜ共和分によるペアトレードは現在実践の場では使えないのか、そしてどのように工夫して使えるようにしていくのか」という所に的を絞ってお話しをしていきたい。


まず、そもそもこの共和分検定をするための式の形に戻る。
つまり、前回でいう、A-αBという差分系列の話だ。

ここで、Aという株を1単位ロング、Bという株をα単位ショートしたペアポートフォリオを考えた問い、このポートフォリオのネットポジションが、0である保証はない。

基本的に、マーケットニュートラル戦略を用いるヘッジファンドでは、ネットポジションが0に近いことが求められる。(つまり、ロングとショートの金額の総額がほぼ同じであること)

なので、マーケットニュートラル戦略においてはスプレッドではなくレシオを用いられることが多い。

つまり、先程のような差分系列ではなく、A/BというAをBで割った系列の振る舞いを予想することが求められるわけだ。

ただ、ここにおいて共和分検定が全く役に立たないというわけではない。つまり、残差項をBで割った時、そのBがある一定の変化率に収まるのであれば、この平均回帰性はある程度担保される。

逆に言うと、Bが例えば3年で200%に達するなど、成長株のような場合は、この共和分検定におけるペアトレードで、マーケットニュートラル戦略を採択するファンドが実運用で用いるようなペアは作れない。

だが、A,Bの株の属性をうまく選べば、共和分検定は使えるツール、ということになる。


今までの議論は、しかしながら、かなりテクニカルな話であった。つまり、別にネットエクスポージャーが0であるという制約を持たない個人投資家ならば、まったくもって関係のない話ではないか、ということだ。

勿論、現在この単純な統計的アービトラージ戦略が効かない理由がこんなテクニカルな話であるわけがない。当然一番の理由は、「股裂き現象」にある。


どういうことかというと、共和分検定をするにあたって、我々はトレーニング期間を設定する必要性がある。

つまり、過去3年だったり、過去5年だったり、恣意的に選んだ一定期間において共和分があるかどうかをみるわけだ。

だが、その3年間あった共和分、もしくは5年間あった共和分が、明日も続くという保証はどこにもない。


当然このようなアービトラージに近い戦略は、利幅も限られている。なので、一度の「共和分が消えてロングサイドの株が下がり、ショートサイドの株が上がり続けるという現象(股裂き現象)」が致命的なドローダウンとなってしまうのだ。


なので、一般的に昔は、変化が少ない業界(銀行業界など)を対象としてきた。だが、今日その銀行業界にしても、電力業界にしても、企業ごとの性格、違いが大きく出てしまったことに起因して、このような股裂き現象が頻繁に起こることになってしまったわけだ。



さて、逆に言うと、ここで裁量の出番になるというわけだ。

つまり、
?ある程度の流動性を持つ銘柄群で、相関係数の高いペアを採択する
?その中で、そのペアのレシオを正規化して線形回帰し、回帰直線の傾きが大きい群を捨てる(レシオ分析でいうところの、Bの変化率が大きいペアを切り捨てる効果がある)
?そのペアの各銘柄の単位根検定と、全ペアの共和分検定を行う
?現在のマーケットにおけるレシオやスプレッドをみて、トレーニング期間のボリンジャーバンドの+-2σにタッチするようなものだけをスクリーニングする
?スクリーニングされた各銘柄のファンダメンタルズを分析し、何か企業の変革のようなものが起こっていないか(つまり、EPS水準が飛躍的に変化するような事象が発生していないか)を見る。ここで変化が起こっている場合、そのペアも除外する
?残った銘柄に対し、平均線までのリターンからロスカット水準を決定し、最適なポジションサイズでポジションテイクをする
?リミット水準、ロスカット水準でエグジット
(?、?はマネージャーによっては、ナンピンしながらエグジットをばらけさせたり、利確も少額ずつ行うなど、特徴を持つ人もいる。特に、100億円以上の運用資産を扱うマネージャーは、エントリータイミング、エグジットタイミングともに分散させることが多い)


この一連の流れにおける、?の部分の重要性が今、ものすごく上がっているというわけだ。

この判断は、簡単そうでなかなかできない。そして、知るのと出来るのとでは大きな隔たりがある。なので、このメルマガで、懇切丁寧な説明を行ったわけだ。

利幅が少ないので、どれだけ頑張っても年間で期待できるリターンは10%程度。それでも、マーケットニュートラル戦略としては王道中の王道。

読者の中でやる気のある者が、自己の戦略の一つとして加えられることを、切に願う。
(情報ベンダー(Bloomberg等)と契約していない個人投資家は、Yahooファイナンスなどでスクレイピングをして(最近厳しいようだが、分量を分けたり、ユニバースを絞ることで対応可能だろう。pythonで簡単にできる)、python or エクセルでリターン系列の相関係数を求め、Rで共和分検定を行い(RでPP.test(lm(y[[name1]]~y[[name2]])$residuals)$p.valueの一行で可能)、BBでのスクリーニングをエクセルのマクロで作ればよいだろう。)


少し重いシリーズだったが、他ではなかなか見ることのできない話をかけたかと思っている(特に今日の内容)


では、また次週もお楽しみに。


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創刊日:2017-03-09  
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