「措置入院」精神病棟の日々(67)

2017/10/22

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「措置入院」精神病棟の日々(67)
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“シーチン”修一 2.0

4歳女児が発熱し、10/19、20の2日間預かったが、気力、体力が衰えているから疲れ果ててしまった。女児は来たときは38.3度だったが、しばらくすると38.8度になり、ぐったりしている。39度を超すとひきつけを起こしかねないからヒヤヒヤものだ。

30分ごとに小生の3F隔離室から2Fの病室を訪ね、おでこのタオルを取り替えたり、検温したり。子供は体力がないため急に症状が悪化するから本当に怖い。「朝見たら死んでいた」というケースを知っているので神経を使う。

とにかく女児の体力を維持するためには、お菓子だろうと何だろうと食べさせなければならない。が、1回吐いてしまった。「柿が食べたい」と言うので買いに行ったり、プリンやアイスを食べさせたり、ポカリやカルピスを飲ませたり・・・

万一あの世行きとなれば小生は一生「やっぱりヂイヂには無理だったのよ」と恨まれかねないから、キチ〇イなりに必死で看病する。

一方で忙しくても家事はこなさなくてはならない。女児はちょっと良くなるとしゃべりまくる。静かにしていない。こちらは耳が遠いこともあって何を言っているのか分からないが、一応は相槌を打ったりしなければならない。4歳にしてしっかり女なのだ。小生の病気には静かな環境が必要なのだが、そんなことは言ってられないし・・・

これが2日間続くとこちらがダウン寸前になり、Kが帰宅して女児と夕食を食べ始めたら一安心、ベッドに倒れ込んだ。

疲れるとろくな夢を見ない。銭湯へ行って服を脱ぎ始めたら小銭を床にばらまいてしまい、指に力が入らないので上手く拾えないで焦りまくるという夢で、目覚めてしばらくはぐったりした。

小2の頃まで小生は小児科の常連で、女医のM先生は「修ちゃん、修ちゃん」と可愛がってくれた。下半身にいくつも大きな膿疱ができ歩けなくなる奇病で大病院に2週間ほど入院したことがあるが、夜中に発作を起こして病院から家に「シキュウキタレ」と電報が届いたときは、両親は「修一は死んだ」と思ったという。

昭和30年代の前半はまだ「富山の置き薬」の時代で、夭折する小児は珍しくなかったのではないか。実際、隣室の、いかにもお坊ちゃま風の少年は亡くなってしまった。Kによると、小児科病棟は「治る子は目覚ましい勢いで治るけれど、夭折する子も珍しくない」そうだ。

運命は分からない。66歳まで生きていることも驚きだが、まさか発狂するとは青天の霹靂、まったく想像もしなかったし、日赤広尾病院に勤めていたKがわが街の精神病院に勤め、急性期病棟の看護師長になるなんて予想もしなかった。サプライズの連続だ。

産経新聞などが主催している「怖い絵」展の目玉作品はポール・ドラローシュの大作「レディ・ジェーン・グレイの処刑」だという。ドイツ文学者・中野京子氏の解説(産経)にはこうあった。

<16歳のジェーン・グレイが処刑された1554年・・・イングランドも日本も、政権をめぐる熾烈な戦いの渦中にあった。

ジェーンは故ヘンリー8世の妹の孫で、王位継承順位が低かったにもかかわらず、政治の実権を握ろうとする舅の陰謀で玉座に据えられた。たちまち捕らえられ、10日目には早くも反逆者の仲間入りだ。あとは斧による斬首刑が待つばかり・・・>

女王の座から速攻で刑場へ、しかも16歳! なんという運命なのだろう。誰にもまったくの想定外だったろう。

小生はレディ・ジェーンの名をローリングストーンズの歌で知ったが、その歌はマリファナの隠語「メリー・ジェーン」を意味し、ボーカルのミック・ジャガーがマリファナに溺れた恋人にサヨナラを告げている歌だという説もある。

73歳のミック・ジャガーは昨年12月に8人目の子供が生まれた。奥さんはナント29歳! 想像を絶する世界。この世は「ハゲーっ!」(奄美語の感嘆詞)の連続だ。毎日「ハゲーっ!」で忙しい発狂亭雀庵の病棟日記から。

【2016/12/26】*警察官が泥棒をする、消防官が放火する、教育者がハレンチな罪を犯す、政治家が賄賂で私腹を肥やしたり不倫したり・・・バレルと社会的制裁を受ける。家族も後ろ指を指され、肩身の狭い思いをする。

教育者の子供が犯罪を犯す、宗教家の奥さんが脱税する・・・これも非難される、父親としての、あるいは夫としての監督責任があるだろう、と。

精神科急性期病棟看護師長の夫が発狂して入院すると、露骨には非難されないだろうが、妻は面子、誇りを大いに傷つけられ、夫の発病は自分にも責任があるのではないかと自責の念が募り、悔やみ、悩み、自信を喪失していく。

今のKは、そういう状態から抜け出せずにもがき苦しんでいるようだ。もともといい加減さがないし、若い時に軽度のウツになったこともあるので、とても心配だ。

*10:00〜11:10、作業療法、オートバイは99%組み立て完了。次回はペイント作業だ。

【12/27】*入院当初は、特に男は無口だが、挨拶をしていると徐々に心がほぐれてくるのだろう、17歳の“ドカベン”は笑うようになったし、“ヒッキー”は挨拶に応えるようになった。“ムッツリ”とは昨夜、初めて会話し、初めて笑顔を見た。

「暗いと不平を言うよりも 進んで明かりをつけましょう」、昔ラヂオでアナウンサーの石井桃子が「心の灯(ともしび)」という番組を担当していたっけ。カトリックの番組だろう。

米国ではモルモン教がTVで布教している。モルモン教は(も)世界中に布教したいから広宣流布には熱心で、信者にさまざまな言語を学ばせて宣教師として派遣している。TVという最強のメディアを活用しない手はないから、日本でもタレントとして活躍している人も多いに違いない。ファンを作り、信者にしていくのだろう。

組織であればどこでも指示命令系統がある。病院の場合、理事長(オーナー、創業家が多い)、事務長(総務、経理など)、院長(経営と医療のツナギ)、医長(外科、内科など)、医師、看護師長、看護師、看護助手の順か。末端は非正規や派遣の職員で、清掃やシーツ交換などの雑役をしている。

雑役担当で驚くのは、20歳前後の若い女性が多いことだ。ある程度の規模の職場は、一定の割合で障碍者の雇用を推奨されているためだろう。高齢者雇用と同様に補助金が出るようだ。単純反復作業から始めて社会性を身に着け、適性があれば看護助手に昇格するようだ。

*10:00〜11:10、作業療法、オートバイの補修完了、明日からペイント。13:00、風呂と洗濯。(つづく)2017/10/22








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創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
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