「措置入院」精神病棟の日々(56)

2017/07/28

================
「措置入院」精神病棟の日々(56)
================
“シーチン”修一 2.0

7/24、朝は予想外に涼しかったので、ゴミ出しの後、寺にお盆の塔婆を申し込み、年会費も納めた。住職はこの春から真新しく立派な庫裏で暮らし、とても機嫌が良かった、というか、営業マンのようにお世辞を言っていた。

お布施の有無、多寡で住職の態度が大違いというのは分からないでもないが、あまり感情を表に出さない方がいいだろう、品格を疑われる。たとえ軽薄でも、穏やかで丁寧な言葉遣いならバレないだろうに、と惜しまれる。

騙し続けるというか、演じ続けるのが大事で、本質がワルでも善人を装っているとワルの本性が消えていき、良き夫、良き父、良き息子、良き市民として記憶、評価されたりする。小生はプッツンして狂気の本性がバレてしまったのだが・・・ま、バックミラーを見てばかりいると前進しないから明日は今日よりいいことがあると信じていこう、それしかないし。

寺の帰路に段ボール置き場(資源回収所)に寄ると、新品の小さな掃除機が捨ててあった。ここに不法投棄する人は絶えないが、町会が管理しているからそれほど荒れてはいない。

昨日、1Fと3Fの倉庫を掃除しながら「軽くて小さい掃除機があるといいかもしれないなあ、そのうち買うか」と思っていたところでの不法投棄掃除機の発見、出会いだから、家に持ち帰って掃除をし、使ってみたらすごい吸引力。

ただ、吸引力の調整機能がないためマットに噛みついたら離さない(執着質)、ノズルが前後にしか動かない(融通、小回りが利かない)、コードが邪魔になるので左手でコードを持ち、右手だけで操作しなければならない(頑固)など、製品としては「?」で小生そっくり、捨てた人の気持ちがよく分かった。

掃除機はもちろん硬直思想一直線の中共製。小生は左巻から右巻きに転向したが、出自はマルクス、毛沢東だから、左右の違いはあっても硬直であることに変わりはない。

アフリカの人々が「自転車を買うのなら中国製の新品より中古の日本製の方が良い」、ロシア人も「自動車ならロシア製より日本の中古車が良い」と言っているが、ま、そういうことなのだ。使う人や社会の快適性を優先させる生粋の Made in Japan に小生は今さら戻れやしないが・・・

さて、久し振りにノンビリ過ごし、床屋にも行けたが、昨日まではとても忙しく、産経を読む間もなく1週間分が溜まってしまい、これを処理するのにまる一日かかってしまった。「とにかく溜めない、朝一番で産経を読み終えること」と決めたが、ベッドに横たわって読むと睡眠モードが働くのだろう、じきに眠くなるので、立つか椅子に座って読むことにした。

読み終えてから園芸、工作、掃除、読書、ブログ、買い物などをするようにしたら、とても具合がいい。常に夢中になれるものを探すイタズラ老人は今日はオーディオに目覚めた。CDプレイヤーに、PC用のアンプ付きスピーカーを取り付けてみたが、予想以上の音量、音域、音質(透明感がある)で、いつものCDが大変身した印象だ。久し振りの満塁さよなら大ホームランだった。

大工仕事も大好きだが、たまにはオーディオ工作もいいものだ。昔、仕事で使っていたニコンの200ミリ望遠レンズで雀を観察するのも楽しい。こんな安楽な余生でいいのかなあと思うが、カウンセラーの“ピーコック”は「若い時に十分働いたのだから、今は大いに楽しんでいいんですよ」と言ってくれる。

体と脳ミソが動くうちはせいぜい楽しもう。この平安、平穏が続いて、最後は映画「ゴッドファーザー」のドン・コルレオーネのように家庭菜園で孫と遊びながらポックリ逝けたら最高だと思うが、ま、そういう具合にはいかないのだろうな。

7/27、今日はしっかりブログに専念する気だったが、花屋で可愛いガジュマルを見つけたので、玄関前に飾ったものの、おしゃれな受け皿がないので、ペンキを混ぜ合わせて砂漠のイメージの黄土色にしてみた。なかなかいい。

気に入ったのでウッドデッキの柱にしているステンレス製ポールにも塗ったらどうかな、ウッドデッキもあとスノコを2、3枚作ればとりあえず完成するし、庭園は日々美しくなり、隔離室はますます理想郷のような癒しのペントハウスになってきた。帝銀事件(1948年1月26日、毒物で12人殺害)の死刑囚、平沢貞通(さだみち)の独居房も理想郷ではなかったか。

犯罪心理学者/精神科医の福島章によると平沢は「空想虚言者」で、「自分が空想していることが、あたかも現実であるように自分でも信じ込んでしまう」(「犯罪心理学入門」)のが特徴だという。

同じく精神科医で作家の加賀乙彦は「死刑囚の記録」にこう書いている。

<私が(東京)拘置所に勤めていた頃、平沢は60代の半ば、半白の髪ではあったが、まだ若々しく、所内随一の有名人であった。医務部には時々現れ、あれが平沢画伯かと私も横眼で眺めていたものだった。和服を着ていることが多く、いつもにこにことしていて、人当たりが極めて柔らか、囚人というよりお茶の師匠が現れたという感じであった。

初めて私が彼の房を訪れたのは1955年の11月であった。房内には、画架や絵具箱や水彩画の束が所狭しと置いてあり、私の顔を見ると「やあ先生ですか」と会釈し、しかし、描きかけの手を休めずにいた。

ふと「この頃でも観音様の夢を見ます。ありがたいです」と言い、「私が真犯人でないのは確かですよ。しかし、私は死を怖れません。悟りきった境地で毎日を過ごしています」と、人が口にすると嫌味に聞こえるようなことを照れる様子もなく言った>

平沢の虚言癖は徹底していた。加賀はこう続ける。

「(平沢の)問題は、(小さなことから大きなことまでの)嘘を、嘘をついた本人がいつの間にか本当のことと信じてしまうことである。嘘か真かの区別が、本人にも曖昧になってしまうような現象を精神医学では空想虚言と呼ぶ。空想虚言者または空話症者は、人を騙す詐欺師であるとともに、自分も騙される空想家であって、彼の行為には金銭を騙しとる詐欺師と他愛のないいたずらとが混合している」

空想虚言は精神病の一つだが、「津久井やまゆり園」で大量殺傷事件(19人死亡、26人負傷)を起こした植松聖被告は自分の独自の価値観こそが正しいという「自己愛性パーソナリティー障害」などと診断されている。

自分が妄想した世界がリアルであり、それを否定する世界は間違い、愚の骨頂と思い、「自分の正義」を貫く。一時的な発狂ではなく、重症的、確信犯的な精神病者だろう。

“ピーコック”に「精神病と性病は誰からも同情されない」とグチると、「そりゃあそうでしょ。修一さんの場合はお酒が原因になっており、自己責任の面が強いから同情されませんよ、当たり前です」と突き放された。トホホ、お山のヨーコ、お前もか!?

小生は「ただの病気」と思っているが、プロでさえ「自分が蒔いた種、お前が悪い」という評価なのだ。

「よく街を歩けるね、恥ずかしくないの?」とさえ言われたことがある。「やまゆり園」の多くの被害者家族は匿名報道を望んだ。つまり遺伝子にかなり関わる病気だから「精神病は一家の恥」と伏せておきたいのだ。

それも仕方がない面もある。たとえばプロポーズした相手から「実はきょうだいが精神病で・・・それでもいいんですか」と告白されたら、小生だって「うーん、ちょっと考えさせて・・・」となってしまうだろう。「ボクは君が大好きで、一生君と一緒にいたいんだ、君のきょうだいと結婚するわけじゃない」と即答する勇気はない。

被害者の親族も社会も、ほとんどの人が「精神病は遺伝するから・・・普通の病気とは違う。縁組にも差し障りがあるから報道されたらたまらない、ここは匿名でお願いしよう」となることを小生は責められない。

遺伝性の要素が強いことは父方の伯父さん、母方の叔母さんの息子(小生にとっては従兄)が自殺していることから子供の頃から知っていた。父方の伯母さんの娘は知能障害だった(葬儀の挨拶もなかった。世間体の悪い家の恥、厄介者として闇に葬られた感じ)。父方のもう一人の伯父さんは20歳ごろに亡くなっているが、父方の親戚はこの人のことをまったく話題にしなかった。多分精神病で自殺したのだと思う。

精神病は誰でもなり得るただの病気、成人病と別に変わっているわけではない、隠す必要はない、と小生が“居直っている”のは子供がみんな結婚して孫もなんの障害もないからかもしれない。運が良かったのだ。

そう言えば退院からちょうど半年たった。自分のアクがずいぶん抜けてきて、すっかり大人しくなり、まるで猛禽類から人畜無害の雀になったみたいだ。今日は唇を曲げてチュンチュンとやってみたら、雀が「俺の縄張りを荒そうとしているのは誰だ」とばかりにキョロキョロしていた。“スズメ命”になりそうな“発狂亭雀庵”の病棟日記から。

【2016/12/12】*夕べは悪寒がし、風邪をひきそうなので、軍手、靴下、毛糸帽子、ジャンパー、マフラーという完全武装で寝たが、午前2時ごろ、火災警報で叩き起こされたものの、しっかり眠れ、今朝は体調がすこぶる良い。

警報時に物々しい格好をしていたから、「すっかり職員さんだと思っていたわ」とオバサンに言われ、共に笑った。警報は誤作動だったそうだ。

一人暮らしのために介護で入院している80過ぎの“オカーサン”が2週間ぶりに戻ってきたが、肺炎だったという。老齢になると風邪は侮れない。片肺の父は「忍耐の人」だったが、いささか早すぎる晩年には風邪をとても怖れていた。

*廊下運動をしていたら、これから電気療法を受ける“令夫人”が声をかけてきた、「何の病気? お仕事は?」。ほとんど同じことを毎日聞いてくるが、次の愚痴も毎日同じだ。

「死にたいわ・・・なんでそう思うようになったか考えてみたのだけど、退職してから再就職できなかったことが原因だったのよ。今は全くやる気が出ないし、家事もできなくなっちゃって、主人には済まないと思っているのよ」

かなり健忘症というか認知症、痴呆、アルツハイマーが進んでいるようだが、“オカーサン”以外は皆精神病患者だ。健常者を「健康な体、健康な心の人」と定義すれば、国民の多くは多少なりとも非健常者ではないか? 何らかの葛藤、鬱屈、不満、悩みや、アレルギーを含めた肉体的不調を持っていない方がむしろ“異常”ではないか。

*9:20、精神社会福祉士のOさんと明日の4者面談(Dr.、Oさん、カミサン、小生)について話す。カミサンとの接点は身近な散歩とか、ハイキングあたりから始めるのが良さそうだ。社会との接点はシルバーボランティアあたりか。大学の公開講座や英会話スクールもいいが、チンドン屋の修業はやってみたいものだ。

*10:00〜11:10、作業療法で木製オートバイ組み立て。エキサイティング&チャレンジングでとても面白かった。“ドカベン”は恐竜にチャレンジし、大いに楽しんだようだ。小生は自由工房の本棚から初めて本を借りられた。

自由工房の窓から病院の駐車場が見えるが、一角に10基ほどのお墓があった。先祖伝来だから村人は病院に土地を売る際に「移転はご先祖様に申し訳ないから、このままにしてくれ」と条件を付けたに違いない。病院敷地内のお墓・・・ちょっとシュールだ。

*毎週月曜は11時半から医療側と患者のミーティングがあるが、耳が遠くて、ほとんど聞き取れないから不参加。佐吉は目を潰したが、小生は耳栓をしたいくらいだから難聴はありがたい。

何を言われても知らんぷり、聞こえないふりをしたり、すっとぼけたり・・・何を聞かれても「本当にいい天気だねえ」「あいにくの雨だねえ、明日は晴れるよ」と答えるのはどうか。面白そうだ。

*16:00〜16:10、毎週水曜日の小ミーティング「わかば」への誘い。心理士のTさんが司会をするが、昇級のためのレポートでも作成するのかもしれない。14日から始まるが、男は小生のみ。強烈なオシャベリ屋もメンバーなので多分、ウンザリさせられるだろう。考えただけで吐き気がする。(つづく)2017/7/28










規約に同意してこのメルマガに登録/解除する

メルマガ情報

創刊日:2017-02-04  
最終発行日:  
発行周期:日刊  
Score!: - 点   

コメント一覧コメントを書く

この記事にコメントを書く

上の画像で表示されている文字を半角英数で入力してください。

※コメントの内容はこのページに公開されます。発行者さんだけが閲覧できるものではありません。 コメントの投稿時は投稿者規約への同意が必要です。

  • コメントはありません。