「措置入院」精神病棟の日々(76)

2017/11/27

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「措置入院」精神病棟の日々(76)
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“シーチン”修一 2.0

構想から6か月、11/28(いい庭)に屋上展望台「スカイデッキ」、ま“見晴らし台”が竣工する。床面積は6畳ほどで、ビルの4階からの眺望が楽しめる。東北方向には東京タワーがよく見え、スカイツリーは最近できたマンションに遮られて展望回廊(451m)あたりからてっぺんまでが見えるだけだ。

師匠の「頂門」渡部亮次郎氏や洋食店「あきら」はあそこいらだろうなあなどと思ったりする。墨田川(大川)の空間があるためにアサヒビールのジョッキを模したビルは良く見える。「完成祝いで飲みたいなあ」とは思うが、飲んだらアウト、サヨナラ負けだから、男の子は我慢せにゃならん。

西南方向は多摩丘陵で、真っ白い富士山の上部が見える。スカイツリーと富士山を結ぶ線が多摩川を越えたあたりがわが展望デッキだ。

このデッキに天体望遠鏡を据えてもいいが、天文学にはまったく疎く「星は見るもの、愛でるもの」派だからせいぜい月のニキビのような小惑星衝突跡を眺めるくらいで、すぐに飽きてしまうだろう。迎撃ミサイルPAC3は1ユニットが10車両以上(多分20トンとか)からなるので、とても設置はできない。結局はときどきNikonの200ミリ望遠レンズで周囲を眺めるくらいだろう。

スカイデッキは鉄パイプで塔屋周囲を囲っただけだが、自宅の2か所の物置に放置されていた材料を利用したので、費用はペンキ、針金、ビニールテープなど1万円ほどで済んだ。副産物として綺麗になった3F物置は書庫にする予定で、これにより2Fの8畳間から大きな本棚2つ、小さいのが1つがなくなることになる。広々となるからKは大喜びだ。

(読書をしない人にとっては書物はたとえ名著であってもゴミでしかない。母御用達の呉服屋の番頭曰く「こんなに読んでどうするの?」、けだし名言だ。「どうするのか」を知りたいから読んでいる、とでも言っておけばよかった)

工事では孫が落ちないようにできる限り頑丈に造ったが、フェイルセーフ主義で今後はさらに補強し、安全性と快適性を高めていく。鉄製の小さなテーブルを据えたり、熱いコーヒーなどを上げ下げする仕掛けも造る考えで、当分は作業療法の恰好の舞台となりそうだが、まともに木枯らしにさらされるのでこれからはかなり寒いだろう。

ま、小生の作品というかオモチャで、当分は楽しめる。北風の方向が良ければ凧揚げもできそうだ。屋上には1/10、1/20スケールで「空に浮かぶ熱気球」(簡単)や、「サーカスの綱渡りでヒヤヒヤドキドキの少女」(AIによるバランスと歩行を研究せなあかんから難易度は高い)といったオブジェも創って界隈の善男善女を楽しませたいなあなどとも思っている。

作業中はいろいろなことを考えるのだが、この頃は突然、昔のことを思い出したりする。楽しい事柄が多いが、無念なこともちょっぴりある。「老人は過去を生きる」というが、ああ、こういうことかと納得したり。若者と老人の違いを考えてみた。

◆若者        ◆老人
未来を見る      過去を見る
これからの人     これまでの人
覚える人       忘れる人
上を向く人      下を向く人
ピチピチ       ヨレヨレ
ピンピン       フニャフニャ
異性が好き      異性が嫌い
大食い        小食い
金欠         病欠
発展途上人      衰退途上人
忙日閑あり      暇日閑のみ
アホ         さらにアホ

ま、当たらずとも遠からずか。

山本夏彦翁曰く「老人のバカほどのバカはいない」。基本的に老化とともに知能も劣化するから、社会人としての良識も怪しくなり、暴言、暴力の不逞老人や、OS(オレオレ詐欺)に引っかかる痴呆老人も増えていく。

若いと異性への関心も高いが、以下のようなことを思い出したのにはビックリした。まるで昨日のような感じだった。

<「修一はんが『お、今日は一段と別嬪さんやなあ』て言うてくれる日ね、実はうち排卵日なんや」

5歳下の女の子が居酒屋でぽろっとささやいた。お酒で目の淵がほんのりピンク色になって、潤んでいる。

「ハイランビって、あの、受精しやすい日のこと?」

「そうや。なんで修一はんには分かるんやろ」

「フェロモンとかオーラとかが出ているんかいなあ、不思議やな・・・排卵日って何日くらい続くん?」

「大体前後合わせて2〜3日いう話や」

「繁殖期か・・・動物は季節が決まっているそうやが、人間は基本的には毎月2〜3日は繁殖期かいな。多すぎるんやないか、冷静に仕事ができへん。いっそ季節を決めて、その間、現役夫婦は公休にしたらええんとちゃうやろか、前夜は壮行会を開いて応援歌や進軍ラッパで送り出すとかさ」

「そやね!」>

あの子、誰だったっけ・・・普通、異性との酒席で排卵日なんて話題にはしないのだけれど、もしかしたら彼女は「うち、受精したい気分や」とボールを投げてきたのかなあ、それなら惜しいことをした、あるいはそのボールにバットを振ったらホームラン or 空振りで、別の人生になっていたかもしれない。

人生は偶然の要素によることがかなり多い。小生が小学生のころ、4つほど上の近所の福夫ちゃん(みなは「フクチャン→クッチャン」と呼んでいた)は、数年前にお父さんが亡くなり、病弱のお母さんと姉、妹の一家4人暮らしだったが、小さなニワトリ小屋みたいなバラックで、文字通りの「清貧洗うが如し」だった。

クッチャンは中学を卒業すると小生の家の前の寿司屋に就職した(オヤジさんは小生にとって第二の父親だったが、陰に日に夫婦でクッチャンを支援していたようだ。オバサンは夕食を不思議なほどどっさり作っていたが、今から思えばクッチャンに持たせたのだろう)。

1年ほど経つと、クッチャンは一家4人が住めるアパートに引っ越した(オヤジさんが保証人になったり、敷金を出したのかもしれない)。16歳にしてクッチャンは一家の大黒柱だったのだ。

やがてクッチャンは二輪車「ホンダドリームCB250」の中古車を買った。初代CB250は1962年発売で、当時は250CCが最高クラス(白バイは唯一350CC)、男の子の憧れだった。

仕事が休みの日、クッチャンは中学生の小生を乗せてドライブに連れて行ってくれた。羽田空港のデッキから2人で飛行機を眺めたものである。バイクの乗り方や空気銃など、女性の生理のこともクッチャンに教わった。クッチャンは上に3人の姉を持つ小生にとって“アニキ”だった。

クッチャンは頭が良くて絵が上手だった。寿司屋の2F宴会場へ行く階段の壁に日光の渓流を覆う紅葉を描いたが、もし彼が極貧の子でなかったのなら芸大で美術を学び、名を成したはずである(基本的に自作をプロダクション方式で永遠に“真似”し続けた東郷清児よりはるかにいい)。

クッチャンは若くして新興の新幹線都市「新横浜」に店を出し、オヤジさんの通夜の時は寿司を握って振舞ってくれた。オヤジさんへの恩返しなのだろう。休みの日はクルーザーで楽しんでいると言っていたが、貧しさを乗り越えて豊かに暮らしているようだった。オヤジさんは海釣りが好きだったのでクルーザーで一緒に遠征していたのかもしれない。

運命とか偶然で人の一生が大きな影響を受ける。ロヒンギャで揺れるインド/バングラの国境地帯に生まれていたら、今頃小生は異民族に迫害されて、あるいは異民族を迫害しているかもしれない。運不運、人生は時に残酷なものである。

小生が「まさか!」の酒乱、キチ〇イになったことは幕内“良き市民”転落の痛恨の黒星だったが、断酒できたのは大金星だった。日馬富士もこの際だから断酒した方がいいと思うがの・・・

11月中旬から徐々に抑うつ症状が改善し、何やらここ2、3日は躁状態の発狂亭雀庵の病棟日記から。

【2017/1/7】*早朝、2F急性期病棟の女帝、ナースの“ジャイアン”と会話。アル中だった住職の旦那とは別居して4年だという。道理でアル中に詳しいわけだ。結局、

「あなたの発狂事件は家族にはトラウマになっているから、あなたが宗教にすがって自己犠牲で引いたところで上手くはいかないし、長続きはできないよ。時間が必要で、朝晩、天と家族に感謝していれば、やがて少しずつ家族の傷が癒えていき、寄り添うようになるよ」

とのこと。経験者の言葉は重い。どうもそれ以外に道はないようだ。「恩讐の彼方に」を期すしかないな。日米戦の傷も70年でようやく癒えてきた感じがするが、わが家の場合はどうか。1〜2年で済むのかどうか・・・

*16:30、Dr,診察、「奥さんへの思いやりが必要」という。それは感性などの右脳領域のことで、小生は基本的にロジック、論理の左脳人だから、感性ソフトがどうも発達障害なのかもしれない。

Dr,によるとKは9日(月)に小生に面会してから外出の可否をDr.と相談しながら決めるという。今は夫婦の信頼関係が欠如しているのだ。

改めて「Kや子・孫を愛しているのか」と自問してみると、ただの「身近な人、同居人」のような感じがする。信頼感とか、親愛の情といったウェットな感情がいささか欠落しており、「他人とは言わないけれど、結局は他者だわな」という想いがする。自・他の距離感があり過ぎて、異常かもしれない。かなり怪しく、そのうち専門家に聞いてみよう。

他者への関心が薄いから会話やおしゃべりが苦手で、そもそも興味がない。他者は他者、自分は自分。言った、言わないのトラブルが嫌いだから「言いたいことはメモに書いてくれ」。これでは誰も寄り付かないが、静かな方が好きだからまったく苦にならない。

思いやり:他人の身の上や気持ちを推し量ること、同情。sympathy:同情、哀れみ、同感、共鳴。

小生が目指すのは孤高の人、孤立主義、独立独歩で、「思いやり」という感覚がよく分からない。

【1/8】*このところ体が地に着いていない感じで、フワフワしている。薬やサプリメントの影響とか、運動のし過ぎとも考えられる。もうすぐ66歳だから、そんな風になるのも自然なのかもしれない。終日、部屋を飾ったり、機能的にして楽しんだ。

*夕食後に“バアバ”とおしゃべり。「お正月は外泊したみたいね、どうでした?」と聞けば、「あっという間の2泊3日でした。家はやっぱりいいわ、自分で料理も作れるし」。

一時期、彼女は料理ができなくなっていたのだが、家族から「おいしいね」と言われてから料理を以前のように作れるようになったと言っていた。

家族からの「思いやり」とは、そういう感謝の言葉や励ましなのかもしれない。「ありがとう、美味しかったよ、また作ってね」とか・・・(つづく)2017/11/28








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創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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